11.終着

岩内町の海岸は雷電海岸らいでんかいがんといい、市街地の手前まで断崖と岩の風景が続く。


「うわっ!なんかすげぇ岩が見えてきたぞ。」

運転している岩清水が奇声を上げる。


「ほんとだ。道路に転がって来そうな岩だな。」

道路の海側の縁に根本がえらく縊れた大きな岩があった。


後で調べたところに依るとと言うらしい。


僕らは歓声を上げてその岩の傍らを通り過ぎた。


 

笠岩を過ぎて10分程走ると岩内町の市街地に入る。


そろそろ昼飯時である。


「昼どうする?」

僕は特に案があるわけでもなく訊いた。


「なんかもうコンビニで良いな。」

三浦が言う。


「それでいいわ。」

岩清水も同意する。


昨日からずっと走り続けてきた僕らはもう食事処を探すことすら億劫になっていた。


岩内町の市街地を惰性で走り抜け、共和町きょうわちょうに入るすぐ手前のところにコンビニの駐車場を見つけて入る。


都合の良いことにコンビニから目と鼻の先に共和町のカントリーサインが見える。


ということは反対側に岩内町のカントリーサインがあるだろう。


「あったあった、まずは写真撮ろう。」


僕らは道路を横断して記念撮影をした。


「これで5市町村制覇だな。」

僕は満足して言った。


「あと207市町村だな!」

岩清水が途方もない数字を持ち出す。


「お前行くんだろうな?」

三浦がけしかけるが自分が行く気は無さそうだ。


僕も岩清水も沈黙した。



「じゃあ、一応次の市町村引こうか。」

もう次の市町村に向かう気は毛頭無い。


行く気はないと念押しした上で三浦が引くことにした。



「♪何が出るかな何が出るかな チャララ ラ ラ ララララン」

コンビニの駐車場の傍らで唄いながらくじを引く。


「ん?ロケット?」

ロケットかスペースシャトルの様な絵が描いてある。


北海道でスペースシャトルと言えば余市よいちだろうか。


余市だとすると完全に帰り道である。


「あ、大樹町たいきちょうだって。大樹町ってどこ?」

三浦が下半分をめくりながら告げる。


「あぁ、大樹町か。それは十勝だわ。」


「十勝じゃ行けないな!」

岩清水が何故か残念そうに言う。

確かに札幌から十勝平野まではざっくり200kmある。


「行けないな!行かないよ!」


「よし、帰ろう!」



僕らの第1回の旅はこうして終わりを告げ、この後ダイジュと浅野を加えた海キャンプで全てを語り合った。


二人とも興味深げに話を聞いていた。


いつか一緒に続きの旅に行くこともあるかも知れない。


今回は旅をするつもりで出掛けたのではなかったが、次回大樹町に行く事があるとするならば、それはもう旅の火蓋を切るという事だろう。



波音は旅の余韻を奏で、星空は僕たちの行末を見守るように瞬いていた。

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思吉!北海道212市町村カントリーサインの旅 思吉本部長 @omokichi

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