身も心も温まりたい2

「ジケ、褒めて!」


「……よくできました」


「えへへ」


 よく分からないけどキーケックの頭を撫でてやる。

 するとフィオスがピョンとジケの膝に乗ってくる。


 こちらも撫でろというらしいので撫でる。


「それで、何があったんだ?」


 キーケックの場合何もなくても褒めてほしいと普通に言いそうなのだけど、いきなり訪ねてきていきなり褒めてとは流石にないだろう。

 ジケに褒めてもらえそうな何かがあったのだとジケは思った。


「来て!」


「おいおい、転んじゃうって!」


 キーケックはジケの手を取って引っ張る。

 ジケは転びそうになりながらキーケックに手を引かれてついていく。


 連れて行かれた先はキーケックが住んでいて研究も行っている家だった。


「褒めてくれる?」


「すごいことだったらわしゃわしゃしてやるよ」


「ぬっふふっ〜」


「おや、連れてきたのですね」


 家にはキーケックの父親であるクトゥワもいた。

 クトゥワの手元を見るとナイフで乾燥させたケントウシソウのコブをほぐしているところだった。


「それで、今日は何があったんですか?」


「ふふふ、私ではなくキーケックですよ」


「僕が見つけた!」


 二人が行っている実験で何か見つけたのかと思ったけど今回クトゥワはあまり関わっていなさそうな雰囲気がある。


「じゃじゃーん!」


「んー?」


 意気揚々とキーケックがジケに見せたのはケントウシソウのコブだった。

 水を絞った後ではなく絞る前のパンパンになったケントウシソウのコブである。


 それがどうしたのかとジケは首を傾げる。


「むふふ〜」


 なんだか分かっていないジケをキーケックはニコニコとして見ている。


「ちょっと待ってて」


 ジケの前にケントウシソウのコブを置くとキーケックは走って部屋を出ていく。


「よいしょ……」


 水が並々と入った大きな木のバケツを持って戻ってきたと思ったらまた走っていく。


「それは……ケントウシソウのコブ……かな?」


 そして次に持ってきたのは水を絞った後乾燥させたケントウシソウのコブであった。

 水を含んでいるとまんまるなのだが絞って乾燥させるとほとんど板のような状態になっている。


 クトゥワは今そんなケントウシソウの乾燥コブにナイフを差し込んで繊維っぽくほぐしているのだった。


「それをどうするんだ?」


 バケツの水と乾燥コブ。

 どうするのかジケにはまだ分からない。


「見てて」


 そう言ってキーケックは乾燥コブをバケツの中に入れた。


「……おっ?」


 バケツの中の水がみるみると無くなっていく。


「じゃーん!」


 少し置いてキーケックが乾燥コブを取り出すとバケツの中の水が無くなっていた。


「どういうことだ?」


「ふふーん、コブ、水吸収するんだ!」


「コブが?」


「乾燥させたコブ、また水を吸収するようになる。結構たくさん吸う!」


「水吸収をするのか?」


「たまたま見つけたのですよ」


 どうだと胸を張るキーケックの頭を撫でながらクトゥワが追加で説明をしてくれる。

 キーケックとクトゥワはケントウシソウのコブについて調べていた。


 より何かに活用できないかと探るためで水が入っているものはあまり手を出すと破裂してしまう危険があることはわかったので水を抜いた後のもので実験していた。

 乾燥の過程を確認するために部屋の中にもケントウシソウのコブを置いていた。


 そんな時にキーケックが手に持っていったコップの水を転んだ際に乾燥したコブにかけてしまったのである。


「ケントウシソウのコブはあっという間に水を吸い込んでしまいました」


 興味を持ったキーケックはクトゥワの許可をもらってケントウシソウの乾燥コブを井戸まで持っていって水をかけ続けた。


「そうしてたっぷりと水を吸収したのがそのコブです」


「これが?」


 クトゥワはジケの前に置かれているケントウシソウのコブを指差した。

 普通のコブに見えていたけれど中に詰まっているのは井戸の水ということなのである。


「僕調べた。絞る前よりもちょっとだけ水の少ないけどたくさん吸ってくれる。また蒸せば水も出てくる」


 本来保有している水の量より吸収する水の量は少ないけれどそれでもケントウシソウのコブが吸収する水の量は多いといえた。

 吸収した水はまた蒸して熱を与えて絞ると普通に取り出すこともできたのである。


「新発見! どう?」


 キーケックは胸を張りながらも褒めてもらえるようにちょっと頭を差し出している。


「……すごいじゃないか!」


「やった!」


 ジケはパッと笑顔を浮かべてキーケックの頭をわしゃわしゃと撫でてやる。


「フィオスも?」


 自分も撫でろというのかと思ったらフィオスはキーケックの肩に乗って頬に触れてプルプルとしている。

 あたかもよくやったと褒めているようだとジケは思った。


 もしかしたらジケが喜んでいるから本当に褒めているのかもしれない。


「これは使えるな!」


 さっきまで水問題に頭を悩ませていた。

 けれどキーケックの新発見によって一気に解決の兆しが見えてきたとジケは思ったである。


「実験だ! キーケックやるぞ!」


「おー!」


「はははっ、元気がいいですね」


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