続人間国
第118話 隠れ里1
目が覚めるとそこは……青い空で白い雲……赤ん坊転生では無いか。
周囲を見るとここは、チッ、前世の名無しの女の子の時の記憶に近い畑の構成だ、となるとここは人間国の何処かの可能性が高いな。
まずは財布からパンツを……お、近くに服が落ちてる、しかも畳んだ状態で。
……これ絶対この不思議な転生関係の品だよな……。
そう何度も何度も服やら荷物が落ちててたまるかって話だもんな。
まぁありがたく着ていく、服を着る時に自分をチェックしてみたが、茶色くて短めの髪、ちょっと張りの無い肌、獣人族にありがちな毛も生えて無いし、そして下半身を見ると、パオーン。
人間男性の中年くらいかな? 鏡か何かが無いと判らんが子供では無いし、かといって年寄りって程でも無さげ。
さて、前世の女の子の知識を読むと、人間国は海沿いにあり、その北側に隣接する様にオーク帝国がある、そして勉強の場では愚かな獣人共から距離を置く為になんて教師は言っていたが……。
人間国の国民は皆、人族が裏切りをして連合国を脱退したあげくにオーク帝国の属国として様々な支援をしている事を知っているので、獣人国に逃げても酷い目に合うと思っている。
……まぁ実際にそうなるのかもだけど……前世からの様々な知識を元に考えると、ほんの少しだけ希望がある。
連合各国は人間国やオーク帝国の内情をすごく知りたがっている。
そして今の俺はその知識を多少なりと持っている、ならば……話の通じる理性的な連合国の誰かに出会えればワンチャン亡命出来るんじゃないかなーって。
あ、やべ。
遠くにいる人間の兵士に姿を見られた。
あいつら邪神を信仰しているから、能力持ちがいるはずだ、ただこんな場末の兵士だと戦闘系の奴は居ないかもだが……。
「おいそこの見かけない男! 両手をあげてそこに跪け!」
「余計な動きをしたら攻撃するぞ!」
槍を持った二人の兵士が近寄って来るが……大人しくしたらしたで殺しに来るくせによ。
前世の女の子の知識の中には、人の国の中にレジスタンスというか、権力者が掌握出来ていない民の集団が居て、常にそいつらを警戒しているのを知っている。
なのでここで捕まると拷問からの処刑コースに一直線だ。
って、今気づいたけど……また俺の祝福が消えて……いや、減っている?
戦闘系がまだ残ってるから良かったけど、もうなんなんだよこれ……。
「おい動くなよ」
兵士の一人がさらに近寄って来たので……一気に近づいて戦闘を始める。
……。
……。
――
持ってて良かった〈魔拳術〉だ、武器が無くても戦えるのはまじありがたい。
この人間国って今は貨幣制度が成り立っていないらしいから、何も奪えなかった。
この荘園の名前は聞いたが具体的な場所がまだ良く判らん、まずは兵士の詰め所あたりから食料と物資を奪って逃げだすか。
……。
……。
――
荘園から結構離れた俺は西を目指す。
大陸の位置的には南東方面ににオーク帝国と人間国があったはずだ、そして大陸の東側に獣人国との間に山が南北を分けるかのように東西に伸びていて、その中の低めの山の麓あたりで獣人国とオーク帝国との戦いが起きている。
そして南西はものすごく大きな草原があってケンタウロス族が、そしてその南の海ではマーメイド族がオーク帝国と戦っているはずだ、まぁオーク帝国は海にあまり興味がないから実際はケンタウロス族が草原の広さを利用した機動を生かした攻撃でオーク帝国を封殺していたはずだ。
オーク帝国は獣人国への攻勢に力を入れているので西は小競り合い程度だと聞いた。
ならば西から北上すれば逃げる事が出来るのでは? そして草原の北にある峻厳な山々をぐるっと大回りで西側から北に周り込んでいけば……ってかすっごい距離の移動になるなぁ……。
オーク帝国もまともな道を整備して居ないそっち方面にまで手を出してくる暇なんてねーっぽいし、北西に逃げるのが正解かねぇ?
それにそっちの山をグルっと回った地点には、俺の知識にあるあの人が居るから、話を聞いてくれそうなんだが……どうだろな……。
まぁ行ってみるか。
……。
そうして街道を外れて森の中を西に向けて何日もかけて歩いていると……。
「そこの男、止まれ! 動いたり武器を出したりすれば攻撃する」
林の中で武装集団に囲まれてしまった。
むむ、20人以上居る中の幾人かが戦闘系能力持ちだなこれ……てことは邪神崇拝をしている人間国の兵士か?
「国の犬っぽくは無いなお前……なぜこんな所を隠れて移動している?」
武装集団の中の一人が俺に問いかけて来る、木々に隠れて姿はよく見えないけどな、たぶん声からして男。
んーでも言動が人間国の兵士っぽくないか? てことは……。
「人間国の外へ逃げる為に移動している、見逃してくれないか? 俺はあんな国から一刻も早く離れたいんだ」
なので本音を隠さずに晒す事にした、こいつらはたぶん。
「お前は私達レジスタンスの隠れ里に近づきすぎた、なんらかの情報を漏らされても困るからな、大人しく連行されるなら良し、それを断るのなら……」
俺は最後まで言わせずに両手をシュタッっと上にあげて降伏を宣言する。
「あ、はい大人しく指示に従いますので命ばかりはお許しを」
「……そいつを縛り上げて連れてきて、私は一足先に長の元へ報告に行くから、何人かで周囲の探索もお願い……まぁ国の兵士とも思えないけど……」
先程までとは違う女性の声での指示が林の中に響き、俺は近づいてきた武装した男に両手を背中の後ろで縛られる。
特に乱暴はされなかった……人間国の兵士と違い過ぎて泣きそうになるね、人間国の兵士は盗賊や山賊って名乗った方がいいレベルだからな。
……。
……
しばらく歩かされた後に辿り着いたのは、山の奥深くにある隠れ里というべき場所であった、四方を山に囲まれ、たどりつくのも辛い道のり……まぁ俺が案内された道がわざとそういう道だった可能性はあるけど。
わざと木々をあまり減らさない様にしているのだろう、林の中に村があるという感じだ、これなら山の上からも視認し辛いだろうなぁ。
そしてよく見ると炊事の煙とかが残された木々の枝葉に当たって煙が散らされている……なるほど木々を一杯残しているのはそういう目的もあるのか。
まぁでもおかげで先を見通せないので隠れ里の規模がちょっと判らない感じ。
色々と確認はしているけども、頭を振ってキョロキョロと見ているとあれなので、視線は前に固定したままで、まっすぐ案内されている方だけを見ています。
そして小さな小屋に放り込まれて扉を閉められた。
ドカッっと扉の外で地面に何人かが座る音が聞こえてくるので、見張りなのだろう。
完全な暗黒ではなく、所々の隙間から光が射しているここは薪小屋かぁ……手を縛られたままなので何も出来ずに……縛られた腕を尻から足の下に通して体の前に持って来る、両手を後ろ縛りのままにするのは辛いねん。
そのまま床に座り、壁を背にする……扉の前に気配が二つ……いや三つか、一切雑談が聞こえてこない。
レジスタンスってこんなに練度が高い物かねぇ?
まぁ気を張ってもしょうがないし寝ておくか、おやすみなさい。
……。
……。
「起きて」
「ねぇ!」
「起きてってば!」
ポカッ。
いった!
頭を何かで叩かれた痛みで俺は目を覚ます、開けられた小屋の扉から射す光に照らされて見えたのはガタイの良い武装をした男と、同じく剣を持っている女性……てかその動きは剣の鞘で俺の事を叩いたな。
扉の外にも何人もの兵士が居るのが見える。
「おはようございます」
体を起こして女性に挨拶をする、兵士たちの視線の動きやら立ち位置からして、この人がここで一番偉そうに感じるからね。
「長がお会いになるそうよ、そのままついて来て、ていうかよく寝ていられるわよね貴方……」
小屋の外に出ながらその女性を良く見ると結構若い事が判る。
10代半ばか? 15? 14? ってくらいに思える。
長く茶色の髪をポニーテールにしている女の子だった。
しばらく歩いた先にある、周囲よりほんの少しだけ大きい家が長の家らしい。
でかい家にして権威を見せつけるよりも、家が木々に隠れる事を優先しているって事か。
……。
手は未だに縛られたままだが無体な真似はされていない。
邪神崇拝している国の兵士にも見習って欲しいものだ。
さて、レジスタンスと思われる集団の長ってのはどんな人なのかな、あ、やべ、トイレ行きたくなってきた。
……。
……。
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