センテイシャ

いぬまる

変わりつつある日常

第1話 何時かの惨劇と覚醒の自覚

 石で出来た広い部屋、その場には1人の動く人物と多数の動かない死体が存在した。


「・・・」


 その場で唯一動いているその人物・・・遠山俊は、ゆるゆるとした動きで当たりを見回した後、自分の両手をジッと見つめた。


「ハハッ・・・何だこれ・・・」


 俊は起こった事がいまだに信じられないといった表情をしてそのまま立ちつくしていたが・・・


「あ・・・あぁ・・・あはは・・・」


 少しづつ・・・少しづつ・・・現実が頭に染み込み始め、漸くその場で起こった事を正しく認識し始めた。


「あはっ・・・あはははっ・・・なんだよ・・・なんなんだよ・・・」


 しかし認識したからといって認めたくない事実だった。


 なので俊は言い訳の様な事を口にしだした。


「お・・・俺は・・・違う。だって・・・あんなの・・・仕方ない・・・仕方ないだろ・・・なぁ・・・」


 俊は誰ともなく問いかける。・・・その問いに応えるモノはこの場に居ないというのに。


「違う・・・違うんだ・・・俺だって・・・あんな・・・うっ・・・おえぇぇええ・・・」


 そして言い訳を続けている内に色々な事を思い出したのか、俊はその場で嘔吐し始めてしまう。

 やがて胃液まで出始めたところで漸く嘔吐は治まったのだが、そのまま俊は床に倒れ伏してしまった。

 そうして倒れた時、動かなくなった知り合いの顔を見てしまった。


 「・・・八島さん・・・ごめん・・・」


 俊は自分に優しかった八島奈央へと謝罪をした。


 「ごめんなさい・・・俺のせいで・・・」


 謝罪をしてどうにかなる訳ではないのだが、俊は延々と謝罪の言葉を口にする。グチャグチャの感情と思考では、兎に角そうする以外出来なかったのだ。


 やがて感情と思考に負荷がかかり過ぎたのか、俊の意識は朦朧とし出してきた。


 「あぁ・・・どうしてこんな事に・・・俺は・・・俺はただ・・・」


 俊は朦朧として来た意識の中、始まりの日にも聞いた声を再び聞いた気がした。



『かくせいおめでとうございます。せんていするものよ』


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