偏差値70の転生者が1年で魔術を覚え王立魔術大学に現役合格した話

@uekiyamori

第1話

ーー目が覚めると知らない街に居た。


 ずっと長い間眠っていた気がする。


 目を開けると陽の光が一気に瞳孔に降り降り注ぎ反射的に瞳を閉じる。

 夢にしては繊細すぎる光にこれは現実なのだと突きつけられる。


 前後の記憶はないがそれ以外はしっかり覚えている。


 僕の名前は上杉秀うえすぎしゅう。

 平凡な家庭に生まれた僕は両親に言われるがまま小さい頃からコツコツ勉強をし進学校へ進みいたって普通な学校生活を送っていた少し勤勉な18歳。のはずだ。


 まだ気が動転しているが必死に頭を動かして辺りを観察する。


「ここは……」


 レンガや石材や木材西洋風な建物。

 中世のような甲冑を着て隊列を組み歩く人。

 さらには頭がトカゲようで全身に鱗が生え揃っている人?やウサギのような耳があり全身白い毛で覆われている人。


 その光景は子供の頃夢想したファンタジーの世界そっくりで夢だと疑いたくなるようなものだった。


 次に自分の身体を確認してみる。手を閉じたり開いたり普段の何気ない動作を確かめるようにして行う。 

 自分の身体に異常はなかった。が、しかしーー


「これは……異世界転生……?」


 自分でも突飛な結論だとは思ったが、状況を整理するとそうだとしか考えられない。


 異世界転生。そういった類のものはインターネットやアニメで何度か目にしたことがある。

 受け入れ難い現実とは裏腹に自分でも驚くほど冷静だ。大きく深呼吸をしてもう一度思考を巡らせる。


「……よし」


 まずは情報を集めよう。あっちの世界のことを考えるのはそれからだ。自分にそう言い聞かせて強く拳を握った。


 右も左もわからないのだからまずは誰かに話しかけてみることにした。目に入る日本語とは全く違う文字はなぜか理解できるけど会話が通じるとは限らないと心配をしていると。


「兄ちゃんそんな顔してどうした」


 僕の心配そうな顔を見かねてだろうか。恰幅のいい中年の男が話しかけてきた。

 良かった。言語も日本語で通じるみたいだ。


 自分でもわかるくらい不安が混じった声で尋ねる。


「すみません、いくつかお尋ねしたいことがあるのですがよろしいですか?」


「もちろんだ。だが、あんたその格好をみるに異世界人だろう」


「そういうことになるんですかね」


 自分の服が浮いているということに今になって気づく。


「それならまず役場に向かうのがいいな。あそこにはそういうやつらのための課が用意されてる」


 なるほど。異世界人というのはこの人の反応を見るにそう珍しいことではないのかもしれない。


「わかりました。まずはそこに向かってみます。親切にありがとうございました」


 男から詳しい道を聞きその役場に向かう。賑やかな街道を進みながらあれこれと考える。


 果たして異世界人に対してどの程度の権利が保障されているのだろうか。ライフラインはどの程度整っているのだろうか。元の世界に帰れるのだろうか……。


 しかし不安とは反対にすこし期待もあった。

 よくインターネットやアニメでみる異世界ファンタジーは剣と魔法で戦いかわいい女の子とイチャイチャする話が多い。

 自分はそんな世界に来たんだ。そんな思いもあった。


 そんなこんなで役場と思しきところへ到着した。

 中に入ってみるとさっそく異世界課なるところに通された。 


 すると窓口の向こうから小さな女性が現れた。身長1mもなく顔立ちも幼い。白い髪で肌はやや褐色。

 これもファンタジー的な種族なのだろうか。 


「今日はどうされました?」


「気づいたらこの街にいて何もわからず、ここに案内されたんですが……」


「異世界人の方でしたか!ここに来るまで何かトラブルなどはございませんでしたか?」


 丁寧な対応に少し驚く。自分のファンタジー世界のイメージと違い割と行政がしっかりしているのだろうか。


「いえ……今のところは大丈夫そうです」


「それは良かったです。まだ何もわからないでしょうから色々説明させていただきますね。」


「はい、お願いします」


「まず前提として異世界人の方には主に2つの選択があります。それはーー


 進学か隷属かです」



「え……?」





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