人の人生はどうなるかなんて判らない

katsumi1979

第1話 仮名、鈴木浩司という男性

これはある人のお話です。彼は仮に鈴木浩司さんという仮名にしましょう。鈴木さんは、とても身体が弱く病弱です。


小さい頃から入院ばかりしていました。

何をするにも必ず医師の許可が必要で小学校の体育の時間も制限されていたようです。


鈴木さんは忘れ物も多く、クラスでもあまり目立つ方ではない一方、勉強にも真面目な方だったそうです。


しかしながら一生懸命にやっている姿は見受けられているものの、テストの点数は良くない。ノートをみてもびっしりと書いており、悪ふざけをしたりという素行が悪いわけではありません。


先生たちもどうしたらよいかわからず鈴木さんを怒るに怒れない。個人的に教えるにも真面目にその姿は取り組むが成績は良くならなかった。


やがて先生からもどうしてそれだけやってるのに鈴木さんは全く伸びないだろうと思い悩むようになった。実際にテストになって取り組むも、わざと答えを書かない素振りも無さそうでした。


高学年になると医師から体育をしても大丈夫と言われるようになる。

しかしまともに体育の授業を受けられなかったせいかチームでプレイするスポーツを行うも全く上手くいかず次第にみんなから『アイツは足手まとい』

という扱いを受け、鈴木さんは余計に元気を無くすのだった。

ゆえにクラスではあまり笑わない子になりました。


心配になった先生は鈴木さんの親を呼ぶことになりました。

「今日は浩司君の事でお話があります」

「浩司君は家ではどのようにお過ごしですか?」

「ゲームをしたり、漫画を読んだりしています。好きなアニメもみていますね」

「・・・友達と遊ぶことはありますか?」

と、先生は鈴木さんの親に質問したらしい。

「たまに」

「誰でしょう?」

そしてクラスメイトの1人の名前が挙がる。どんな遊びをしているか後日先生が聞いてその答えは驚かれたそうです。


「ブランコ、砂遊び、公園の椅子に座りボーッとしている」

そういった情報が出てきた。でもあまりその子とも遊ぶ事はなく、互いに1人の遊びが互いに楽しいそうだ。


もう一度先生が鈴木さんの親に面談をする。

「浩司君、外でも1人で遊ぶことが多かったようですね。お母さん、このことはご存知でしたか?」


「いえ、話さない子なのであまり知らないのです」

「・・・どうして聞かないのですか?」

「聞いてもあまり答えないからです」

「・・・家ではどんなお話されているのでしょう?」


「特に、浩司も悪い事もほとんどしないので」

「浩司君を褒めたり、叱ったりはした事はありますか?」

「ほとんどありません」

「ない?」


「えぇ、浩司は悪い事しませんから」

人から褒められたりもせず、かといって悪い事もしない。先生は不安になっていったそうで、このまま育つとどうなるのか先行きが不安になった先生は喜怒哀楽について聞いてみる事にしたみたい。


「家では喜怒哀楽についてどうでしょう?」

「喜怒哀楽?」

「そうです。例えば何かについて怒ったり、笑ったりはしますか?」

「さぁ?ほとんど家帰ったらゲームしかしませんから解りません」


これには驚いた。鈴木さんの親は特別悪いことをしなければ、あとは大丈夫と思っているようだ。ゆえに子供である鈴木さんが怒る姿も笑う姿もよく知らないまま育てる気でいた。

そういう子供が大人になると一体どうなるのか?


想像したら怖い話である。イジメにあったら?ある日怒り出したとき何をするかそれも親は全く想像していない様子だった。

ただただ、悪いことをしなければ良い。そういう考えしかこちらに伝わってこなかった。


ー続くー








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