不思議な井戸

健さん

第1話

家の近くに熊野神社があり、その境内に直径60㎝で深さが6mの井戸がある。その井戸のいわれとして、1年の間に3回だけ願掛けできるらしい。しかも、願いにもよるが、ほぼ、叶えられるという。いい例として、俺の同級生に岸田という市議会議員がいるが、当時10歳になる女の子がいたのだが通学中に居眠り運転の車にはねられ生死をさまよって医者には生存する可能性は低いと言われたのだが、岸田は藁にも縋るおもいでその井戸に願掛けをした。その子は見事生還したのである。医者も腰を抜かした。それからというものその噂が、町内で話題になり一時は、井戸の前には行列ができた。まるで有名などこかのラーメン屋さんみたいに。その井戸には当然”御神体”がいるわけではないのにお供え物も一杯になった。熊野神社が”主”なのに、どちらが参詣の場所なのか。わからない状態である。しばらくほとぼりが覚めたころを見計らって俺もあやかろうとその井戸に行った。(どうか、本日買った宝くじが、当選しますように。)1週間経ち、結果は。な、なんと、4等だが、20万円当選した。(やはりこの井戸すごいな!)現在俺は、課長職だが、来月部長昇進の試験がある。だが、”目の上のたんこぶ”がある。同期の安倍だ。どちらかが、落ちてどちらかが、部長昇進となる。そして、試験前に2度目の願掛け。(部長昇進試験合格させてください。同期の安倍は、落ちますように。そして、交通事故でも遇って、復帰できないようにお願いします。)と、手を合わせて拝んだ直後ポロシャツの胸ポケットに入れていた、定期入れを井戸の中に落としてしまった。中には運転免許証が入っていた。(人を呪うような願掛けしたから、”井戸の神様”怒ったのかな)後日、運転免許センターにて、再交付してもらったが。それから何日後して、近くのシチィーモール、大型デパートに買い物に行った。偶然に中学の同級生と会った。こいつとは、よく遊んだ。社会人になってからも、たまに、一緒に釣りに行ったり飲みに行ったりしていたが、やがて、疎遠になり交流も自然となくなった。今でも、他の友人もコロナ感染もあり飲みにいくこと自体控えていた。ここのところ感染者もだいぶ減り蔓延防止期間も解けている。よって、久々に飲みに行くことになってしまった。っていっても、飲み屋はこの大型デパートの中の店舗だが。「でも、車だからよ。また今度にしようぜ。」「大丈夫だよ。今日は日曜だし、蔓延防止期間もないし警察だって、大目にみてくれて、検問なんかしねえよ。」「おい、何を根拠に言ってるの?そんなわけないだろう?調子のいいこと言ってるんじゃねえよ。」車は、デパートの駐車場に置いて結局飲みに行くことに。6時から飲んで11時まで飲んだ。(話が弾んでしまって、結構飲んだな。1時間でも車の中で寝て行くか。)そして12時過ぎ少し?アルコールが残ってる感じだが、家に向かって車を走らせた。(検問に引っ掛かりませんように。)すると、家まであと500メートル程のところで検問をやっていたのだ。(あじゃぱー!まあ、1時間寝たから大丈夫だろ。)「こんばんは。飲酒検問です。息はいてくれますか。」はあー。「ちょと臭いますね。」「確かに飲みましたが1時間車で寝ました。」「1時間程度でアルコールは抜けませんよ。」結局、呼気1リットル中のアルコール濃度が、0.25mg出てしまった。完全に免許取り消しだ。俺は、逮捕され、10日間拘留されることになってしまった。しかも行政処分で、20万円の罰金刑だ。宝くじ当選金で払うしかない。(せっかく当たったのに、、。トホホ。)あの時断っていればよかったな。”覆水盆に返らず”だ。しかも、会社にばれて、部長昇進試験どころではない。クビだ。拘留中俺は反省した。多分だが、安倍を、交通事故で死ねばいいみたいな人を陥れるような、自分さえよければいいという願掛けしたから、罰が当たったのだろう。罰金も宝くじ当選金とおなじ額だし。”人呪えば穴2つ”とは、この事だな。そして、10日経ち留置場を出て、その足で、井戸に向かった。そして3回目の願掛けをした。反省の意味を込めて。(コロナ感染が完全に終息しますように。ロシア、ウクライナ戦争が早く収束しますように。そして、日本、世界が、平和であり続けますように。)すると、このへんには、桜の樹はないはずだが、どこからか風に運ばれて何枚かの桜の葉が俺の頭の上に舞い降りた。

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不思議な井戸 健さん @87s321n

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