ブシドージャー、愛のために
深夜のキャンプ場の一画で琴城緋月と水無瀬柚の二人は骸骨武者と対峙していた!
「お前が琴城緋月……いや、ブシドーレッドか。オヌシの父とはずっと前から一度手合わせしたいと思っていた」
骸骨武者は静かに激しい闘志を燃やしていた。緋月は思わず息を呑んだ。
――なんて強い闘気だ。この妖魔、間違いなく強い!
「柚、急いでコテージに戻ってみんなを呼んできて」
緋月は柚に仲間を呼ぶことを指示した。しかし、二人の周囲はクローン妖魔足軽に包囲されつつあった。
「……クローン妖魔足軽がこんなに大量に配置されているから無傷でコテージまで戻るのは至難の業だと思うの……だったらひーちゃんと一緒に戦うよ!」
「ほう……オヌシもブシドージャーとしての気概を持っているようだな……かかってこい!」
骸骨武者は二人に向けて挑発した!
「柚、来るよ」
「うん!」
二人は意を決したようにブシドージャーへの変身アイテムであるブシドーチェンジャーを構えた!
「「ブシドーチェンジ!」」
そして二人は光に包まれた!
◆◆◆◆◆
一方そのころ、ブシドージャーの残りのメンバーが待機しているコテージ内は異変が起きていた。
ブシドーイエローこと秋山一浩とブシドーピンクこと鳳来寺夏姫、ブシドーグリーンこと葉月涼太が眠りこけていたのだ。
なぜ眠りこけているのだろうか?その原因となる妖魔は静かにたたずんでいた。
妖魔、香炉公主。気の遠くなるような長い年月を経た香炉が妖魔と変じた彼女の目的はできるだけ長くブシドージャーのメンバーの合流を遅らせることであった。
「たまには春風ちゃんのセンパイらしいことしなくちゃね」
香炉公主は気の抜けたようなのんきな声で二階にある上里春風の部屋に軽い足取りで向かった。事前に見つけたコテージの見取り図で春風の部屋は把握済みなので迷いなく春風の部屋にノックした。数秒後、おずおずと扉の鍵が開き上里春風が手招きした。
「春風ちゃん、久しぶり~潜入生活楽しんでる?」
香炉公主は可愛い後輩との再会を喜び春風をハグした!
「香炉公主先輩、やめてください!妖魔の力で抱きしめられたら全身骨折してしまいます!」
上里春風は香炉公主のハグに悲鳴を上げた。香炉公主は慌ててハグを中止した。
「香炉先輩、忙しい中、私のわがままに付き合ってくれてありがとうございます」
「可愛い後輩の頼みだもの……何でも言うことを聞いちゃうよ~」
香炉公主はのんきな調子で春風に笑顔を見せた。春風もつられて笑顔になった。
「ところで、ブシドージャーのアジトの潜入生活で困っていることはある~。先輩がなんでもアドバイスしちゃうよ~」
「困っていることですか……」
困っていること……春風の脳裏には葉月涼太のことが浮かんだ。
「……いや、実はブシドーグリーンに自分は半妖だと告白されて母親探しを手伝ってくれと言われまして、どうすればいいのか困っているんですよ」
とりあえず春風は涼太のことをありのままに話した。
「ん~、個人的な問題に土足に踏み入るのは勇気ある行為だけど……春風ちゃんはどうしたいの~?」
「正直どうずればいいのかわたしはわからないんです……ブシドーグリーンの母親探しを手伝いたい気持ちと大禍社の一員としてヒーローと協力するのはよくないのではという生餅がせめぎ合っているんです」
春風の迷いに香炉公主は穏やかな笑みを見せた。
「……後ろめたい気持ちがあったらヴィラン失格よ〜。反省はしても後悔はしない。迷ったときは自分の感情に従う。それがヴィランの生き方なんだから〜」
香炉公主の言葉にハッとした!
「そうか……そんなことにわたしはなぜ気づかなかったんだろう。香炉先輩、わたし目が覚めました!」
春風は香炉公主の手を握った!
「上里さん、僕の母親探しを手伝う気になったんですね」
春風と香炉公主は声のする方向を向いた。そこにはブシドーグリーン、葉月涼太の姿があった。
「あ、あなたはブシドーグリーン! 香炉先輩の眠りの香で眠っていたはずでは!」
突然のブシドーグリーンの登場に驚きを隠せない上里春風!
「種明かしをすると眠りの香を嗅ぐときに密かにスパイスを口に含んで眠気を覚ませたのです」
「そんな古典的な方法で眠りの香から逃れたなんて!」
春風は驚愕した!
「さて、上里さん、香炉公主……緋月くんたちの様子を見に行きましょうか」
ブシドーグリーンと香炉公主、そして上里春風は急いでコテージを脱出した。
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