僕はただ普通に生きたかっただけなんだ

むくろぼーん

第1話僕は

「ぼくはただみんなのように普通に生きたかっただけなんだ」




自分の容姿が優れていないことはうすうすと理解していた。それに体質的に体臭が他の人よりもきついという。そんなぼくは、小学校、中学校、高校と成長するにつれて自然と一人になることが増えていった。


幼稚園からの流れを汲んだ小学校のときは、みんな良くも悪くも一つまとまりのように、ぼくの容姿の悪さも気にせずに接してくれる人が多かった。けれど、中学校に入ると他校からの入学生が多くなる。するとぼくという異物に気付いたのだろう。肩を叩き合った友人たちから次第に遠ざけられるようになった。思春期だったんだ。あの人がカッコいい。あの子がかわいい。何時のころからか容姿に点数がつくようになった。そうなれば、誰だってカッコよく魅せたいし、かわいく魅せいたと容姿に気を配るようになる。


そしてそれは、変わることのない体質的な醜さをもったぼくに残酷な現実の一端をも見せ始めた時期でもあった。



「重そうだね。ぼくも手伝うよ」


いくつかの荷物を抱えて大変そうに歩いている同学年の女子生徒がいたから手伝おうとおもった。


「えっ、ありがとう。じゃあこれ持ってくれる?」


そうして、無事に目的地まで荷物を運ぶのを手伝った。


「ありがとう」

「いいよ」


笑顔で軽く手を振る彼女がいた。


どこかで、困っている誰かを当たり前のように手伝っただけの光景。おかしなところなんてない。ただ、ぼくだっただけだ。


後日、代り映えはしない日常のお昼休みの終わりごろ。

ぼくは授業の前にトイレへと廊下を歩いた。女は三人寄れば姦しいとは言うが、男子トイレで用をたしていたときに聞こえたんだ。


「ねぇこの前『あれ』と仲良く歩いてなかった」

「『あれ』と?いやいやそんなわけないじゃん。荷物を持ってくれるっていうから手伝ってもらってただけだよ」

「ほんとにぃ?ねぇねぇ、実際どうなの噂だと、さ。ほら」


きっと彼女たちに悪気はないのだろう。けれど、ぼくにとっては………


「噂程じゃないけど、うん、噂通りツンとした臭い匂いだった」

「うわ、ウケるーッ」

「でも体質でしょう?しょうがなくない?」

「でもさー、例えばだよ。彼氏だったらどうよ?」

「えー嫌っ。絶対に嫌。イケメンでもギリだし。『あれ』だったらまずないわ」


騒がしく話しながら出てきた彼女たちとぼくが用を足してトイレが出るのが同時だったのが、さっきの『あれ』の答えをぼくに教えてくれた。


「「「あっ!」」」


驚く声をあげた彼女たちのよそよそしさに察しがつかないほど鈍感だったなら、よかったのに。


「あっ、っとうん………。授業始まっちゃうし、行こっか」


そう言葉をくちにして、連れだって歩き出した彼女たち。声の主は、ぼくが荷物を運ぶのを手伝った彼女だった。








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