第5話 星猫編 二人の天才④
「マリアはギムから離れないで。ギムはマリアの許可なく連撃光速剣の使用禁止!」
とりあえず、被害を出さないことを最優先。
幸いと言うか、ギムは王宮以外で使っていない。これが唯一の救い。町中で・・考えただけで恐ろしい。
後は賠償金だが・・・。
「マリア、あのお金だけど、借りていいかな?」
「もちろんです」
マリアの好意は受け取ることにする。と言うか、受け取らないとスノープリンセス本店が終わる。借りるという形で、賠償金を支払うことにした。
「では、皆様が居るので、明日お会いする2人の子についての情報をお伝えしましょう」
情報部が、あの2人の情報を持っている。まぁ当然だが・・・
「あいつらか?」
ギムまで知ってるってのが、納得いかない。
なんで私が知らないことをギムが?
「ゴルノバ王のご指示で、ギム様はソーマ様、ヘレン様と対戦しております」
10歳児をギムと?睨まれただけで死んじゃうぞ。
「ギムが負けると思わなかったわ」
マリア?今なんと?
「ああ、あいつらは強い。うちに来るなら幹部扱いだ」
ギム!マジで負けたのかよ?
幾らステータスの貸し借りが出来ると言っても、Aランクの防御魔法と、Bランクの攻撃魔法だ。
SSSランクのテレサの防御や、SSS+の飛鳥さんの魔法とはわけが違う。
「ゴルノバ王が極秘扱いになさる所以です」
・・・確かにだ。スノー最強・・いや、ラムタ最強はギムだ。
汎用性と自由度の高さ。
どんな場所で、どんな敵とも戦え、状況を選ばない強みは、私のアブソリュートの上を行く。
そのギムが負けた・・・極秘にしたくなるはずだ。
「明日、ご自身の目で確かめられるのが1番ですが、先に知っておくほうがよいでしょう」
ジェームス係長は部下に指示して、プロジェクターを用意した。
「ソーマ様は防御魔法を使います」
ソーマの絵が映し出される。
「その防御魔法は、Aランクに分類していますが特殊です。任意の場所に、任意の大きさ、形で展開することが出来、多重展開も可能です」
テレサも多重展開はできるが、あくまで防壁と言う形だ。
「ヘレン様の攻撃魔法は『爆裂系』です。威力はまだBランクですが、爆裂系のBランクの威力は、攻撃系の上位ランクと同様の威力になります」
爆裂系の使い手は余り居ない。上位魔法であるが故、習得が難しく、多くの経験値が必要となり、他の魔法への振り分けが足らなくなる。そして使いどころの難しさがネックになる魔法だ。
一撃の威力は高いが、周囲への影響の大きさから、私同様に使う場所が凄く限定されてしまう欠点がある。
「この2人が、ステータスの共有をすると」
動画が再生された。
「なんだって!!!」
私は驚愕する。いやあり得ない。まさかそんな使い方が?
「あれで俺も突進を止められた」
そりゃ止まるさ。
防壁が張られ、ギムが防壁を斬る瞬間、防壁から指向性の爆裂魔法が放たれたんだ。
「ヘレン様のステータスを借りたソーマ様の技『攻撃的防御』です。任意の場所に張った防壁を攻撃、接触をした際、爆裂魔法が発動します。これは、最大2か所まで同時に展開が可能です」
流石のギムも、爆裂魔法の直撃を受けたら・・・止まるさ。
「そしてヘレン様です」
「なんだとぉ!!!!」
さらに大きな驚きが私を襲う。
「ソーマ様のステータスを借り、対象の周囲に防壁を張ったうえで、内側で爆裂魔法が発動します。『局部的爆裂』と呼んでます。この爆裂魔法での周囲への影響はゼロです」
「これで止めを刺された」
ギムが言うが、防壁にこんな使い方があるのか?
身を守る防壁を、敵を包むために使い、更に内側での爆裂。逃げられないし、内部圧は想像を絶する。しかも場所を選ばない。Bランクでも十分すぎる破壊力と汎用性だ。
即戦力と言うより、この2人、最強なんじゃね?
「いかがですか?事前に知っておいてよかったと思いますが」
うんうん。マリリンさんに脅かされてはいたけど、想像の遥か上。
あんぐり開けた口の顔を、見られないですんだよ。
「もちろん、万能ではありません。いくつかの欠点もあります。1つ。片方にステータスを貸し出している最中は、貸した側は無力化してしまいます。魔法を使う事はおろか、全くの無防備となります」
なるほど。
「2つ、2人は近くに居なければ使えません。そして3つ目、喧嘩中など、仲たがいの最中は、貸し出しが不可になります」
バロ〇ワンだ!!!
「このように制約もありますが、爆裂魔法が所選ばず打てることは非常に大きな優位性です。性格もよく、良い子なので大事に育ててあげてください」
「うん、ありがとう。大事に育てるよ」
予備知識を持った私は、翌日リアちゃんと2人で冒険者学校へと行く。
「お待ちしてました」
テレサが出迎えてくれた。
「すみませんでした。ゴルノバ王から極秘と言う事でマスターにもお伝えせずにいて」
申し訳なさそうに言うが、テレサが悪いわけではない。私に内緒にした王が悪い。
後で理由を聞くが、場合によっては凍らせてやる。
「校庭でルクスさん達と待っています」
私たちは校庭に出る。
ルクスさんの傍らには少年少女。
「お久しぶりです」
「ご無沙汰しております」
ルクスさんとサリーさんの挨拶に続き、少年が前に出た。
「あんたが雪姫だよな?おやじから聞いてるぜ」
この子がソーマだ。だが、親父って?
「ソーマ、口の利き方」
ルクスさんに怒られた。まぁ子供の言葉に、心の広い私がいちいち咎めたりはしない。
「へへへ、なんか、よく話を聞いてたから、親しみがあってな。俺ソーマです!バッカスの息子です。よろしくお願いします」
ちょこんと頭を下げ、ソーマはちゃんとした挨拶をした。ってバッカスの息子!?
・・・私は理解した。なぜこの逸材がスノーを希望していたのか。
マーメードは女子限定ギルド。ソーマが居るからマーメードへは入れない。王が欲しがるはずだが、親が居るギルドを望むのは、納得の理由だ。
「あ、あのヘレンです。よろしくお願いします」
ヘレンちゃんは10歳にしては大人びていた。可愛いとの情報通りの子だった。
「では早速、2人の実力を見ていただきます」
ルクスさんが剣を抜き、テレサが後ろに構えた。
「私が解説をしますね」
サリーさんが私たちの横に立つ。
剣は本物だ。模擬戦ではない実戦形式の戦闘訓練だ。
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