身も心も温まりたい6
簡易浴槽の横には試作品の圧搾機が置いてある。
圧搾機もいくつか種類を作ったのだけど子供でも扱えて素早く作業できるものはなかなか難しく、使われなかった圧搾機も存在していた。
通常使っているのはネジ式で取っ手を回していけば板が少しずつ下がっていってコブをぎゅっと押しつぶして搾ることができる。
簡易浴槽の横に置いてあるものはテコを利用した仕組みのもので上の方に取り付けられたレバーに力をかけて圧力をかけるというものだった。
残念ながら子供の力ではケントウシソウのコブを充分に搾りきれず却下となった。
今回はとりあえず簡単に搾れればいいと思ったのでこちらを持ってきたのである。
本格的に使うなら搾りやすい圧搾機をまた作る必要があるなとは思う。
「設置して……リアーネ頼むよ」
「おうさ!」
圧搾機の中に蒸し上がったケントウシソウのコブを入れる。
そしてリアーネが上に取り付けられたレバーを力一杯引くと圧搾機上部の板がケントウシソウのコブを押し潰してお湯が溢れてきた。
簡易浴槽の中にお湯が流れ込んでいく。
「んー……これが限界だ!」
リアーネの力でもケントウシソウのコブを搾りきれない。
やはり人力だけではどうしても限界がある。
それなりに水の量はあるけれどお湯の量はまだ足りていない。
もう一つ搾ることにした。
前に入れたケントウシソウのコブはそのままにもう一個圧搾機に入れて搾る。
「おとと、ストップストップ!」
流石に二個も搾ると大きめの浴槽からも水が溢れてしまいそうになる。
ある程度のところで止めてもらう。
「ん……割と熱めだな」
手を軽くつけて温度を確かめる。
一階の湯気を二階に運んで蒸しているとはいっても蒸し上げるためにはかなりの高温でなくてはならない。
そのためにケントウシソウのコブの温度も熱々で、搾り出されたお湯もまだまだ熱々だった。
「キーケック召喚!」
「僕ずっといたよ!」
実は横で搾る様子をうかがっていたキーケックを導入する。
「キーケック、氷だ!」
「ほれきたー! 任せておけぇ!」
ジケの指示でキーケックが氷を出してお風呂のお湯に入れる。
氷足したりお湯足したりしながらいい感じの温度を探す。
ジケの好みとしては熱めのお湯で試行錯誤していい感じの温度にようやくなった。
「ジケ……意外といい体」
「キーケックは……もうちょっと鍛えてもいいかもな」
お風呂が完成した。
あとは入浴してみてお湯の具合を直接チェックするだけである。
流石に恥ずかしいのでリアーネには部屋を出てもらって服を脱ぐ。
蒸し暑い部屋にいたので汗だくになっている。
浴槽は大きくジケ一人では余るのでキーケックもついで
に一緒にお風呂に入ることにした。
ムキムキとはいかなくても細くて折れてしまいそうだったジケの体もそれなりに引き締まった良い体になってきていた。
キーケックは少し頬を赤らめてジケの体を見ている。
「そんなみられると……恥ずかしいぞ」
「僕細いって言われる」
「確かに細いな」
細くて色白。
キーケックのイメージ通りであるけれどもう少しぐらい肉があっても良いかなとジケは思う。
「お父さんも筋肉つかない」
「確かにクトゥワも線が細い人だな」
考えてみるとクトゥワも細い人である。
今は極貧状態から脱して普通に食べられるようになっているし食べないでいるとヒスタが二人にちゃんと食べさせてくれる。
だけどクトゥワは血色が良くなったぐらいで特に体格的に大きな変化はなかった。
あまり太らない体型なのだろう。
そしてクトゥワの息子であるキーケックも似たような体質の持ち主であるらしい。
「まあ、無理して太ることもないからな。今はそれより風呂だ」
蒸し暑い部屋なのでそう簡単に冷めはしないがせっかく適温にしたのだから熱いうちに入りたい。
「ほぉ〜」
「ふわ〜」
ジケとキーケックがお風呂に入る。
熱々のお湯が体に染みるようで思わず声が出る。
「……合格!」
「やった!」
十分に気持ちのいいお風呂である。
ジケの合格にとりあえずキーケックも喜ぶ。
「おっと、フィオスも入るのか」
浴槽の縁にいたフィオスもチャポンとお風呂に入る。
プカっと浮いているフィオスは気持ちがいいのか微振動してお風呂の表面が細かく揺れている。
「気持ちいい」
「そうだな」
お風呂に入るという習慣はキーケックにもなかったけれどお風呂のことは気に入ってくれた。
「後で床ちゃんとしないとな。風呂の部屋も作るようにしないと」
ジケとキーケックが入ったことにより浴槽からお湯が溢れていた。
傷まないように床は防水加工をしているが水浸しになっているを放置しておくのはいけない。
掃除は必要だなとぼんやりと考えていた。
「風呂っていいな! 毎日でも入りたいもんだ!」
ジケとキーケックが入った後にお風呂に入ったリアーネもお風呂に大満足だった。
「なんなら私と一緒に入るか? ジケならいいぞ」
「いつかな」
「むっ……断らねえのかよ」
「ふふっ」
変な冗談は変な冗談で返されてリアーネが顔を赤くする。
確かどこかの町には混浴なるものがあったと過去に話を聞いたことがあるとジケは思い出した。
流石にみんなで一緒にとはいかないけどしっかりタオルを身につけるならどうだろうか。
そんなことしたらエニあたりにぶっ飛ばされそうだな、最終的にはそんなことを考えていたのであった。
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