第2話-4
【2189年 10月14日 午前9時32分】
【クローバーの3医療部研究室Ⅲ】
よって、草金千穂の一日は多忙を極めている。朝は6時半に起床。一時間で、メイク、ヘアセット、服選び、朝食、朝の星座占いを見ることなどを済ませ、8時にはクロ3名古屋本部に到着する。そこから昼の休憩のうな丼以外、口にするものは全て「コア」関連の話題である。19時半には帰宅、ハイボールを片手に人工鶏を頬張り、3缶も開ければもうそこから先は千穂の記憶はない。
__のだが、ここ最近の重大事件の影響でお好みの人工鶏もハイボールも喉を通っていない。というよりは千穂自体は食欲を持ち合わせているのだが、喉に通せていない。今日も千穂は「トリエルミン前殺人事件」と書かれたファイルの半ばあたりを開き、はぁーっと溜息を吐く。
「トリエルミン前殺人事件」。2189年の日本国には知らぬ者はいないほどの衝撃的な事件だ。人間ではない何者かが23歳の河原木ゆいさんの右腕をかみちぎり、失血死させた事件。今、千穂は「人間ではない何者か」の死体の解剖を同僚の
「飲み会またしたいなー」
千穂がぽつりと言葉をこぼす。そして画面にまた向き直る。それが彼女の日常であった。そしてそんな彼女の日常こそが日本国人口5000万人の健康の安心を引き受けている。しかし、今回のように未確認生物の被害者の司法解剖は初めてだ。ということもあってか、千穂はこの案件に慎重に取り掛かり、ここのところ、正確に言えば48時間一切寝ずに司法解剖を進めていた。
「何のためにあなたたちが大量のコアを持っていると思ってるの!!」
ここ数日この言葉が頭によぎって離れない。
「あなたの心を救うためですよ、お母さん。」
そう呟くと千穂は自らの思いを託すように報告書に「検証終了」の文字を刻んだ。
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