一生のお願いです、私をお嫁さんにしてください!と転校生の美少女に求婚はされたんだが
一本橋
第1話 求婚は突然に
イヤホンを片耳に掛け、ある配信者の曲を流して優雅に窓から外を眺める
その横顔は女性にも見えるほど、顔立ちが整っている。
このクラスの担任である
それにともない、俺はイヤホンを外してポケットにしまう。
「今日からクラスに新しい仲間が増えることとなりました。どうぞ、入ってきてください」
すると、教室のドアが開き、藍色のポニーテールを靡かせ、可憐な少女が黒板の前へと立つ。
大きな瞳に長いまつ毛、小顔でありスラッとした体型。
その美貌に、クラスの殆どの者が心を奪われた。
「今日から転校することとなりました。
小波は自己紹介を済ませると、丁寧にお辞儀をする。
「じゃあ、あそこの席が空いてるので、そこに座ってください」
そう美奈子先生は、前から三番目の廊下側の席を差す。
楓は自分の席へと移動するのだが、その際に余所見をしている章人をチラッと見た。
休み時間になると、小波はあっという間にクラスメイトに囲まれてしまい、質問責めに合っている。
小波を見ていると、前の席に座っている友人の
「もしかして惚れたか? まあ、分からなくもないぞ。あんな美人さん、探してもそういないと思うからな」
正司は普段からナンパ癖がある、典型的なダメ男だ。
「お前と一緒にするな」
俺は呆れて正司を見る。
「おいおい、そんな釣れないこというなよ。俺とお前の仲だろ?」
「どの口が言ってんだか。この前なんて、俺を騙して合コンに連れてった癖に」
合コンというのには少し大袈裟なのかもしれないが、他校の女子とカラオケをしたのだから、実質同じような物だろう。
すると、遠くでガタッと音がなる。
俺が音のした方を見ると、小波が口を開けて青ざめていた。
「ん? どうかしたの?」
「い、いや、何でもないです」
クラスメイトに気に掛けられ、小波はニコッと笑って誤魔化した。
正司は再びこちらへ体を向けると、話の続きを始めた。
「そりゃあ、大事な親友が彼女が欲しいって悩んでるから手助けしてやったんだぞ?」
「余計なお世話だっての」
俺は手に顔をのせて寄りかかると、窓の外に目をやった。
放課後となり、皆が帰りの支度を始めるなか、クラスメイトの体育会系である
「ねえ、楓。今からカラオケとか寄ってかない?」
「俺らも行くわ」
この瞬間を待ってましたと体育会系の男子グループがこぞって群がる。
楓は章人の様子を一度、伺ってから答える。
「すみません。今日は用事があるのでちょっと」
「そっか……。なら、また今度誘うね」
そう残念そうにする叶香だったが、楓のあからさまな反応にむむむ?と女の勘を働かせていた。
「それじゃあ、数合わせに誰か誘おうかな……っと。章人、正司。今からカラオケ行くんだけど来ない?」
叶香の言葉に楓は耳をピクッと立てる。
その反応を見て叶香は、はは~んと確信付く。
カラオケと聞いて、俺はこの前のトラウマが甦る。
俺の歌声が好評で、女子達から拷問のように何度もアンコールされた末、喉は荒れ果てしまうといった記憶だ。
今でも思い出すだけで胃もたれする。
そんなこともあり、冗談じゃないと顔を歪ませて速攻で断る。
「いや、俺はいい」
「あー、悪い。本当なら行きたい所なんだけど、俺たち用事があってね」
正司は俺の肩に腕を回して、もう片方の手ですまん、とやった。
「そっか~、残念。じゃ、数が合わなかった事だし、今日のカラオケは無しで」
そう叶香が言うと、カラオケに行く気満々だったメンツが「えぇ~」と、声を溢した。
そういえばこいつ、さっき“俺たち”って言ってなかったか?
俺は何となく嫌な予感を感じ、正司に問いかける。
「おい、俺には用事なんてないぞ」
「そりゃあ、言ってないからな。だって、言ったら断るだろ?」
「当たり前だろ。で、その用事ってのは何なんだ?」
「それは……」
正司が言い掛けると、廊下から小柄な少女が容姿に見合わぬ大声で正司を呼ぶ。
「おーい、正司ぃ。グダグタしてないでさっさと来いよ」
彼女は
男顔負けな性格で、負けず嫌いな乙女である。
親友の幼馴染みということもあり、俺とは面識がある。
「悠里じゃないか。なんでまた」
すると、悠里の後ろに別のクラスの女子の姿があり、俺に向かって愛想よく手を振る。
嫌な予感が的中したと俺は確信し、正司を見る。
「まさか、お前また!」
「安心しろ、カラオケじゃない。今回はスタハでお茶をするだけだ」
俺を気遣ってか、カラオケではなくカフェを選んだのだろうが、合コンであるのには間違いない。
俺は思わず、呆れてため息をつく。
「‥‥ったく、よく懲りないな。悪いが、俺抜きでやってくれ」
「おい、待てって」
鞄を肩に背負い、呼び止める正司を無視して教室を出る。
章人が一人になった所で、楓が勇気を振り絞って呼び止める。
「あのっ! 章人君っ!」
章人は足を止めて振り向いた。
屋上に来て欲しい。
そう言われ、俺は小波と共に屋上に来ていた。
空は夕焼けになり、風は微かに吹いている。
「なんだ、話って」
そう俺が訪ねると、小波は大きく深呼吸して声を振り絞って想いを伝える。
「一生のお願いです、私をお嫁さんにしてください!」
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