粘着

思ったよか、しつこかった。

引き離そうにも強い力で掴まれており、一筋縄ではいかない感じだった。

「あ、あのー。俺、仕事で疲れてるんす。

腹も減ってるんです。汗臭くて風呂に早く入りたいんです。どこの誰だか、わからないんすが、はなしてくださーい」


「!?どこの誰だかわからないって?

いやーねぇーもう」


「と言っても、普段と違うから分からないか」


「そうね。確かにふだんかけてる眼鏡はどこかに忘れてきてしまったしね」


そう言ってその女は前髪を掻き上げた。

一瞬、誰だか分かった気がした。

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