第128話 ドラガーナ地方5
「よっこらせっと」
俺は勢いよく農具を畑に叩き込んで雑草の根を切っていく、ほんと土壌が良いから雑草の生える事生える事。
「今日も~今日とて~はた~けし~ごと~」
「あはは、とうさまお歌下手っぴ~」
畑の畔に居る俺の娘に笑われてしまう。
「いいんだよこんなのは上手くなくても、×××も一緒に歌おうぜ」
「いいけどお仕事終わったら遊んでくれる?」
「おうよ、どんとこいだ、じゃいくぞ~今日も~」
「きょうとて~♪――」
休耕地であった畑にはそうして親子の歌声が響いていく。
あ、こんちわ、46歳人間族のリオンです。
今は休耕地をまた畑として使うべく耕しています、近くで俺と一緒に歌っているのは人間族で5歳になる俺の娘です。
隠れ里で嫁を取る事になった俺、まぁなんだかんだと色々あって……レジスタンスの戦えない人員は獣人国のドラガーナ領に向かう事になったんだ。
理由としてはカーラ様がここの領主の息子のイケメン山羊獣人と結婚をした事もあるんだが、ドラガーナ領のまだまだ空いていた土地を人間が開墾をして食料を増産する事で、連合国への貢献と為すのが目的だ。
やっぱり人間はちょっと種族として嫌われている場合もあるからね、なにかしらの利益を連合に
なのでレジスタンスの戦闘能力の無い人間達のほとんどが移住をする事になった。
大規模移住の指揮を取らされた俺は心を擦り減らしながらもそれをやりとげたよ……レジスタンスの隠れ里って一か所じゃないからさ、総勢で数千人の移動とかまじできつかった。
そんな大仕事で獣人族にはかなり助けて貰っちゃったんだよね、勿論数千人を一回で移動させる訳じゃないから、戦闘の出来る獣人族数百人単位の支援を受けつつ、移動を何回にも分けてね……あー思い出したくねぇ面倒くささだったなあれは……。
「ぱぱ~母様達がごはんだって~」
む、畑の向こうから俺の娘が大きな声で伝えて来る、猫族の可愛らしい耳と尻尾がピョコピョコ動いているね。
俺は側に居た娘を肩車して家に向かう。
途中で回収した猫獣人でやっぱり5歳になる娘を胸の前に抱き上げて歩いていく。
「あははとうさま、たかーい」
「むー×××ちゃん、つぎは 私がパパに肩車して貰うんだからね~」
「ケンカしないでくれ、後で順番にやって――」
「あ、ずるっこいぞお前ら、父さんは畑仕事だから俺は我慢してたのに!」
「とうさま~はやくご飯食べましょう」
「ととさまごはん」
家に近づくと何人もの子供が家から現れ、それを追うかのごとく家から猫獣人の美人さんが現れた。
「お帰りリオン」
「ああミャー、もう仕事は終わったのか?」
「ふふ、若様も夫婦の時間を削る事には反対らしくてね」
ああ、自分達が忙しくて夫婦の時間が少ないって嘆いているものなぁ、あのイケメン山羊獣人君は。
俺の前に居る猫獣人の女性は……隠れ里まで一緒に移動をした隠密忍者部隊の部隊長のミャーさんだ、レジスタンスの隠れ里で獣人と人間の間を取り持って色々お世話をしていたら……俺に対して好意を持たれたみたいで……そもそもその時点で俺には隠れ里の未亡人やら娘っ子な嫁が何人か居たんだが、嫁達も賛成したというか……俺とミャーさんが良い仲に成る様に誘導していたっぽい。
ミャーさんに相談された俺の最初の嫁であるメイス使いの嫁が画策したみたいでよ……。
そんでレジスタンスの非戦闘員の大規模移住の時なんかにも、ミャーさん達獣人にはすっごいお世話になって……結局……猫獣人の嫁が3人増えた、あれ? 数おかしくね? とか言わないで。
俺にも良く判らんのだが一緒に困難な仕事をこなしていたからなのか、すっごい好感度が上がっていくというか……男の獣人達な友達も一杯出来るしさぁ。
なんだろうねこれ? 前世であった嫌われる呪いの反動とか?
なので俺は嫁を複数人抱えた大黒柱な訳で。
そんで今は、カーラ様やイケメン山羊獣人の結婚が良き物だったと周りを納得させる為に、人間族は役に立つぞと示すべく農耕を頑張っている日々だ。
勿論裏では料理や酒を使った外交や調略をこなしつつ、裏での仕事も始めたので気軽に出歩けなくなっちゃったのよなぁ。
レジスタンスにも神像がかなり流れて来て、様々な祝福を得た人間が現れているので開拓がめっちゃ捗る。
そんなこんなでワーワーキャキャー俺達の周りで騒いでいた子供らを家に入らせて、外に残った俺と隠密忍者部隊のミャーさん。
「で、どうだったミャー?」
「リオンの提言が通ったおかげで……2人の人間国のスパイを処分出来た」
「レジスタンスの情報が効いたな、でもまだまだ油断はするなよ、愛しい奥さん」
「判っている、私はまだまだリオンの子供を産むつもりだからな、慎重にやるさ、愛しい旦那様」
人間国は結構幅広くスパイを浸透させていたみたいでよ……今はちょっとづつ刈り取っている所だ、俺が畑を耕す様に、雑草はしっかり抜いておかないとな。
「しかしな、任務から帰って来た嫁にいきなり仕事の話は無いのではないか?」
「それもそうだな、ご苦労様ミャー」
そう言って俺は猫獣人な嫁の顔に手をあてて引き寄せる。
「「チュッ」」
「ふふ、しばらくはお休みだし、今日は頑張るからね、だ・ん・な・さ・ま?」
「お、おう……まぁ……俺にとっては毎日頑張る事に成る訳ですが……」
「何か問題が? リオンは嫌なの?」
「問題ありません、ガンバリマス」
「よろしい、では皆でご飯を食べようか」
「そうだな」
そう言って猫獣人の嫁と一緒に大きな大きな家へと入って行く。
色々と裏で指示を出す側になったせいで気軽に動けなくなったが、まぁこれはこれで楽しい人生だ、嫁や子供が安心できる世界にする為に……まずは連合各国から雑草を抜く仕事をしないとな……。
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