木のクマを倒せ!4
「しかもあれはただのタネではない」
「ただのタネじゃないってどういうことですか?」
「さっきも言ったがタネは本来弱い存在だ。大きく成長するためどこかに逃げるものだ」
「でもあれ戦ってるよ?」
「そうです、お嬢様。本来逃げるはずのタネが逃げずに戦っている。生きるために戦うことを選択したのです」
逃げるはずのタネが抵抗を見せている。
おそらくまだウッドベアは無事なタネを隠し持っていてそれらを守るためにミニウッドベアは戦っているのだ。
本当なら逃げて自分を成長させるための魔力を燃やすように使って兵士たちに襲い掛かっている。
「こっち来るよ!」
ミニウッドベアの何体かがジケたちの方に向かってくる。
「ユディット!」
「はい!」
武器を構えたジケとユディットは前に出てエニたちを守ろうとする。
「私もやるよ!」
二本の剣を手に持ったミュコもやる気を見せる。
「はっ!」
飛びかかってくるミニウッドベアをミュコが空中で真横に切り裂く。
狙いは正確だししっかりとミニウッドベアを切り裂いたところを見ればミュコもただのお遊びだけで剣を振っているのではないと分かる。
「へっ?」
「ミュコ!」
思いの外柔らかくて簡単に切り裂かれたミニウッドベアであった。
けれど切り裂かれたミニウッドベアは真っ二つになりながらも勢い衰えずに鋭い牙の見える口を大きく開けてミュコに迫る。
「あ、ありがと……」
ジケがとっさに叩き切らなかったらそのままミュコは噛みつかれていただろう。
「ユディット気をつけろ! 意外としぶといぞ!」
ミニウッドベアは簡単には死なないようだ。
植物型だからなのか、あるいは決死の抵抗だからかもしれない。
切り裂いても死なずに抵抗を見せてくる。
小さいといっても人の頭ぐらいのサイズはある。
油断すると意外と危ないかもしれない。
「くっ!」
「ユディット!」
「大丈夫です!」
縦に二つに切り裂かれたミニウッドベアが最後の抵抗とばかりに爪を立ててユディットを攻撃した。
浅く腕を切り裂かれてユディットが痛みに顔を歪める。
戦闘に影響を及ぼすほどの怪我ではなかったけれども縦に二つにされても動けるのかと驚きは隠せない。
「ユディット下がれ! ミュコ、気をつけて戦うんだ!」
ユディットを下がらせてエニに任せる。
浅い怪我なのですぐに治るだろうと思いながらミュコにも戦ってもらう。
一撃で倒せる相手じゃないのでしっかりと後の回避を考えて攻撃しなければならない。
「うわっ!?」
ミニウッドベアから根っこが伸びてきた。
しなるようにして叩きつけてきた根っこをジケはなんとか避けてミニウッドベアを切り裂く。
「ジケ! 後ろ!」
「なんだこいつ!」
後ろからミニウッドベアがジケに飛びかかる。
エニが叫んでくれたから良かったものの危ないところだった。
ジケが油断していたのではない。
ジケの後ろにいたのは既に倒されたはずのミニウッドベアだったのである。
縦横にそれぞれ切り裂かれて動かなくなったミニウッドベアだったのだが切られた断面から根っこが伸びていてくっつこうとしていた。
「エニ、燃やしてくれ!」
「分かった!」
ただ切っただけでは倒せない。
ジケは再びミニウッドベアを四等分に切り裂くとエニが魔法で炎を放つ。
「……いけそうだな」
ウッドベアよりも柔らかく断面も露出しているミニウッドベアはエニの魔法で激しく燃え出した。
もがくように動きながらも炎は消えず、やがて動かなくなり炭になった断面から根っこが生えてくることもなかった。
「切った後に魔法で攻撃するんだ!」
魔法使い騎士たちも剣を抜いて自衛していたが、エニがミニウッドベアを燃やしたのを見て魔法で倒せそうだと判断した。
ミニウッドベアに向かって火を放つ。
「切られたものを狙うんだ!」
結果として分かったのは切り裂かれて中が露出しているとミニウッドベアは火がつくということだった。
「やああああっ!」
ウルシュナがミニウッドベアの噛みつき攻撃をかわして槍を突き刺す。
そしてそのままミニウッドベアを地面に突き立てる。
「ミュコ!」
「任せて!」
槍で地面に固定されてジタバタと暴れるミニウッドベアをミュコが切り裂く。
「リーデ!」
「はい!」
そして切り裂いたミニウッドベアをエニが魔法で燃やす。
「凍りなさい!」
炎とはまた違うけれどリンデランもある意味ミニウッドベアに有効な一撃を放っていた。
氷属性が得意なリンデランはミニウッドベアのことを魔法によって氷で閉じ込めてしまっていた。
牙や爪は意外と鋭いが、力そのものはあまり強くない。
リンデランの魔法で凍らされたミニウッドベアは氷から脱することもできなくて地面を転がる。
おそらく死んではいないけれども現時点で戦闘不能になったことは確かである。
落ち着いた後でじっくりと倒してしまってもいいので結果として倒したのとあまり変わらない。
魔法使い騎士たちも流石に熟練していてしっかりと切られたミニウッドベアを狙っているし、自衛もできていて中には襲ってきたミニウッドベアを剣で切り裂いている人もいる。
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