18



side. Tamotsu





沈んでた気持ちを再浮上させ、

ふたり奥まった所にあるファミレスまで向かう。


とぼとぼ歩いて右手に目的地が見えてきた頃、

丁度その店から出て来る少年らと擦れ違い───…






「あれぇ~お前、上原じゃね~?」


擦れ違う前に、5人組のド派手なその少年らに、

声を掛けられてしまった。








「…………」


友達なのかな…?

そう思って上原君をチラリと見上げると…


なんとも不機嫌そうに眉間へと皺を寄せてて。

ツリ目を更に釣り上げながら、声を掛けてきた相手に対し…殺気丸出しで睨み返していた。







「そんな睨むなって~。同中の仲じゃんよ~?」



…どうやら、中学時代の知り合いみたい。


けど2人の様子を見る限り、仲の良いには全然見えなかった。







「待てよ。久し振りに会えたんだしさ~…?」


僕を庇うように手を引いて。

無視を決め込み、先へ行こうとした上原君の肩をガッシリ掴む…先ほどの、鼻ピアスの少年。


…顔がかなり厳ついから。

少年て表現も、ちょっと違和感があるかもしれない。



それよりどうしよう、

なんとなくヤな感じだ、この人達…。







決して友好的とは言えない彼らに、空気と化し肩を窄め、佇んでた僕。


けれど…





「何コイツ~!パシリにしちゃ、頼りなさすぎだろ~?」


いつの間にか近寄ってきた別の少年が、まるで逃がさないとばかり僕の肩をガシリと掴んできた。


くっ…わざとかな、なんか苦しいんだけど…。







「ソイツに触んじゃねぇ…」


今にも飛びかかりそうな勢いで、

僕に絡んできた少年を威嚇する上原君。


少年は最初、あからさま怯んでいたけど。

「こわ~い!」とおどけながら、なんとか躱していた。






「あ~…?もしかして、さぁ…」


そんな遣り取りを見た、鼻ピアスの少年が。

何か悪戯を思い付いたかのよう、下品な笑いを浮かべ始め。上原君の肩を掴んだまま、ニタニタと顔を近付ける。


それに嫌悪を露わにした上原君に対し、

彼は突然、信じがたい台詞を投げつけてきた。







「このチビ……お前のだろ?」


「なっ…」


思わず絶句したのは僕で。

途端に心臓が、嫌な音を立て…軋みだす。





「…………」


「オレさぁ~、ちょい前に見ちまったんだよね~。森林公園で、さ~?」



ドクン…ドクン…


何言ってんだろ、この人…やだ、やめて─────…






「お前…、してただろ?」


「………!!」



あの日、綾ちゃんと上原君の事を…



見てたんだ、コイツは…。








「正直ドン引きしたぜぇ~?顔が良いと女も男も関係なく節操ナシになんだなぁ~。まあ…あんだけ女とヤりまくってりゃ、飽きてもくるわなぁ?」


「…………」



表情は変わらず、黙ったまんまの上原君。

けれど握られた拳は…ギチリと震えていた。





「こんな冴えねぇチビでも、突っ込めりゃ何でも良いもんな?そんなイイのか?ケツの穴ってのはよ~。」


ドッと品の無い笑いを飛ばす5人。

何が可笑しいんだか、僕には全然解らない。



だって上原君は、上原君はっ─────…







「………れ…」


「あン?」


その声に、僕に肩を組んだままのヤツだけが気付き…笑うのを止める。


抑えきれない怒りが、

喉元を突き抜け、一気に溢れ出し。





「謝れ……上原君に謝れッ…!!!」


気付いたら僕は、鼻ピアスに突進してた。

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