骸骨と戦って6

 バルダーのパワーならスケルトンも余裕で倒せるのにもったいない。

 けれど人間得手不得手があるものだから仕方ない。


「事前の作戦通りに動くんだ!」


 全員が全員柵の後ろで戦えるわけではない。

 ある程度スケルトンが迫ってきたところでジケは下がった。


 バルダーなど何人かが柵の後ろに残ってスケルトンを引きつけ、ジケたちはまた退いたところにある柵の後ろから石を投げる。

 スケルトンが柵を回り込み始めたら柵から攻撃していた人たちは後ろに下がり、また後ろの柵から石を投げ、柵かに近づかれたら一部を残して撤退、そうしてスケルトンの数を減らしていく。


「おわっ!?」


 スケルトンの後ろの方で大きな爆発が起きた。

 粉々になったスケルトンが宙を舞っていてジケは石を投げる手を止めてしまった。


「ふっふっ、成功じゃのう」


 ダンデムズはスケルトンが吹き飛んだ様子を見て愉快そうに笑う。

 迎撃準備の時に協力を申し出ていたのは柵を作る手伝いをするためではない。


 魔法によるトラップを設置するためであった。

 ダンデムズたち魔塔の魔法使いたちも魔法で攻撃しているが事前に魔法を準備してもあった。


 手間もかかるし知識なども必要であるが用意しておいた魔法は簡単に強力な威力が出せる。

 少しスケルトンが詰めた後に使えばみんなが被害に遭うこともなく大きな効果を発揮できるのである。


「もう一度」


 ダンデムズがダンと杖で地面を叩きつけた瞬間また爆発が起きた。

 スケルトンはなす術もなく倒されてしまうが、それでも恐怖心もないスケルトンはすぐさま仲間の穴を埋めように進行してくる。


「それでもこの調子なら直接対決する時にはだいぶ数が減らせそうですね」


 石は大量に用意してある。

 柵にひっかかるスケルトンも多くて倒すペースは思っていたよりも早い。


 柵もまだあるのでこのまま下がりながらスケルトンを倒していけば柵がなくなって戦うことになっても大きく数を減らせていることだろう。

 石を投げることに大きな労力も必要としないので戦う時になっても体力を残しておけそう。


「おやおや……少し目を離している間にこんなことになっているとは」


「カイトラス隊長! あちらに浮いているスケルトンがいます!」


 撤退と投石を繰り返してスケルトンが減ってきたなと目に見えるようになってきた。

 一人の兵士が迫り来るスケルトンとは別の方に浮き上がっている奇妙なスケルトンを見つけた。


 魔法使いのようなローブを着ていて大きな杖を持っている。


「……リッチだ」


 明らかに異様な個体でその姿を見たジケにはすぐにピンときた。

 ただのスケルトンではなくリッチである。


「兵士たちだけではないな? 計画を邪魔してくれるのは何者だ?」


 動き出したのはバルダーとグルゼイだった。

 脅威となる敵の存在に二人は一気にリッチに向かっていく。


「ははっ、怖いな」


 リッチは杖の先を地面に向けて何かをぶつぶつとつぶやいた。


「出てこい。僕の邪魔をする敵を倒すんだ」


 すると地面から骨の手がズボッと出てきて三体のスケルトンが姿を現した。

 しかし現れたスケルトンもただのスケルトンではなくしっかりとした鎧を身につけていた。


「スケルトンナイトです!」


 ウィリアは険しい顔で状況を見ていた。

 リッチが呼び出したのはスケルトンナイトと呼ばれる魔物だった。


 通常のスケルトンより若干の知能があり魔力や力が強い。

 戦い方も生前の経験があるように戦うのでスケルトンに比べて遥かに油断できない相手となる。


 リッチが放つ黒い魔力をまとったスケルトンナイトがリッチに向かおうとするバルダーとグルゼイの前に立ちはだかる。


「強い……!」


 スケルトンナイトでも二人の敵ではないだろうとジケは思っていた。

 けれどスケルトンナイトはバルダーとグルゼイの攻撃を受けてみせた。


「君たちも強いね。でもそいつらは僕の選りすぐりだから簡単にはやられないよ」


 三体のスケルトンナイトはそれぞれ装備が違う。

 剣を持ったもの、槍を持ったもの、大きな盾と剣を持ったものがいる。


 バルダーの戦斧は盾に防がれ、グルゼイの攻撃は槍のスケルトンナイトに防がれていた。


「異端審問官……こんなところまで。それに……魔塔か。子供まで。不思議な集団だ。まあいい。邪魔するやつは全員殺せ」


 盾のスケルトンナイトがバルダー、槍のスケルトンナイトがグルゼイ、そして剣のスケルトンナイトがジケたちの方に向かう。


「……全員作戦通りにスケルトンと戦うんだ! スケルトンナイトとは俺が戦う!」


 スケルトンナイトが迫ってくるがもちろん普通のスケルトンも大挙して押し寄せてきている。

 リッチやスケルトンナイトの方ばかり見ているわけにはいかない状況なのである。


「俺が相手だ! ……くっ!」


 カイトラスも部下を率いる立場であり、決して弱い人ではない。

 しかし剣のスケルトンナイトは一瞬でカイトラスに接近すると素早く攻撃を繰り出した。


 カイトラスは防御が間に合わず脇腹を浅く切り裂かれて顔をしかめた。

 バルダーやグルゼイの攻撃を止めたのは偶然ではなく、スケルトンナイトそれぞれの実力が高い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る