ドグマくんとおはなのかんむり

いざよい ふたばりー

ドグマくんとおはなのかんむり

今日は母の日。

いつもの様にドグマくんは遊びに出かけようとしています。

居間の前を通りかかると、テレビからこんな声が聞こえてきました。


「今日は母の日です。お母さんに日頃の感謝を込めて贈り物をしましょう。きっと喜んでくれますよ……」


「おかあさんのひかぁ。へーっ。カーネーションっていうおはなをあげるのか」


ドグマくんはテレビを熱心に眺めていると、


「あれっ?このおはな、いつものあきちにさいているのとにてるなぁ。あ!そうだ!おかーさーん、いってきまーす!」


ドグマくん達が遊んでいる広場には綺麗なカーネーションが咲いており、それを思い出したドグマくんはこれ幸いと広場に急ぐのでした。


「カーネーション!カーネーション!まっかでかわいいカーネーション!」


歌の様なものを口ずさみ、軽い足取りで意気揚々と歩いています。

でこぼこ道を歩き、商店街を抜け、橋を渡ると住居もまばらになり……。

道草をしながら、家を出ること20分、いつもの広場に到着しました。


「あきちにとうちゃーく!あ、ふたりとも!」


広場の入り口に、小さな影が二つ。

いつも一緒に遊んでいるお友達の、こうさぎのラニーちゃんとこねこのニアちゃんです。


「あ!ドグマくんやっときた!やっほー!!」


ラニーちゃんが元気に手を振ります。


「こんにちは、ドグマくん。やっとといっても、わたしたちもすこしまえに、ここについたばかりですけどね」


ニアちゃんがお上品に手を振ります。


「ニアちゃん、ラニーちゃん、やっほー!」


「ドグマくん、きょうはなんのひか、しってる?」


「しってる!ははのひでおかあさんにカーネーションをあげるひ、だよね」


「そうです。だからさきほど、ラニーちゃんとおはなしして、カーネーションのかんむりをつくって、おかあさんにわたそうっていってたんです」


「かんむり、いいねそれ!おはなをわたすだけよりずっといいや」


「シロツメクサと、カーネーションでかわいいかんむりをつくるんだよ。じゃあみんな……」


ドグマくん、ニアちゃん、ラニーちゃんはお互いを見つめ合い……。


「えいえい、おーーーっ!!!」


早速お花を集めて冠を作ろうとしましたが……

う〜ん。ニアちゃんとラニーちゃんは上手に作り上げていますが、ドグマくんはなんだかヘンテコな形になってしまいます。


「うまくいかないなぁ……。ちょっときゅうけいしよっと。」

作りかけの冠を放り投げ、ゴロンと寝転ぶドグマくん。


「どうしたの?ドグマくん。」

「ラニーちゃんみてよこれ。ふたりみたいにできないや」

そう言ってはにかみながら拾い上げた冠は、確かにお世辞にも綺麗な出来とは言えない物でした。


「あらら。あっちこっちとびだしてますね。あ、でもこれ、すこしてをくわえたら……ね、ラニーちゃん?」

「そうね!つくりかたもおしえてあげるよ!」

「ほんと!?ラニーちゃん、ニアちゃん、ありがとう!」


そこはこうして、ここはこうでとラニーちゃんとニアちゃんの助言を受けながら、ドグマくんは一生懸命作り上げていきます。


辺りが橙色に染まる頃、


「できたー!!」


3人の歓声が広場中に広がりました。

お日様はすっかり傾いて、あたりはすでに夕景色。

壊さないように慎重に、でもできるだけ早くかえろうね。

足元にきをつけて……あっ!ほら危ない!!


「わっ」


ドグマくんは足を引っ掛けころんでしまいまって……!


「だいじょうぶ?ドグマくん!」


ラニーちゃんとニアちゃんが駆け寄ると、


「だいじょうぶたよ、ほら!」


その手にはさっきまでの綺麗なままの、お花の冠がありますね。ドグマくん、すごいすごい!

でもドグマくん、怪我は大丈夫……?


「すごーい!ドグマくんおはなのかんむり、まもれたね!」


「えへへ。だいじなおかあさんへのプレゼントだからね!」


「でもドグマくん、おけが、してるよ、いたそうだけどだいじょうぶ?」


「あら、ほんとですね。きずぐちをあらってバンソーコーはらないと……。」


2人が怪我を心配している事に気づかないで、冠を壊さないようにそーっと立ち上がるドグマくん。

慎重に、慎重に、そーっと。そーっと……。


「なにしてるのふたりとも!はやくかえらないと、くらくなっちゃうよ!」


あらあら。怪我には気づかないみたいですね。

2人はやれやれ、といった表情で顔を見合わせてると、ドグマくんに続きました。


その後は慎重に慎重に、転ばないように、壊さないようにカラスの鳴く帰り道を帰って行きました。

やがておうちにたどり着き……。


「ただいまー!!おかあさん、はい、これ!ぼくたちでつくったんだよ!」


お母さんはお礼を言い、嬉しそうに受け取ると、冠を頭につけました。


「わあ、ほんとのおひめさまみたい!おかあさん、いつもありがとう!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ドグマくんとおはなのかんむり いざよい ふたばりー @izayoi_futabariy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ