17



side. Tamotsu




「保、次は何がしたい?」



彼氏彼女みたいな擽ったいノリで、僕に主導権を委ねられ。う~ん…と店内を見渡す。






(あっ。)



そこでピタリと目に留まったのは、

仲睦まじくが入って行った場所…であり。




「あっ、アレ…アレが良い…!!」


「はぁ~…野郎ふたりは、さすがにキツくねぇか?」




────とか言ってもう入ってますよ…プリクラ機。







確かにここには、カップルか女の子のグループばっかりで。一番目立たない隅っこのヤツに、遠慮がちに入って来たわけだけども。







「えへへ…。」


「…んだよ?」


「ん~ん、別に~。」



ついつい顔が緩んでしまうのは、仕方ない。


だって上原君とプリクラ撮れちゃうんだよ?

今なら、そこでイチャつきまくってるカップルの気持ちが、すっごく理解できちゃうよ、僕。



そんな訳で、あからさまに僕が舞い上がっていたものだから…





「…………」


そんな僕をじっと見つめる上原君には、全く気付かないでいたのだ。








お金を入れて、音声に習って適当に操作して。

カウントが始まって身構えた途端、






「保。」


…って、ふいに呼ばれて──────



『カシャッ』




「なっ…ちょっ─────」



グイッと引っ張られたかと思いきや、

上原君が僕の頬に、ピッタリとその整った顔をくっつけてきて…






「ん?プリクラって、こうやって撮るんだろ?」


と、目線だけで隣りのプリクラ機を示す上原君。


そこには、これでもかってくらいに密着しながら。

大胆にも、チュー…とかしちゃってるラブラブカップルが、隙間からばっちりと見えてたもんだから。







「え、えっ…でもっっ、」


「ほら、次。」



『カシャッ。』


今度は後ろから、軽く抱き締める感じ。

その後も、まるで恋人同士みたいなモノばかり。


大接近した互いの姿が、小さな画面に写し出され…







(…これは…一生大事にしまっておこう…!)



こんなファンサービス…二度とないだろうから。


出来上がったばかりのプリクラを胸に、僕の心はウキウキと天にも昇る勢いだった。






 




「はぁ~…いっぱい遊んだね~。」


気付けばもう18時を回り。

楽しい時間は、あっという間に過ぎてしまった。







「明日から学校かぁ…実感、湧かないね…。」


今までは母子家庭ってのもあって、高校では部活もやってなかったし。

夏休みは家の事ばかりで、いつも持て余していたけれど。



今年の夏休みは、今まででイチバン────…


多分これからもずっとイチバンの、



最高の夏休み…だった。







僕の想いは変わらず、一方通行のまんまだけど。


例え友達でも。

キミがこうして傍にいてくれるから…



それだけで充分、幸せなんだよ?







夏の夕刻はまだまだ明るくって。

もう少しくらい一緒にいられないかなって思うから…



確信犯で、帰りたくないオーラを全身で醸し出す。





我ながら女々しいなぁ。でもね…

そうすれば上原君は、とことん優しい人だから。






「…メシでも食ってくか?」


そう言って、こんな僕を甘えさせてくれるんだ。

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