テキル星(3)ティアと繋がった日
「こ、これは・・・」
とイクスが目を輝かせて目の前に並べられた料理の数々を見回していた。
俺達は王城の中に3つの部屋を用意してもらい、それぞれの部屋にキャリートレーを運び込んだ後、メイド達の案内で朝食会場まで来ていた。
そこはパーティ会場の様な大きな部屋で、部屋の中央には長さ20メートルはありそうな大きなテーブルが置かれており、その上には「これぞ中世ファンタジー」と言いたくなるような、銀の食器に盛られた料理が「これでもか!」と言わんばかりに並べられていた。
ビュッフェ形式の様にも見えるが、テーブルには俺達用の椅子も準備されていて、それぞれの椅子の隣に、紺色のローブを着たメイド達が控えていた。
なるほど。
メイド達が俺達の代わりに料理を皿に取ってくれるつもりの様だな。
前世でバブル期にテレビでそんなのを見た気がするぜ。
俺はデバイスの無音通話で、
「みんな、気持ちは解るが、
と通達しておいた。
そりゃあ俺だって、こんなご馳走は転生してから初めての事だし、旨そうな料理を前にして興奮してないと言えば嘘になる。
が、ここで欠食孤児みたいな姿を見せてしまうと「神の使い」という立ち位置が揺らぎかねないからな。
ここは、この国の人間が求めている「神の御使い像」を演じておかなければならないだろう。
俺達はメイド達に促されるままに席に着き、テーブルの向かい側にある4つの椅子に着くであろう国王達を待つ事にした。
その間もイクスは料理を見回し、何やらデバイスに記録しているし、ミリカも見た事の無い衣装を着ているこの国の人間の姿を思い出しながらデバイスに記録を続けている様だ。
テーブルのこちら側には7つの席が用意されていて、左から順に、ミリカ、イクス、シーナ、俺、ティア、メルス、ライドが席に着いていた。
少し年配のメイドが、数人のメイドに目配せをして指示を出した様だ。
数人がテーブルの端に置いてあったボトルの方に行き、グラスを用意してボトルの中味を注いでいる。
そして、そのグラスを車輪が付いた手押しワゴンの様なトレーに乗せて、俺達の前に一つずつグラスを配ってくれた。
グラスには、淡いピンク色をしつつ透明度の高い液体が入っており、ほのかに酸味があるフルーツの香りがする。
俺は念のため、グラスを見ながら情報津波を試してみた。
中味はアセロラに似たフルーツを絞った果汁を半年くらい発酵させた液体を、パパイヤの果汁の様なもので薄めた飲み物で、2%程度のアルコールが検出できる。
毒の類は入っていない様だが、なるほど、酒か。
俺達のメンバーで酒を飲んだ事があるのは、俺以外にはイクスとミリカだけだ。
これはイクスの研究の過程で酒が完成した時に、俺が酒の飲み方と、料理への活用法をデバイスで送っておいた為だ。
俺は一人の時にこっそり酒を楽しんでいたが、ティアやシーナがいくら成人していると言っても、まだ飲ませない方がいいだろうと俺は勝手に判断していた。
というのも、酒を飲んだイクスとミリカが酔っぱらって、二日酔いの為に2週間の休暇のうちの1日を無駄にしたというのをイクスから聞いていたからだ。
まあ、イクス達の肉体関係が発展したのも、酒の力があった様ではあるが。
俺は念のため、デバイスで「これは酒だ」という事をデバイスでみんなに通知しておく事にした。
そうしていると、ホールの入り口の扉が開き、国王と王妃、そして10歳前後の男女が二人部屋に入って来た。
子供は恐らく、王子と姫だろう。
「お待たせをして申し訳ありません。御使い様」
と国王は言いながら、テーブルの向かいの席に着いた。
王妃や子供達もメイドに椅子を引かれて席に着いていた。
「息子と娘のご紹介をさせていただきます」
と言って、今席に着いたばかりの王子と姫を立たせて
「息子のソルジュ。そして娘のフィーナです」
と言うと、王子と姫は軽く
国王はちらりと王妃の顔を見て頷き、俺達の方を見て
「
とその場で軽く頭を下げた。
「また、御使い様の旅の準備が整うまでとはいえ、御使い様が王城にお住まい頂ける事を、心より光栄に思っているところで御座います」
すると、王妃やメイド達も深々と頭を下げる。
王子と姫も、キョロキョロと周りを見て、慌てて同じ様に頭を下げた。
「そこで、ささやかでは御座いますが、本日の朝食を召し上がって頂ければと思い、こうして席を設けさせて頂きました」
とテーブルの上を見渡し、
「どれも我が国が誇る最高の食材ばかりをご用意させて頂いております。心行くまでお召し上がり頂ければ、この上無き喜びに御座います」
と言ってまた頭を下げた。
国王が頭を上げるのを待って、俺は席に着いたまま口を開いた。
「国王、そしてその妻、更にここで働く全ての者に、これらの供物を用意してくれた心遣いに感謝する」
と言って両手を広げ、
「旅立つまでの数日となるが、それまで世話になる事への感謝を、ここで先に述べておこう」
と言って、部屋の中を見渡した。
「この国には、グラスを持って乾杯をする慣習はあるか?」
と俺は国王に訊いた。
すると国王は「御座います」と言って、国王達の前にもグラスを用意する様にメイド達に指示をした。
国王と王妃がグラスを手に取り、俺もグラスを手に取った。
俺がデバイスで「俺の真似をしろ」とみんなに通知をすると、みんなもグラスを手にして、俺がするように顔の高さまで持ち上げた。
国王は俺が音頭を取るのを待っている様だった。
「では、この国の繁栄を願って乾杯するとしよう」
と言って、「乾杯!」
と声を上げた。
するとみんなも「乾杯!」と声をそろえた。
そこから食事が始まった。
俺がメイドに「あの料理を」と言うと、メイドが皿に盛りつけてくれる。
ティア達も俺の真似をして、メイドに「ショーエンと同じものを」と言って料理を運ばせていた。
イクスは「アレとコレと、あそこの肉もお願いします」と、色々な料理を盛りつけさせていた。
食事はどれも美味しかった。
料理の方向性としては、フランス料理に近いかも知れない。
フランス料理と言えばバターを大量に使う事で有名だが、これらの料理にもバターを多く使っているものがあって、テキル星では乳牛が存在している事が分かる。
ただ、パンは白パンしか無い様で、インド料理のナンに似ていた。
俺達はクレア星で色々な料理を試してきた事もあって、未知の料理でも旨いかどうかは見た目と香りで大体分かる様になっていた。
ここでも誰も臆する事なく料理に手を付けていて、みんな美味しそうに食べている。
「時に国王よ」
と俺は、腹八分目あたりで手を休めて口を開いた。
国王も手を休めて俺を見る。
「これからの俺達の旅は、この星を平和と
俺がそう言うと、国王はテーブルに置いたハンカチで口元を拭い、
「はい。お話させて頂きます」
と言って話し出した。
国王の話はこんな感じだ。
この星はバティカを含めて13の国があり、純粋な「開拓神の子孫」と呼ばれる王族と貴族が統治しているのが、この国「バティカ」である事。
そして、バティカの貴族がこの星を開拓してゆく中で、現地人を従えて国家として発展させたのが他の12の国なんだそうな。
で、それら12の国の初代国王は純粋なバティカの血筋なんだけど、王妃が必ずしもバティカの血筋とは限らず、これまで子々孫々と歴史が紡がれる中で、今では12の国王の中に、純粋なバティカの血筋は一人も居ないらしい。
全ての国には貴族制度があって、貴族になる条件は「家主がバティカの血筋を受け継いでいる事」なんだそうで、バティカの血が濃ければ濃いほど「高潔」とされて、貴族になりやすいんだそうな。
しかし、バティカ王国は、この星最初の国家であり、最も栄えている国でもあるので、国民が他の国に移住する事はものすごく
なるほど。そりゃそうなるわな。
そこで、5代前のバティカ国王が、他の国々との交易を行う事を始め、主に衣服を作る生地の輸出を始める様になったんだとか。
バティカ商人は当然「純粋なバティカ人」なので、他の国に行くと、必ず王族や貴族から呼び出され、様々な人から結婚やら子作りやらを求められる様になったんだそうな。
ところが、生まれた子が「本物のバティカの血筋」かどうかが証明できないって事で、血縁関係を明確化する方法として「一夫多妻制」の制度を導入して、バティカ商人と、その国の貴族達との間で「バティカとの血縁がある証明」に使われて来たという訳だ。
なるほど。
この星の法で一夫多妻制を認めているのは、そういう経緯があったのか。
「で、そのバティカ商人というのはどれくらいの人数が居るんだ?」
と俺は素朴な疑問を投げかけた。
だって、どんなに絶倫だったとしても、行く先々で子種を求められてちゃたまんないだろう。
ところが、思っても居ない返事が返って来た。
「今、交易を行っているバティカ商人は
はあ? 何で?
「その理由は?」
と俺が訊くと、国王は少しため息をつき、少し言いにくそうな顔をして王子と姫の方をチラリと見た。
ああ、なるほど。
子供に聞かせたくない話なのね。
俺は、食事を終えて退屈そうにしている王子と姫を横目で見ながら王妃の方に顔を向け、
「国王の妻よ、子供達には他にやる事もあるだろう。子供達を連れて、先に席を外すがいいぞ」
と言った。
国王は、ほっとした様に息をつき、王妃が「恐れ入ります」と子供達を連れて部屋を出るのを確かめてから俺の質問に答えた。
「バティカ商人が向かう先々で、貴族達による奪い合いが起きる様になったのです」
と国王は言った。
バティカの血筋を欲しがる他国の貴族達は、自分達の家系を高貴な位置に保ちたいが為に、バティカ商人が来る度に血縁を結ぼうとしてくる訳だが、バティカ商人も数えきれないほどの妻が居るものの、「本当に愛する妻」を作る事が出来ない事を気に病んでいたんだそうな。
なるほどな。
前世で例えるなら、いわゆる「セックスフレンド」は沢山いるけど、本当に好きになった人と結婚できない事が嫌になったって感じかな。
で、バティカ商人の数はそうした背景もあって徐々に減っていき、残った数少ないバティカ商人の奪い合いが起きたという事か。
「さらにその奪い合いは過熱してゆき、とうとうバティカ商人が現地の貴族に殺される事件も起こったのです」
つまり、他の貴族に奪われるくらいなら、いっそ殺してしまえって事か。
家柄の序列を守る為に、これまで人気者だったバティカ人を殺す。
前世で例えるなら、私腹を肥やす利権を守る為なら、他人を不幸にしてもいいし「バレなきゃ殺しても構わない」って考える奴と同じか。
そして100年前、商人を寄こさなくなったバティカ王国に、他国が軍隊を寄こして侵攻して来て、国民を連れ去ろうとしたんだとか。
なるほど。
侵攻の理由はそれか。
しかし、神殿で神に祈りを捧げると、天より龍が舞い降りて、攻めて来た軍隊を一掃したとの事らしい。
「その龍は、どうやって侵攻してきた軍隊を一掃したのだ?」
と俺が訊くと、国王は額の汗を拭いながら続けた。
「我々はそれを、星々の伝承になぞらえて、フレア・ブレスと呼んでおります」
と言った。
なるほど、フレア・ブレスね。
宇宙を駆けるプレデス星人なら、太陽などの恒星が放つフレアの事は詳しいだろう。
バティカ王国もプレデス星人の末裔なのだから、まるでフレアの様なブレスを吐く龍を見て、そう名付けるのも頷ける。
国王が言うには、侵攻してきた軍隊は、一度のブレスで大半の兵士が蒸発して消えてゆき、二度目のブレスで残りの大半を蒸発させて、他は暴れる龍に押しつぶされたりめちゃくちゃにされたとかで、何とか生き残った10人足らずの兵士は必死で逃げて行ったそうだ。
なるほど、その敗走した兵士が自国に「龍神の怒り」として報告して、龍神を祭る神殿やら教会やらがいっきに普及した訳だな。
宇宙船アリア号で見た動画では「プレデスの技術によって一掃した」というような表現だったが、つまりは、龍の様な生き物を「遺伝子改変」で作り出してしまう事自体が「プレデスの技術」という事なのだろう。
だとすると、俺が夢で見たドラゴンもそうなのか?
人間とも会話が出来る、知的生命体であるドラゴン。
そんな怪獣を作り上げる技術が、プレデス星にはあるって事だ。
でも、俺も含めてプレデス星人は、知的ではあるが身体は貧弱だ。
そこまでの技術があるのなら、何故「自分達を強靭に作らなかった」のだろう?
「よく分かった、国王よ。ならば我々は龍神の使いを名乗って旅をしよう。バティカの商人となれば、低俗な貴族の餌食にも成りかねんからな」
と俺は言って話に区切りをつける事にした。
他にも訊きたい事は色々あるけど、旅の準備が終わるまでには時間もあるしな。
俺はみんなも食事を終えたのを確認し、両手を合わせて言った。
「ごちさーさまでした!」
するとティア達も
「ごちそーさまでした!」
と続く。
国王達は、不思議そうに俺達を見ながら
「よ、喜んで頂けて光栄です・・・」
と言うのが精いっぱいの様だった。
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俺達は「王城の中はどこでもご自由にご覧下さい」という国王のお墨付きを貰えたので、旅の準備が整うまでの数日間を、各自の自由時間にした。
ライドとメルスは王城の裏庭で、乗り物の設計と製造を始める様だ。
イクスは厨房の出入りは勿論、食材の収穫や狩猟に付いて行って、現場で色々学んでおきたいそうだ。
ミリカは部屋にありったけの生地を用意させ、様々なデザインの衣服を作る事に専念するらしい。
で、俺はと言うと、ティアとシーナがいつもくっついて来るので、王城を色々見て回ったり、メイド達と雑談したり、騎士や兵士達の訓練を見学したりする事にした。
今日はそんな感じで日が暮れるまで過ごし、
「ご夕食は如何いたしますか?」
と国王に訊かれたが、自室で食べるからと食事を部屋に運び入れてもらう事にして、部屋で過ごす事にした。
「ふう~、満腹だ!」
と俺は、6畳間くらいの大きさがある巨大なベッドに寝転がり、
「我ながら、初日の成果としては上々なんじゃないか?」
と自画自賛していた。
宇宙基地から出発し、小型艇から強制的に落とされた場所がバティカ王城の城壁の外で、それも時間が早朝過ぎて周りには誰も居ないし、街もどこも閉まってるしで「この先どーすんだ」って気分だったけど、インチキ魔術師が現れたおかげで、国王に会えただけでなく王城に住んで旅の支度が出来る事になったんだから、これは相当に運がいい。
そうして俺がベッドに寝転んでいると、ティアとシーナもベッドに上がって俺に腕枕を要望してきた。
ま、結婚したしな。
俺は両腕を左右に伸ばし、ティアとシーナはいつも通りに腕枕でくつろいでいた。
そうしてしばらく経った頃、部屋の扉がノックされ
「お食事はお済みでしょうか?」
というメイドの声が聞こえて来た。
俺は立ち上がって、部屋の扉を開け、
「ああ、この食事もとても旨かった。食器を下げてくれ」
とメイドに言った。
部屋の外にはメイドが10人近く控えていて、3人が食器の片づけの為に部屋に入った。
すると残ったメイドの中から一番年長らしいメイドが歩み寄ってきて頭を下げ、
「湯あみの準備も整って御座います。ご案内致しますので、どうぞこちらへ」
と言った。
おお! 風呂か!
プレデス星に転生して以来、シャワーばかりで湯に浸かった事が無かったが、ここには風呂があるのか!
「おお! それはいいな!」
と俺は、ベッドの上で俺の帰りを待っているティアとシーナにも、
「ティア、シーナ。ここには風呂があるらしい。一緒に行かないか?」
と呼びかけた。
「フロ?」
と二人はキョトンとしているが、あいつらにも風呂の良さは伝えておきたいところだぜ。
シーナはすぐに立ち上がり、
「ショーエンが行くなら当然行くのです」
と風呂が何かは分かっていない様だが来るらしい。ティアは
「わ、私も行く」
と、やはり来るらしい。
俺達はメイドに促されるまま、廊下を歩いて階段を降り、1階の廊下の突き当りにある扉の中に通された。
どうやらそこは脱衣所の様で、ローブの裾をたくし上げて腰のところで紐で縛った格好のメイド達が数人控えていた。
あれ?
男湯とか女湯とかがある訳じゃないの?
と俺は思ったが、まあ仕方が無いか。
そんな常識が無いかも知れない事は考えておくべきだったが、結婚してるし、ま、いっか。
と俺は脱衣カゴらしきものがある棚の方に向かって歩き出した。
ティアとシーナもよく分かっていないまま俺の手を握ってついてくる。
「ティア、シーナ。ここは風呂って言ってな、身体を清めて温かい湯に身体を浸すところだ。気持ちがいいから湯に浸かってみるといい」
と俺は二人に言いながら、二人の手を放してジャケットを脱ごうとした。
すると数人のメイドが駆け寄って来て、俺の脱衣を手伝いだす。
ああ、よくある王室とか貴族とかは自分で服も着れないとかいうアレか。
と心の中で考えながらティアの方を見ると、二人のメイドがティアの服を剥ぎ取っていくところだった。
「え?え?」
と混乱気味のティアが俺の方を見て助けてほしそうにしているが、当の俺が平気な顔でメイド達に脱がされるままに全裸になってゆくのを見て、顔を真っ赤にしながら
「こここ・・・これって・・・」
と訳が分からないまま、立ち尽くしていた。
シーナの方を見ると、こちらも顔を真っ赤にしているが、その目はショーエンの股間にくぎ付けになっていて、言葉も無いままメイド達に全裸にされていくだけだった。
俺達が全裸になると、脱衣所の奥にある浴室の扉をメイドの一人が開けて、顔を伏せている。
服を脱がせてくれたメイドの一人が
「どうぞこちらへ」
と俺達を浴室へと案内し、湯けむりが満ちた浴室へと入って行った。
浴室は広かった。
洗い場らしき設備は無いが、俺達はメイドに促されるまま浴室の壁際に立たされ、数人のメイドが植物の繊維で作ったスポンジの様なもので俺達の身体をゴシゴシと洗ってくれた。
ティアもシーナも緊張で固まっているが、メイドにされるままに身体を洗われている。
俺はメイド達にされるがままになっているティアとシーナの肢体を眺めながら、「綺麗だなぁ・・・」と思った。
もう充分に大人の身体になったティアと、性格は幼いように思えたが、ちゃんと成人して大きくはないが胸もふっくらと成長しているシーナの身体を見ていると、心とは裏腹に下半身に熱いものが
心はともかく、この身体は16歳の青春真っ盛り。 意外と身体は正直なんだな。
などと考えつつ、下半身のジュニアがエレクトしないように頭の中で念仏を唱えていた。
ひと通り身体を洗い終えたのか、メイド達は3人を残して浴室を出て行った。
浴槽は20人くらいは入れそうな大きなもので、深さは40センチくらいのようだ。
メイドに促されるままに最初に俺が湯の中に入り、浴槽の真ん中あたりまで歩いてその場で肩まで湯に浸かる事にした。
ティアとシーナは湯に浸かるとすぐにしゃがみ込んで湯の中に身体を隠し、それでもシーナは顔を赤くしながら、鼻息荒くこちらに近づいてきた。
そんなシーナを見て、ティアも同じ様にこちらに近づいてくる。
俺との距離を1メートル位空けたところで止まり、その場でじっとして俺の顔をまじまじと見つめていた。
「はあ~っ・・・ いい湯だ」
と俺が言いながら目を瞑ると、
「こ、これって、何なの?」
とティアが訊いてきた。
俺は目を開けてティアを見て、
「これが風呂ってやつだ。そんなに固くなってないで、身体の力を抜いて、全身で湯を感じてみな」
と俺が言うと、ティアも観念したのか、ゆっくりと身体の力を抜いて、
「ふうう・・・」
と息を吐いた。
シーナも同じ様に
「ふぃ~・・・」
と言って肩まで湯に浸かり、俺がしていた様に目を瞑った。
「どうだ? 気持ちいいだろ?」
と俺が言うと、ティアは
「う、うん。気持ちいいのは分かるけど、すごく恥ずかしい・・・」
と言った。ティアの顔が真っ赤なのは、お湯のせいではなさそうだな。
シーナの方がこういうところは豪胆らしく、俺の身体に触れるところまで来て
「こうした方がもっと気持ちいいのです・・・」
と、俺の左腕に腕を絡めて来た。
ティアもそれを見て、おずおずと近づいて来たかと思うと、俺の右腕に腕を絡ませて
「ふう・・・」
と息を吐いた。
「はあ~、やっぱ風呂はいいな~」
と俺は前世で行った温泉宿の事を思い出しながら、風呂の有難みを全身で感じていた。
そして、二人の胸の柔らかさと、胸の先にある突起が俺の腕に当たるのを感じながら、またもや迫りくる下半身への衝動を、俺は何とか精神力でねじ伏せていた。
若い身体の制御ってのは、なかなか難しいもんだな。
何だか力が
これが前世の俺の老いた身体じゃあ、いくら頑張っても下半身のモノは風邪を引いたナマコの様にグッタリしてたもんな・・・
そんな事を考えながら、俺は頭の中で100を数えていた。
「よし、身体も温まったし、そろそろ出るか」
と俺が言いながら立ち上がると、ティアとシーナもつられて立ち上がり、露わになった肢体を隠そうと肩を丸めて俺の背中に隠れる様にしていた。
はははっ、恥じらう姿も可愛いね。
と俺は思いながら、浴槽をゆっくりと歩いて湯の外に出た。
それを見た2人のメイドは浴室の出口扉まで案内し、浴室の扉を開けた。
脱衣所にはさっきのメイド達が大きな布を持って待機しており、その布で俺達の身体をマントの様に覆い、身体の水気をぬぐっていった。
自分の裸体が隠れた事で、ティアもシーナも少し安心したようだ。
ま、夫婦生活ってのはこれからも続く訳で、いつかはこうなるんだから、今日こうして一緒に風呂に入れたのは良かったんじゃないのかな?
俺は自分勝手にそんな事を思いながら、メイド達にされるままになっていた。
身体を拭き終えると、ガウンの様な衣服を着せられた。
ほう、この星にも寝間着みたいなものがあるんだな。
メイド達は俺達のガウンの前を重ねて、布で作った紐を腰に巻いて腹の前でギュっと結んでいる。
そして俺達を脱衣所の出口まで案内し、廊下を歩いて自室まで戻って来る事が出来た。
メイド達は俺達が部屋に入ると、
「御用がございましたらお呼び下さい」
とそれだけ言って、扉をゆっくりと閉めたのだった。
------------------
時計を見ると、夜の10時を過ぎたところだった。
風呂から戻った俺達は、ベッドの上に寝転んでいた。
石鹸などを使った訳では無いのに、ティアもシーナもいい匂いがする。
これが女の本来の匂いなのだろう。
俺は、ティアのまだ少し湿った髪を指で
ティアは少しビクっとしたが、ティアも俺の右足に自分の足を絡めて来た。
シーナは目を瞑ったまま、ほんのりと頬を赤らめているが、これは湯に浸かったせいだろう。
そうしてしばらくまったりとした時間を過ごしていると、左腕の方からシーナの寝息が聞こえて来る。
「シーナ、寝ちゃったね」
とティアが言った。
「ああ」と俺は短く応えた。
この時の俺は、いつもの俺では無かったのだと思う。
久々に湯に浸かって身体を温めたせいか、肉体年齢に心が引っ張られていたのかも知れない。
ただ一緒に風呂に入っただけの事なのに、目を瞑るとティアの裸体が浮かび、下半身に血液が集まるのを感じる。
俺の右腕にティアの体温を感じ、それほど大きくは無いが柔らかな胸の膨らみと、その先端の突起が、ガウンの布越しでも感じられる。
ティアの吐く息もいつもより熱い気がして、初めてキスをした時のティアを思い出した。
湿った髪がティアの頬に貼りつき、顔にかかった髪の間から上目使いに俺を見るティアが、これまでに無いほどに艶めいて色っぽく感じた。
俺の左腕では、シーナが小さなイビキを立てだした。
今日は色々あったからな。よほど疲れているんだろう。
俺はシーナを起こさない様に、シーナの頭の下からゆっくりと左腕を抜き、シーナの身体を抱き上げて、ベッドの端に寝かせて布団を肩までかけてやった。
それを見ていたティアは
「シーナ、本当によく眠ってるね」
と言って、俺がベッドの上をティアのところまで戻るのを待っていた。
俺がティアの元まで戻ると、ティアは俺の胸に顔を埋めるように抱き着いてきた。
その反動で、俺の身体は仰向けに倒れる様にベッドに沈む。
「今、私、ショーエンを独り占めしてるんだね・・・」
と言って、ティアは、俺の胸に埋めていた顔を上げ、ベッドに肘をついてよじ登って来る。
そして今俺の顔の上には、ティアの顔があった。
ティアの髪が流れて俺の顔をくすぐる。
ティアの目は少し潤んでいるようにも見える。
ティアはそのまま顔を俺に近づけ、唇を俺の唇に触れさせ、そしてティアの方から舌を絡ませて来た。
「ん・・・!」
とティアの艶めかしい声が聞こえる。
俺は両手をティアの背中に回し、ティアを抱き寄せた。
ああ・・・
今日の俺はどうかしてる。
ティアが愛おしくて堪らないんだ。
長く続くキスをしながら、俺はティアの背中をゆっくりと撫でる。
そして右手でティアの腰までを撫で上げた。
ティアの身体は何度もビクっと跳ねるが、それを俺の左腕が抱きしめて逃がさない。
ティアはそうされながらも俺の舌に吸い付き、自分の舌を絡める事を止めようとはしなかった。
俺の右手はティアの尻を撫で、また背中まで戻るという事を繰り返した。
「ふっんっ・・・!」
と背中を撫でる度に跳ねるティアの身体を更にきつく抱きしめ、
「はあっ」
とティアが唇を離すまで続けた。
はあはあと肩で息をするティアの額には、玉の汗が浮かんでいて、赤く火照った顔は更に艶っぽく美しかった。
俺はティアの身体と入れ替わる様にティアの身体を抱きしめたまま反転し、今度はティアが仰向けになる体勢で俺がティアを見下ろしていた。
「ティア・・・」
と言った俺は、もう一度ティアの唇に吸い付いて舌を絡ませ、口づけをしながら俺は右手でティアのガウンの腰紐を解いていった。
ティアは口づけをされながら、自分が何をされているかは解っていた。
浴室で一度は見せた肢体だったが、今も恥ずかしさでいっぱいだった。
しかし、ショーエンが絡めて来る舌の感触をもっと確かめたいと、本能がそう叫んでいた。
ガウンの腰紐は解かれ、ティアのガウンは左右にはだけた。
ショーエンは口づけをしたまま、ティアの腹部にそっと手を置き、そしてゆっくりと撫でてゆく。
その度にティアの身体が跳ね上がり、自分では止められないその反応に成す術は無かった。
ショーエンの手はティアの胸まで上り、やわらかな双丘をやさしく包み込んでいく。
固く敏感になった丘の頂上を、ショーエンの手の平が撫でる度に、どうしようも無く切ない気持ちが下腹部に走る。
「はぁっ・・・」
と、自分でも聞いた事が無い様な声がティアの口から洩れる。
それが恥ずかしくて堪らないのに、もっとそれを感じていたいと思ってしまう。
やがてショーエンの手はティアの下腹部まで下りてゆき、淡く陰ったクレバスへと飲み込まれていくのを感じ、
「ああ・・・!」
と最後の抵抗をするかの様に、ティアの口から声が洩れる。
いつの間にか離された唇から洩れるティアの声は、艶めいていて、しかし未知への恐怖がこもっていた。
私の身体、どうなってしまったの・・・?
まるで宙に浮いているような感覚でもあり、何かに固く縛り付けられているようでもあった。
ティアの下腹部に伸びたショーエンの手が、淡い陰りに潜む深いクレバスへと沈み込み、熱い泉の湧いたティアの中に、ショーエンの指が入って来る。
頭が痺れて自分を見失いそうになる感覚に、ティアは思わずショーエンの背中を強く抱きしめた。
自分の身体が自分ではないかのように跳ね、両足は電気が走ったようにピンと伸びる。
「ティア・・・ 愛してるぞ・・・」
というショーエンの声が聞こえると、魔法の様に足の力が抜けていく。
ショーエンが少し身体を起こしたかと思うと、ティアの両足を抱え、ティアの身体に覆いかぶさった。
そしてその瞬間、ティアは腰から崩れていきそうな甘い痺れにも似た感覚に襲われ、自分の中にショーエンが入って来るのを感じていた。
自分を強く抱きしめてくれるショーエンの逞しい腕。
熱い息を吐くショーエンの唇。
その全てが愛おしく、ショーエンを抱きしめる手に力が入る。
「んん・・・ はぁ・・・」
ティアから洩れる熱い吐息がショーエンの首筋にかかる。
幾度となく突き上げられるうちに、身体の奥が痺れて宙に浮いているような感覚になる。
やがてその感覚は大きなうねりとなってティアの身体を飲み込んでいく。
まるで大波のように迫りくるその感覚は、どこまでも大きくなって、もう逃れようが無いところまで高まっていく。
そして眼前に迫る大波が、ティアの視界いっぱいに広がって真っ白な
「ああああああ・・・・・・!!」
とティアは、絞り出すような声を上げて、身体が浮き上がるような感覚と共に、大きく身体を跳ね上げた。
身体の中でショーエンの熱い魂がほとばしり、やがてその魂がティアの心を優しく包んでいく。
はあはあと息を荒げるショーエンの呼吸を感じながら、ティアは自分も熱い息を荒げているのを感じた。
やがて二人の呼吸が静まってゆき、まるで揺りかごに包まれた赤子の様に、ティアの心は安心感で満たされていく。
そしてショーエンの身体が離れる時には、まるで別れを悲しむ子供の様に腰が震えた。
「ティア・・・」
とショーエンの声が聞こえた。
ショーエンの手は、ティアの胸の鼓動を確かめるようにやさしくそっと置かれている。
そして、今度は優しい唇のキスをして、ティアの首筋にショーエンの髪が触れるのを感じた。
「愛しているぞ・・・」
というショーエンの声に、ティアはこれまでに無い程の心の震えを感じ、自然と涙が溢れてきた。
「うん・・・私も・・・」
と笑顔で言ったティアの目は、何故か涙が止まらないのだった。
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