閑話 新しい拠点
今回の旅では色々な宿に宿泊している。安宿ばかりなので、小さなトラブルが多いのだが、それまた一興である。
最初の宿はガーデナにある古いモーテルだった。とてつもなくボロいが、その分安いことが特徴。周りのモーテルが一泊100ドル越えなのに対し、ここは88ドルで泊まれる。
ただ、貧乏そうな長期滞在者が多く、治安も良いとは言い難い。設備も酷い。シャワーの温度が安定しない。トイレが流れないことがある。コンセントがゆるゆる。部屋には落書きだらけ。ルームキーもたまに故障する。それに部屋も薄暗い。
そんな酷い宿なのだが、安かろう悪かろう。居住空間を気にするならば、金を惜しんではならないのだ。
次はダウンタウンのドミトリー。ここは比較的マシな宿だ。ドミトリーだが、意外と綺麗で同じような若者ばかりなので、話も弾む。自前の南京錠を用意すれば、セキュリティも問題ない。
ただ、シャワーの数が少なく朝は混雑する。冷蔵庫も小さく、新参者が利用出来るスペースはほとんどない。ベットでは飲食禁止なので、冷蔵庫が使えないとかなり不便だ。
サンディエゴのドミトリー。ここではドミトリーにしては少し奮発して、50ドルでダウンタウン近くの宿にした。
ここはかなりの当たり。内装が洒落ている。廊下や階段の至る所に絵が描かれている。キッチンは広く清潔で、飲み物も無料だ。遊戯室にはビリヤードと古いゲーム筐体が置いてある。部屋には八つのベッドとシャワーが付いている。部屋の外にもトイレがあり、ランドリーもある。かなり快適な宿だ。
さて、本題は新しい宿の話だ。今回は「びびなび」という日本人コミュニティのサイトで、ルームシェアを応募した。場所はガーデナの住宅地。カジノからは徒歩20分の距離だ。一週間で250ドルという安さに惹かれて応募してみた。
相手からは「了解したので、来てくれ」とだけメールが届き、その後は音沙汰がない。仕方ないので、当日に指定の住所へ行ってみる。
ちょうど昼前には住所に書かれた場所へ到着。しかし、ドアをノックしても誰も出て来ない。住所を間違えたかと思い、隣の家をノックする。すると今度はメキシコ人が出てきた。ホセと名乗るこの男、かなり怪しい風貌だ。日本人の奥さんがいるらしいが、奥さんは仕事は行っていて、彼は家でビールを飲んでゴロゴロしているらしい。一応、彼に隣の部屋のことを聞くが、寝ているんじゃないかと言って部屋に戻ってしまった。
さて、困った。近くの椅子に座って待つことにする。近くの家からは日本人らしき顔つきの人が出てきたりするのだが、なんとなく気後れしてしまい声をかけられない。
そんな感じで30分ほど待っていると、先ほどのメキシコ人が家から出てきた。犬の散歩がてら奥さんの職場へ行くから付いて来いと言っている。家の前で待っていても暇なので、一緒に行くことにした。
道中、このメキシコ人の話を聞く。名前はホセ。日本人と結婚していて、最近引っ越して来たらしい。仕事で怪我をして療養しているようだ。今でも肩が上がらず、痛みに苦しんでいると言っていた。
道理で日中からフラフラしているわけだ。年齢は42歳だが、人懐っこい笑顔を浮かべる男で、散歩していても知り合いによく声をかけられている。最初見た時は怪しい奴だと思ったが、意外と良い奴なのかもしれない。
その後、奥さんの職場へ行ったが、忙しいと追い返され、家に戻るとオーナーが帰ってきていた。
ルームシェアの件を話すと、すぐに部屋を案内される。鍵付きの個室にベッドと机。キッチンやトイレ、シャワーは共同で少し汚いが、使う分には問題ないだろう。他にも希望者がいて早い者勝ちだ、と言われたのですぐに契約することに決めた。料金は一泊40ドル。これでも十分安いのだが、更に12泊で400ドルへまけてもらった。
その後は、オーナーの車で日系スーパーへ連れて行ってもらったりした。親切なオーナーだ。周りにも日本人が多く住んでいるので、面白い経験が出来るかもしれない。
新しい生活は、新しい経験をもたらすのだ。
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