21




side. Tamotsu





ザァァ──────…



冷たいシャワーに自ら打たれながら、

未だに残る唇の熱を、



手で覆い隠す。






(お礼って…)



普通、にはしないよね?


キスなんて、さ…






僕の気持ちを知っている上原君。


いつだって優しい彼は、

その事実を汲んでくれ…気を遣ってくれてた。







(コレもそういうコト、なのかな…)


チクリと胸に突き刺さる…複雑な痛み。


不器用なりにも、友達として接してきた…つもり。

そりゃ端々で、好き好きオーラを醸し出してはいただろうけれど…。



なるべく意識しないよう、触れたりしないようにって…僕なりにも線引きしてたんだ。








(だってそんなコトしちゃったら───…)



抑えがきかなくなるって、解っていたから。

だから僕らは友達なんだからって、


自分に言い聞かせて、耐えてきたのに…







「うっ…えっ……」


これはなんの涙なんだろ?


解ってるのは苦しいってコト。

キミの優しさに、すぐ絆されちゃう自分がヤだ…。







(その気に、させないでよ…)


優しくされたら甘えちゃう。

キスなんかされたら期待しちゃう。


キミが僕を友達だって言うのなら。



こんなこと、しないでよ…




もっと欲張りに、なっちゃうじゃんか…。








「もう…」


どうしていいか判らない。

どんな顔して『友達』してればいいんだろ?



上原君はまだ失恋したばかり。

それでもいつかは、もしかしたら…って。


彼が与えてくれたチャンスに、縋りついてきたけど。








(このままじゃ、壊れちゃいそうだ…)


好きって気持ちだけで、傍にいられると思った。

なんだって耐えてみせるって。



けどやっぱり辛いや…

キミもきっと、こんな気持ちだったんだね。






戸惑いに身を焦がし、涙する。

いくらシャワーで誤魔化しても、ソコだけは熱くて…



先の見えない闇に苛まれる、僕の涙はボロボロと…

途方もなく溢れ続けた。

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