木を守るモノ3
「ドライアドだとしたら理解できない話でもないかもしれないな」
「どうしてですか?」
「ドライアドの本体は木だ。あの姿もドライアドであるけれど木を破壊されない限りドライアドは死なない」
「じゃあらあのドライアドは自分の木を守るために? でもなんだか違う感じだったしな……」
ドライアドの反応を見る限り否定はしていたものの完全に違うというわけではなさそうだったとは思う。
「小さいドライアド?」
程なくしてドライアドが戻ってきた。
なぜかその後ろには小さいドライアドが何体か隠れるようにしてついてきていた。
「自分のためじゃなくて……この子たちのためにやってたのか?」
先ほど自分の木を守るためにやったのかと聞いた時にドライアドは首を振った。
なら小さいドライアドのためだろうかと思った。
ジケの質問にドライアドは頷いて答える。
「なるほどな」
腕を組んで考えていたルシウスが何かを理解したように頷いた。
「やはり人間の行動の変化が魔物に影響したのだな」
「どういうこと、お父様?」
「先ほども言ったがドライアドの本体は木だ。人にも近い妖精体が自由に動けても本体である木はそうはいかない。外敵から身を守る力があればよいのだがそうではない時に木が本体のドライアドはあまりに無防備なのだ」
「それとこれとどういう関係が?」
「あの小さなドライアドはまだ生まれて間もないのだろう。己を守る力が力が小さい……それこそ木こりにも抵抗ができないぐらいなのかもしれない」
「そーいや、森の奥まで伐採の範囲を広げたなんて言ってたな」
「もしかしたら人間が森の奥に来るようになってドライアドにとって脅威に感じたのかもしれない」
「いわゆる警告というものだったのかもしれませんね」
担当区域が変更になって木こりたちがこれまでよりも森の奥で活動することになったのは決して関係のないことではなかった。
幼い木の精が生まれ、ドライアドはそれを守ろうとした。
しかし人間に意思を伝える手段を持ち合わせていなかったドライアドは木こりたちを止めようとして襲撃して拘束していたのである。
「どうにか君たちの木を傷つけないように話してみるからさ。木こりたちを返してくれないか?」
ドライアドの目的は分かった。
ドライアドが宿る木を守ろうとしている。
ならば木こりや町にそのことを伝えて手を出さないようにしてもらえばいい。
「……ダメ?」
ジケの説得に答えることはなくドライアドはジケの目をじっと見つめている。
その時フィオスがジケの腕の中でプルプルと揺れ、ドライアドはフィオスの方に視線を向けた。
「……あっ」
長いようで短い沈黙が流れた後ドライアドは自分の木の方を見た。
「木こりが降りてくる……」
拘束された木こりたちが降りてきて地面に寝かされる。
騎士たちが近づいて状態を確認すると気を失っているだけでまだ生きていた。
「まだ半分くらいいるけど?」
ただドライアドが降ろしたのは拘束した木こりのうちの半分だけだった。
ドライアドはフルフルと首を横に振る。
どうやらまだ解放してくれなさそうだ。
「ちゃんと話しつけてくるまでだめってこと?」
「そうみたいだね」
ドライアドが大きく頷いた。
ドライアドの方もジケに対して手放して全幅の信頼を置くことはできないということでもなのだろう。
ただ半分返してくれたのはドライアドなりの信頼、話に応じるつもりがあるということを行動で示してくれているのだ。
「私から話してみよう。どこかに互いにとってもちょうどいいところがあるはず」
困ったような顔でジケに見られてルシウスは優しく微笑む。
ジケが交渉するのは難しかろうがルシウスなら町の人も話を聞いてくれるだろう。
目の前に本体があるのだし今ここでドライアドを倒してしまうことは容易い。
しかしドライアドは森を守ってくれる存在でもある。
ドライアドがいるということは森は魔力が豊かで良い場所なのだということになる。
町の人だってドライアドとの衝突は望まないはずだ。
「任せておいてくれ」
案内の冒険者や解放してくれた木こりもいる。
十分に交渉する余地はあるとルシウスは思った。
「まあ……ひとまずは解決? なのかな?」
フィオスがジケの腕の中で跳ねて、ドライアドは微笑みを浮かべてフィオスのことを撫でる。
なぜかミニドライアドたちも集まってきたのでジケはフィオスのことを撫でさせてあげたのであった。
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