観覧車から地球を見てみよう……
ミカヅキハイランドか誇る大観覧車、ティアムーン・ホイール。迷子の少女、楠木愛日のおねだりでティアムーン・ホイールに乗ることになった葉月涼太と上里春風。三人を載せたゴンドラはゆっくりと動き出し始めた。
「葉月さん! 実は私、観覧車に乗るの初めてなんですよ!父親が高所恐怖症なものでしてね」
春風は父親に関する情報を明かした。
「そうなのですか……観覧車に乗ったことのない人はいるものなのですね」
涼太は半ば他人事のように話した。
「観覧車の景色が楽しみっ!」
愛日はとても楽しそうだ。
観覧車のスピーカーからは楽しそうな音楽を背景にナレーションが流れてきた。ティアムーン・ホイールの景色の見どころを解説するのだろう。
「まったく観光地相応の観覧車ですね」
涼太は観覧車から見えるミカヅキハイランドの景色を眺めていた。どこにでもある遊園地の一般的な風景だと思った。愛日と春風は景色を見てはしゃいでいた。
「こうしてみると上里さんは子供と変わりませんね」
「そんなことはないよ!」
「聞こえていたのですね!」
やはり大禍社の一員、地獄耳だと思った。
「いや、こんな狭い空間なら聞こえますよーっ!」
春風の抗議がゴンドラに響き渡った。
◆◆◆◆◆
一方、ミカヅキハイランドの片隅にあるキャラクターショーコーナーではクマの着ぐるみが可愛いダンスを踊っている光景を死んだ目で見つめる男が二人いた。
「ウィルソンの旦那……どうしてこんなところで取引現場なんスか……大の大人がクマの着ぐるみショーを鑑賞するなんてすごい恥ずかしいですよ」
「何も言うなボブ……組織の指定した取引場所がここなんだ……恥ずかしくてもここで待つしかないだろ……常識的に考えて」
ボブとウィルソンはいたたまれなさを感じながらクマの着ぐるみショーを見ながら待ち人が現われるのを待った。
数分後、ボブとウィルソンの隣に白衣をした男が座ってきた。
「ウィルソンくん、久しぶりじゃな……ワシじゃ、信濃橋博士じゃ」
「信濃橋博士……ようやくのお出ましですか。早く取引をしましょう」
「そうじゃな……このワシが新開発したバイオ生物はすごいぞい。電気を吸収してエネルギーに変える強力なバイオスライムじゃ。こいつは強力な生物兵器として戦場で猛威を奮うぞい」
信濃橋博士は狂気に満ちた瞳で自ら開発したバイオスライムを説明した。ボブとウィルソンはその言葉を右から左へと受け流した。
「説明はいいから早くそいつをよこせ」
「わかったわかった」
そう言って信濃橋博士は新型のバイオスライムの入ったスーツケースをウィルソンに渡した。
受け取ったウィルソンは長居は無用とキャラクターショー会場から抜け出そうとするが着ぐるみショーを見ていた疲れからか何度もないところに転んでしまった。ころんだ表紙にスーツケースのロックが外れてしまいバイオスライムがまろびでる!
「ウィルソンくん! 何をしているのじゃ!」
信濃橋博士は思わずウィルソンを叱責したが、既に手遅れだった。スライムはスピーカーのついた塔に取り憑くと電気を吸収し始めたのだ!
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