骸骨と戦って3

「今動かせる人員を考えて……」


「ご報告です!」


「今度はなんだ?」


 悪魔教やシダルテイのことはひとまず置いといてアンデッドモンスターに対応せねばならないとシダルケイは考えた。

 ジケも話すべきことは話し終えたし行こうと思っていたら別の兵士が慌てたようにシダルケイのところにやってきた。


「シダルテイが反撃に出ました!」


「なんだって!?」


「どこで動き出した!」


「前線となっているところ一帯で一気に動いているようです」


「なんと頭の痛い……」


 シダルケイは深いため息をついて頭を抱えた。

 しかしこれでシダルテイが悪魔教、そして今回出現した魔物と関わりがありそうなことがより浮き彫りになった。


「どうすれば……」


 シダルケイの事情も決して余裕があるわけではない。

 むしろかなり厳しくなっている。


 押している雰囲気はあるもののシダルテイの方は上手く撤退していて後に残されたものが少なかった。

 戦いの復旧などもあって押せば押すほどにシダルケイ側には大きな負担がのしかかっていた。


 さらには王家の証を持っていると公表したこともある種シダルケイの負担になっている。

 戦いを終わらせるための一手として暗殺なんていう手段もある。


 当然シダルケイとシダルテイは互いに暗殺の警戒を行っている。

 シダルケイは王家の証を手に入れたということで暗殺に加えて王家の証の窃盗にも気をつけなければいけなくなった。


 基本的にはシダルケイは王家の証を身につけているのでシダルケイを守ることと王家の証を守ることは同一である。

 ただやはりシダルケイの護衛にはより力を入れている。


 先日のガデンの裏切りもあったのでシダルケイの護衛となると色々とやりくりも大変なのであった。


「……シダルケイさん」


「なんでしょうか?」


「俺たちにも手伝わせてくれませんか?」


「手伝うとは?」


「魔物の討伐です」


 ここでシダルケイを放っておいてはシダルテイのいいようにやられてしまうかもしれない。

 今ジケたちはフリーであるし出来ることがあるなら手伝った方がいい。


「しかし……」


「戦争に参加して直接戦うのはいけないでしょう」


 当然のことながら傭兵のようなことをやるつもりはない。

 後々問題になるかもしれないしジケならともかく魔塔や異端審問官が関わると問題が複雑化してしまう。


「でも魔物の討伐なら戦争は関係ないはずです」


 ただ魔物討伐はまた別である。

 関係性として悪魔教、あるいはシダルテイの関与も疑われるけれどあくまで疑いにとどまる以上はジケたちが介入しても問題にはならない。


 そろそろバルダーも体を動かしたいだろうしちょうどいいかもしれない。


「みんなに相談の必要はあると思いますけど魔物を倒すのなら少しは協力できます」


 もし仮にリッチがいて戦うことになったのなら異端審問官たちは大きな戦力となってくれるはずだ。


「……なるほど。でしたらご協力を願いたいと思います」


 シダルケイもジケたちが強いということは聞いている。

 魔物との戦いに協力してくれるのならシダルケイの負担を多少は軽減できる。


 すでにジケに恩があるのにまた返さねばならない恩が増えそうだとシダルケイは思った。


 ーーーーー


 みんなとは相談の上でシダルケイからの協力要請に応えるという形で協力することになった。

 悪魔教が関わっているかもしれないということで異端審問官も協力してくれることになり、魔塔もリッチに興味があるということで同じく一緒に来てくれることになった。


 バーヘンたちヘギウス商会の人たちもジケがやるのならばと手伝ってくれる。


「むぅ……また危ないことしようとしてる」


「……ごめんなさい」


 おおむね魔物討伐には賛成的であったのだけどエニは少しむくれ顔だ。

 しょうがないのかもしれないけれどジケが危険なことに首を突っ込もうとしていることにお怒りなのである。


 今更止めることもできないしジケだけ安全な場所にいるわけにもいかない。

 とりあえず謝っておくぐらいしかできないのである。


「私のことちゃんと守りなさいよ」


「もちろんだよ」


「怪我しないでよ」


「……頑張るよ」


 流石に戦いの最中に怪我をしないとは言い切れない。


「どんな怪我したって治したげるけどさ、やっぱり怪我しないのが一番だから……」


「あんがとな、エニ」


 なんだかんだで優しいし、心配してくれる。

 ジケはこんなところまでついてきてくれるエニに感謝している。


「まあ死にはしないから大丈夫……」


「そーいう考えがダメなの!」


「いだい! いだいぞ!」


「やれやれ……」


 そこで終わっとけばいいのに余計なことを言うから頬をつねられる。

 怪我するしないじゃなく死ななきゃオッケーみたいに考えるからダメなのだとエニは怒る。


 同じく馬車に乗るグルゼイが片目をその様子を見て首を振る。


「まあまあ、ジケのことは私が守ったるからさ!」


「リアーネも前みたいなことしたら許さないから」


「あ、はい……」


 カッコよく仲裁しようとしたリアーネも撃墜される。

 前みたいなこととはイェルガルに来て襲撃された時にジケをケフベラスに乗せて敵陣に突っ込んだアレのことを言っている。


 結果的にリアーネが無双したからよかったけれど側から見たらなかなかリスキーな戦い方であった。

 アレにジケを巻き込むなとリアーネはエニに怒られていたのである。

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