第38話
サクッとビルを制圧した僕たち。
そして、残るはただ一つ。
このビルの最上階に位置している社長室だけだった。
未だに僕たちはこの組織のボスだと思われる人物には出会っていない。恐らくここにいるのだろう。・
「さ、最期だね……」
緊張したような声を上げる陽向。
「最初は威力偵察のつもりだったのに、もう制圧間近だよ」
「普通に楽勝だったけどね」
「……国家保安調査部特務機関と同じ、いや。それ以上の力を持っていたけどね。一応」
「別に陽向だって苦戦していないし、普通に敵をぶった切っていたじゃんか」
「まぁ、そうなんだけど」
僕と陽向は呑気に敵組織のボスがいると思われる部屋の扉で無駄話に勤しんでいた。
「良し。ちゃっちゃと終わらせようか」
「うん。そうだね……なんか亜蓮を見ていると、心配になっているこっちが馬鹿らしく思えてきたよ。さっさとおわらせよ」
「そう……だねッ!」
僕は扉に向かって蹴りを放ち、その扉を飛ばす。
この扉の先にいるのはこの部屋で一人くつろいでいる男に向けて、だ。
「随分と手荒れな歓迎ではないか」
扉は一瞬で灰となって落ち、無意味の攻撃として終わってしまう。
「……歓迎はそちらがすべきじゃない?普通に日本語間違えていない?かっこいいのはわかるけどさ」
僕は堂々とその場に入っていく。
「……」
豪華絢爛な衣服を身につけた圧倒的な存在感を放っている初老の男。
この男が間違いなくこの組織の長だろう。
「素晴らしき活躍だったぞ。二人とも……しかし、その拳銃は私に効かないようになっている。大きな活躍をしていたその拳銃を使えなくな」
「あ、ごめん。既にカスタマイズ済みだわ」
僕は初老の男の話を遮るかのように引き金を引いた。
「くぁwせdrftgyふじこlp」
僕に脳天を撃ち抜かれた老の男性は口から泡を吹き出してそのまま体を横へと倒した。
「終わったね」
「お、終わっちゃったね」
本拠地の制圧。
それはびっくりするくらいの速さで終息した。
や、やっぱり騙されていたんじゃないか?
僕が死んでしまった男へと近づいたその時。
「ね、ねぇ……」
窓を呆然と眺めた陽向が話しかけてくる。
決して、この男が目覚めたというわけではない。
「何、あれ?」
話しかけてきた陽向はとある一つの方向を指し示して、僕に見るように告げる。
僕はそれに従って陽向が指差している窓に注目を向ける。
「ッ!?!?」
そこにあったのは空を暗く染め上げる煙。
その煙は国立冒険者学園から上がっているように見えた。
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