異世界転生したけどなんか思ってたのと違うのですが
@tart-mint
第1話俺の担当女神、バカなのですが
「佐藤 晴斗さん。ようこそ女神の部屋へ。晴人さん、あなたは死んだのです。」
佐藤 晴斗(さとう はると)。それは確かに俺の名前だ。
俺は、日本で食っちゃ寝食っちゃ寝していた17歳の自宅警備員高校生だ。高校生とは言っても高校生らしい生活をしていたわけではないが。
「あれ...?おかしいおかしいここどこだよ。日本...じゃないよな...?」
「ここは言った通り女神の部屋よ。そうね、わかりやすく言うと死んだ人がくる場所ね。」
女神の部屋?部屋の持ち主であろう女の子は、長い銀髪に綺麗な青い瞳。それに色白の肌、長い手足そして女性らしい体つき。そんな体をまとう白ベースでところどころ青い服。美しいそんな言葉で済ませるのが失礼なぐらいぐらい美しい。そんな美しい美貌の女の子が目の前にいる...。それこそ『女神』であることを認信じさせるにふさわしい風貌だ。そんな女神様の部屋なのか...ここは...。なぜ俺がそんな女神様の部屋に...?
いや、それよりなんかおかしいこと言ってなかったか?
そう、確か
「死んだ人が来る場所...?」
「そう、晴斗さん。あなたは死んだのです。」
「死んだ.......?いや、死んでないだろ、俺は。現に動いて喋れるじゃねーかよ!」
「思い出せないの?。まあ、死んだ直前の記憶は抜ける人多いからねー。思い出してみてーー。」
軽いなこの子。彼女の容姿は見とれるほど美しいのだが、なんか中身が残念そうだな...。まあいいか。
「どうやっておもい出すんだよ。」
そうぼやくと。
「ん?頑張るのよ。」
なんがこいつ、本気で残念そうだよ。
そして俺は先程の記憶を思い出そうと....。
俺は普段はジャージという自宅警備員の正装を来て家に引きこもりゲームをしていたのだが、今日は外出をした。
新作のゲームを手に入れるために。まあネットで買えないこともないが、店舗で買うと得点で推しキャラのコスチュームが手に入るという甘言に惑わされたのだ。
「朝7時に起きて往復4時間の移動時間経てやっと手に入れた!。家に帰ったらゲーム三昧だぜ。」
そう、俺はゴロゴロする時間を犠牲にしたがしっかりと店舗にてゲームソフトを手に入れたのだった。俺は最初のキャラメイキングやスキル構成など、今日のやることの順序を考えるために頭をフル回転させていた。
そのため俺は周りが見えてなく、ボリュームを調節もしていなかった。
「お母さん、あのお兄ちゃん1人で喋ってるよ。」
「しーっっ。だめよ、そんなこと言ったら。関わっちゃダメよ。」
俺はゲームのことから思考を少しずらし、遅まきながら状況を判断した。
「くっっっ。」
そう今度は周りに聞こえないようにこぼし、自分の顔が羞恥心で赤くなるのを自覚しながら早歩きで歩き始めた。
すると俺の背後から大きな影が迫ってきて...。まどろんだ意識のなか誰かの叫び声が聞こえて...
「あっっっ...」
俺は瞳から涙がこぼれ落ちた。いつか学校に行ってくれることを期待して引きこもってもなお学費を払ってくれた親に、自分の行いのせいで心に大きな傷を負ったであろうトラックの運転手に、
「ごめん、ごめんなさい...。」
俺は、そう言って自分の親不孝ぶりと関係ない運転手を巻き込んだことへの申し訳なさからしばらく涙を出し続けた。
俺が落ち着くのを静かに見守っていた女神様は
「思い出したの?」
そう聞いてきた。
「すみません、取り乱して。はい、思い出しました。俺はトラックにひかれて...。」
「トラック...?違うわよ?」
「え?いやいや...? え、じゃあ俺の死因は...?」
「熱中症よ?」
「...は?いやいや、だって、俺死ぬ前に後ろから大きな影が...」
「ん?...あーそれはね、雲よ雲。あなたは引きこもりでしょ?そんなあなたがよく寝てない状態で遠出なんてして炎天下の中活動するから倒れるのよ。」
「引きこもりいうな。自宅警備員だから!引きこもりなんかじゃないから!」
「 なにが自宅警備員よ。引きこもりニートじゃない。」
おい、何だこの女神様。すごく腹が立つ。なんだろう...ボコボコにしたい
「言うな。くそ女神。引きこもりは認めるがニートは認めない。」
そう、俺は高校生。ニートとは、成人したが働かないやつのことだ。俺は断じてニートでもない。
そしてなんか気になることを言っていた。そう、確か...。
「なに、俺の死因って熱中症?!」
俺の死因は本当に熱中症なんだろうか。だとしたらさっき流した涙はなんだったのだろう。いや、親に対する謝意は正解だが。
「そうよ、熱中症。あなたはつい先程熱中症で倒れたの。私の見通す目によると倒れたあとすぐに車に乗っていた人が救急車に連絡。その後病院に搬送。医者と看護師の治療も虚しく死亡。ってとこね」
「そうか、じゃああの叫び声は連絡してくれた人だったのか。」
「ん...?見通す目...。じゃあ俺に死因思い出させなくても良くない?それとも俺の死因ぐらい見通せ無い使えない目なの?」
「見通せるわよ。舐めないでちょうだいな。見通す目を使うの面倒くさくてねー。どうせくだらない死因なんだから使わずにさっさと天国行きにした方が楽じゃない。どうせもう一度人生を歩むなんて選択しないんだし。」
なんだ、この女神。曲りなりにも死者を導く役職なのに寄り添ってくれもしねえ。なんなら煽ってきやがる。ほんとに女神かよ...。ん.....?なんか最後に変なこと言ってなかったか?
そう、確か。
「え、女神様、俺ってもう一度人生歩めんの?」
「あら、さっさと天国に行くもんだと...。まあいいわ、えっとねー。」
わざとらしく咳払いをして目の前の女神様は
「若くして死んだあなたには人生をやり直す機会を与えましょう。もしその機会を選ぶのならあなたは現在魔王に脅かされてる異世界に記憶を引き継いだまま転生させてあげましょう。
選ばないのなら、あなたは天国に行かせてあげましょう。」
いつもの口調とは違い、畏まってることからこれが本来の女神の仕事なのだろう。それにしても....。
「異世界行き?!なに、俺異世界に行けんの?!はい、はいはい行きます行きます!!!」
「異世界転生を選ぶのね。引きこもりのくせに。」
そろそろ殴るぞこの女神。いちいち煽んじゃねえよ。
「そーだよ。貧弱な引きこもりがり魔王がいる異世界で生きていこうとしてんの。そんな言うならいい能力の1つや2つくれよ。いいのか、俺が直ぐ死んでも。」
情に訴えつつ、チート能力をねだってみる。
「図々しいわね。別にあなたが死んでもどうでもいいわよ。だって引きこもりなんて送っても何の役にも立たずに死ぬのは当たり前だもの。まあチート能力はあげるけど。この中から選んでねー。」
そう言って何枚かの紙を渡して来た。やばい、目の前の子殴りたい。失礼だけど1発かましたい。まあ、ここで落ち着いて水に流すのが大人の対応ってわけよ。いや、決してチート能力貰えないのが怖いとかじゃないから.....違うから!!
「へーチート能力ってやっぱ異世界転生には必須なのか...。そして今後の自分の人生を左右する大きな要素だ、慎重に選ばないと...。」
そうだ、慎重に選んで活躍すれば「勇者様ー♡」なんてちやほやされ、異世界ハーレムなんて作れるかも...。
やべ、やる気出てきた。
俺は異世界での己の活躍を夢に見ながら紙を見る...。
「あんた、びっくりするぐらいゲスいわね...。引きこもりが期待しちゃったりしても無理だから。せいぜい雑魚モンスターにやられて終わりよ、終わり。」
「おい、夢を壊すなくそ女神。ちょっと黙ってろ、集中するから。」
あのくそ女神...。なに見通す目で人の心見透かしてんだよ。そんな性能高い目ずるいぞ。あの女神の前では邪なこと考えないようにしないとな。見通されたらたまったもんじゃない。
っと違う違う、今は俺の晴れ舞台のためにもいいチート能力を選ばなければ....。
怪力に超魔力、聖剣エクスカリバー、魔剣ムラマサ、それに...全属性に対する完全耐性...?
「なあ、女神様。この、全属性に対する完全耐性ってなんなの?」
「あーそれはねー。あなたが行く異世界はね、火、水、土、風、そして光、闇っていう6属性があってね。それを取得すれば耐性が貰えるの。簡単に言うと魔法による効果を一切負わないってとこね。」
「へーすごいな。ん...?でもそれ取得したらバフや回復魔法による耐性もあるのでは...?」
「知らないけど、そうなんじゃない?だって回復系は光の、バフはそれぞれの属性魔法だもの。」
......なんだこの女神、なんか適当だぞ。チート能力の効果ぐらい知っとけよ。しっかし使えなさそうだな。回復できないとかどんな鬼畜仕様だよ。
でも、回復魔法やバフに疑問を持たなかったことから魔法は存在する異世界なのだろう。せっかくなら魔法使ってみたいな。
他には …各最強の冒険者1名...?
「なあ、女神様ー。これ、どういうものなの?」
「あーそれはねー。あっちの世界には冒険者っていう職業があってねー。その冒険者の中でも上級職、しかもとびきり腕のいい上級職とパーティを組めるってことなのよ。
ふむ、これには欠陥はない...よな?パーティ組むだけなら何も問題は無いはずだ。 んーーー迷うな、せっかくの2度目の人生。今度は引きこもらずにイケイケの異世界暮らしをしたい。そのためには慎重に、慎重に選ばなければ。
「ねーーー、何をそんなに悩んでんのーーー。もう私さっさと送還したい気分なんですけどー」
だるそうに頬杖つきながらそう言ってきた。
元はと言えば、デメリットをしっかり把握してない女神のせいでこっちが吟味しなくちゃいけないはめになってると言うのに。
そんな気持ちから少しキレぎみで、
「あーうるさいなぁ!新しい人生の門出のためにも慎重に選ばないといけないんだよ!」
そう言って再び紙に目を落とした。
うん、やっぱり魔法使いたいし『超魔力』にするか!これはさしてデメリットはないとそう思ったが、慎重さゆえ問いかけてみた。
「なー。超魔力ってどのくらい強いの?」
「超魔力?あー確か初級魔法で焚き火に火起こそうと思って街中大火災になったり風魔法使って思いがけず街破壊しちゃったりしたぐらいよ。」
「どんだけ街破壊すんだよ!!。....おい、魔法のコントロールってできるもんなのか ?」
超魔力はすごいが、思いがけず街でも破壊してみろ。警察的機構に捕まって内臓売るレベルの借金とか負いかねない。そうなってみろ、異世界生活楽しむどころじゃないぞ。
「分からないわよ。だって魔力値とコントロールは別物だもの。超魔力があってもそれを使いこなせるかは別問題よ。」
まじか、持ってるものを扱いきれるのも才能ってことなのか。
ん...?ってことはもしや怪力も...。
「マジですか...。じゃあ怪力は?」
「怪力はねー。剣を強く振ったら半ばから折れたり怒って地団駄踏んだら家倒壊したりしたぐらいよ。」
「おい、使い勝手わるいな!怪力はコントロールできたりは...?」
「しないわよ。だって筋力値とコントロー...」
「聞いた!聞いたよ!」
欠陥ありまくりのチートだな...。そうだな、上級職とのパーティ券にするかなー。えっと...職種は....ソードマスター、ヒールマスター、賢者、シールドマスター、スナイパーぐらいが使えそうだな...。
前世でも割と主流だった冒険者職に目星をつけ、また吟味する...。
せっかくのパーティだからな、自分と相性のいい役職を是非とも選びたい。迷う...迷うな。
俺は引きこもりで、ちょっと外出て熱中症で倒れるぐらいだ、異世界でコロッと死んだらハーレムどころじゃない。
それなら...。
「よし女神様!、『各最強の冒険者1名』でヒールマスターを指名するぜ!! 」
これからの異世界行きの嬉しさでテンション上がってしまった。これでやっと....。
「やっと決まったのねー。じゃあこの門をくぐりなさいな。
門を抜けると初心者冒険者のまち『フスト』に出るわ。」
ここから俺の人生の第二ラウンドの開始だ!!!異世界では日本のような引きこもり生活にならないことを切に願いつつ門をくぐろうと.......して、はたと気付いた。
俺、英語嫌いだったけど、果たして異世界語ってどうなんだろうかと。ちゃんとした教師がいて、教科書があったにもかかわらずできなかったのだ。もし、1から学ぶのならまずは先人の日本人を探す所からだ。そんなのは嫌だな、途方に暮れて死にかねない...。
「女神様、俺ってあっちの世界の言葉って話せるの?」
「あー忘れてたのよ。女神の超すごい女神パワーで日本語の知識をそのまま異世界語に入れ替えれるわよ」
なるほど、忘れてた...。ざけんなよこの女神。俺が思ったような異世界暮らしから始まってたらどうすんだよ。まあ、未遂で良かったと言うべきか…。
えっと...?日本語という概念をそのまま異世界語にするのか...? でも、記憶が抜け落ちちゃった!なんてなったら笑えないし、聞いておくか。
「女神さまー、入れ替えだけにとどまらず記憶消えるとかないですよね...?」
「んーー大丈夫よ。私は女神なのよ!失敗なんてしないわ!」
どうしよう、心配しかない。こいつ女神とか言ってるけどチートもしょうもない欠陥しかないし、大事なこと忘れるし、心中をそのまんま見通された見通す目の信憑性だけは認めるが......見通す目。そうか、見通す目それで未来とか記憶入れ替えの成功率を見てもらえばいいのではないのか?多分できるのではないか...?
「女神さまー、その見通す目とかいうやらで成功するかしないか確認とかできないのか?」
「出来るわよー。だって私女神だもの!」
出来るなら最初からやればいいのに...。いや、こいつバカそうだし忘れてたのか...?これからはちょっとの疑問でも聞いていくとしよう。こいつは頭は残念だが、能力はすごいからな。
「うん。見通す目によると大丈夫みたいね。まあ、私が失敗するはずないけど。あと、私の能力をそんなに褒めないでよね。これはあなたに授けれるようなものじゃないのよ。」
...忘れてた、こいつ心見通せるじゃん!ってか頭は残念ってのはノータッチなんだ...。やっぱこいつ馬鹿だな。そんなことを考えつつ、できるといったことを信じ、
「女神さまー。じゃあ記憶の入れ替え頼みます。」
「はい、出来たわよ。これで、大丈夫なはずよ。」
「実感無いな。まあ、なんにしてもこれでやっと俺異世界生活の始まりだ!」
本当に記憶は入れ替えれたのか、なにかしらの副作用や記憶の消去とかないのかと、心配は尽きないが...。腕だけはいい女神のことだ、大丈夫だろう......多分。
そんな心配をはるかに上回る期待を胸に、俺は門に向けて歩き出した。
あ、そいえばあの女神様の名前聞くの忘れた...。名前ぐらい聞けばよかった。俺に第2の人生を与えてくれた人なのに。次会った時にしっかり聞くとしよう。
そんなことを考えながら門を潜り数歩歩くと ....。
「うっっ。」
視界が白く染まり、視界が色を取り戻したとき、目の前には知らない光景が広がっていた...。
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