第154話 何処かの誰か

「いい加減に俺が貸した魂を返せ」


 そこはとある場所、一人の男神が女神に対して詰め寄っていた。


「え? 魂? えっと……何か借りていたっけ?」


「150年以上前に貸しただろうが! しかもお前は礼も払わずに逃げやがって……」



「んー150年前? ……魂……魂……あ! あの使えない魂の奴!」


「あん? 使えないって、そんな訳ないだろう?」



「あんなに期待させた割りにすーぐ死んじゃって、しかも神気をほとんど稼げもしない、そんなんだから監視から外しちゃったわよ、今頃魂ごと消滅してるんじゃないかしら?」


「……いや、お前ふざけるなよ……あれだけの称号を稼げて能力も沢山持っている魂が簡単に消滅する訳ないだろうが……」



「実際一年ともたずにあっという間に死んじゃったんだから、次はもうちょっと有能な魂を貸してよね?」


「……あの能力で一年? そんな馬鹿な……いや……お前……またやったな?」



「……またって何がよ……」


「惚けるな、また魂から能力や所持神気を奪っただろ? 魂はちゃんと育てないと意味ないって何回も教えてやっただろうに!」



「知らないわよそんなの! 私の期待に応えられない魂が悪いんじゃない!」


「開き直るなよ! そんなんだから毎度上級神に怒られて降格間際なんて周りに言われるんだよ……まぁいいや、兎に角あの魂がどうなったか教えろ、まだ残ってたら返して貰うからな」



「誰が降格間際よ! ったく……あんなの生き残ってる訳無いじゃないの……」


「ブツブツ文句言わずに早く探せ、権限よこすなら俺が操作してやろうか? 『返す』という約束をしている以上返さないと駄目だろ、神が約束事を破ったらどうなるか知らん訳でもあるまい」



「判ったわよ……どうせ魂ごと消滅してるから約束も破棄されるのに……って……あ、あれ? なにこれ……えええ……うそでしょ……」


「どうした、ちょっと見せてみろ……おお、なんだよすっごい量の神気を稼いでるじゃないか、しかも今は妖精か……この魂はもしかして昇神も有り得るか? てかこれだけ神気を稼いだ魂がいたら気づきそうな物だけどな」



「地上の運営なんて自分の人格を模した化身アバターにやらせておけばいいじゃないの、最近神気の収入量が増えていたのはこの魂がやってたのね……さすが私の選んだ子ね! どうよ、うちの子すごいと思わない?」


「誰がうちの子だ、まぁ生きてたんだから今の生が終わったら俺に返せよ、こいつが昇神するにせよ俺のヒモ付きって事にしたいからな」



「……」


「おいこら、返事をしろ」



「ほら、この魂ってば今は妖精じゃない?」


「だからどうした」



「つまりこのまま長生きをすれば、この魂の生きてきた期間は私の管理する世界の方が長くなると思うのよ」


「だから?」



「それってもう、この魂は私の物って事で良くない?」


「良いわけあるかアホうが!」



「いやぁここまで稼げる魂に育つとはねぇ……それもこれも私の放置育成術のおかげって事で、ね? 決まり! この子は私の物って事で、なんなら今、未払いのおっぱい触っておく?」


「……それがお前の言い分か?」



「あ、あれ? どうしたの? いつもなら、ほら、私の胸を好きにしていいのよ?」


「俺こと×××××は地上管理神として、××××の契約不履行を上申する」



「ちょ! 何をしてるのよ、今本当にやったでしょ!」


「神であるのならば口約束でも契約は契約だ、それを無視する事は許されない」



「なんでよ……いつもなら……」


「いつまでもチヤホヤされると思うな……ん、上級神からの連絡が来た、お前は地上管理神から降格だってよ、見習い神からやりなおせ」



「なんでそんな……は! そういえば最近新しい女神が昇神したって話を……貴方、推しを変えたわね?」


「さて、知らんな……俺はお前の後にその地上を治める新人な女神の手伝いがあるので忙しい、地上管理システムを一時的にロックさせて貰う」



「ちょっと待ってよ! また地上であの修行の日々に戻れなんてそんな酷い事!」


「ほら、お迎えが来たぞ」



 ……。



 ……。



「ちょ。待って、さっきのはちょっとした間違いで、離しなさい! 私を誰だと……ちょ……なに笑っているのよ貴方! 推し変とか絶対に許さないからね!?」



 ……。



 ……。



 そうして女神が連れていかれた事で、その場に残ったのは男神だけだ。



 そんな男神は、その力場で地上のコントロール権にロックを掛けつつ。



「俺が推していたのはお前の身体おっぱいであって性格じゃねぇんだよ、しかも……さらに素晴らしい女神おっぱいに出会った今じゃな……」



 そんな事を呟いていた。



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