緋月と柚
ブシドーレッドとブシドーブルーと、骸骨武者とクローン妖魔足軽の激闘は続いていた。クローン妖魔足軽はだいぶ減ったがまだまだ健在で数の暴力で骸骨武者をサポートしていた!
「水龍逆鱗斬!」
ブシドーブルーの水の力のこもった斬撃がクローン妖魔足軽を一気に押し流していった。ブシドーブルーは、クローン妖魔足軽の処理に専念していた。
「ブシドーレッド……いい太刀筋だ。よく鍛錬していると見た」
「まぁ、これでも琴城常陸の息子なんでね……日々鍛錬しないと父上を越えられないんでね」
一方、ブシドーレッドと骸骨武者は激しい鍔迫り合いをしていた。実力は伯仲しているようだ。
「激しくやりあっているようですね」
戦場から少し離れたところでブシドーグリーンは骸骨武者とブシドーレッドの闘いをどこか他人事な雰囲気で見物していた。
「ブシドーグリーン、どのタイミングで介入しますか〜?」
香炉公主はのんびりとした口調で介入タイミングについてブシドーグリーンに尋ねてみた。
「ブシドーレッドが不利になってきたタイミングでいいでしょう」
「完全に見物気分だね」
上里春風は苦笑いしながら激闘の様子を見守っていた。しかし、現状では骸骨武者とブシドーレッドの激闘の様子を見守るしかないのは事実だった。介入の余地はない。
「秘技! カトンフレイム!」
骸骨武者が不意打ち気味に口から火炎放射を放った! ブシドーレッドは慌ててバックステップをして火炎放射を回避した!
「くっ、同じ剣士なら正々堂々と戦え! 飛び道具とは卑劣だぞ!」
「勝利のためなら何でもする……これが俺が学んだ武士道だ」
「ぐぬぬ、炎龍乱舞斬!」
ブシドーレッドはお返しとばかりに刀から炎龍のオーラを纏わせ破壊光線を刀身から放ち骸骨武者目掛けて薙ぎ払った!
骸骨武者は軽やかに跳躍し破壊光線を回避したが、反応が遅れたクローン妖魔足軽は破壊光線に焼かれて消滅した!
「……回避されたか」
ブシドーレッドは歯噛みした!
「今がチャンス!」
そこに不意打ち気味にブシドーブルーが骸骨武者の死角から上段斬りを仕掛けた!
「ん?」
しかし武人特有の直感でブシドーブルーの上段斬りをなんなく回避!逆に骸骨武者の当て身を食らってのけぞってしまう!
「柚!」
思わず叫ぶブシドーレッド!
「どうしたブシドーレッド……仲間がやられたことに動揺したのか?」
ブシドーレッドの脳裏には過去の記憶が次々とフラッシュバックしていく!
◆◆◆◆◆
幼き日の記憶だ。ある雨の日のことである。琴城常陸は一人の緋月と同じ年頃だと懐われる少女を連れ立って緋月のもとにやってきた。
「緋月よ、今日からお前の従者としてこの娘が仕えることになった。柚、緋月に自己紹介しろ」
その少女は人見知りがちなのかおどおどした態度で緋月の前に現れた。
「……水無瀬、柚です。緋月さま、これからよろしくおねがいします。」
「……緋月でいいよ。様付けされるとなんかくすぐったい感じになるから」
これが緋月と柚の処対面だった。
二人はたどたどしい交流をゆっくり重ねていったが転機が訪れたのは緋月が中学生に進学した頃だった。
緋月は琴城家当主を継承するため京都の山奥にある琴城家の本邸に来ていた。
薄暗い深夜の道場で緋月と自律木人は相対した。
「只今より、琴城家当主継承の儀を行う……この自立木人に一本を取れ」
立会人を務める琴城家の老婆が厳格な声で告げた。その様子を静かに見守る柚だった。
「……ゴクリ」
緋月は思わず息を飲んだ。この儀式を終えれば晴れて琴城家の当主として生きていくことになる。そしてチラリと柚を見た。本来なら琴城家以外の人間は継承の儀式には立ち会え無いが柚が継承の儀式に立ち会いたいた珍しくわがままを言い、無理を言って立ち会うことになった。緋月は柚のためにも自律木人に一本を取るという強い思いがあった。
「勝負、始め!」
立会人の老婆の掛け声とともに緋月と自律木人の激しい戦闘が始まった!
「ひーちゃん、凄い真剣な表情……」
柚は緋月と自律木人の激しい剣の打ち合いに目を丸くしていた。
「琴城家は退魔の血族よ……生半可な腕では琴城家の当主など務まらんわ」
立会人の老婆は不敵に微笑んだ。
緋月と自律木人は一進一退の打ち合いを繰り返してきたが、ついに緋月が自律木人の一瞬の隙をついて自律木人に鋭い斬撃を食らわせた!自律木人は斬撃の衝撃で尻餅をついた!
「勝負あり……琴城緋月、今日からお主が琴城家の当主だ」
厳かな口調で立会人の老婆が緋月を讃えた。その声を聞いた緋月は静かに涙を流した。思わず柚は緋月に駆け寄り抱きついた。
「ひーちゃん! 琴城家当主就任おめでとう!」
柚は思いっきり声を張り上げ琴城家当主就任を祝った。
(柚の身体……なんて華奢なんだろう。琴城家当主として柚を守ってあげないと)
緋月は密かに柚を守ることを心のなかで誓った。
このようにして緋月は琴城家当主についたあとも剣の道に邁進するようになったのだ。
◆◆◆◆◆
ブシドーレッドは拳をブルブルと震わせた!
「よくも柚を……許さない!」
次の瞬間、ブシドーレッドは身体中に闘気を煙のように放出しながら骸骨武者に襲いかかった!
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