秘密拠点と秘密の魔物2
タミとケリはメリッサに任せることにした。
ついでなので簡単な計算や読み書きの勉強なんかをメリッサから教えてもらうことにした。
以前にもリンデランから文字なんかを習ったとも聞いていたのでよりそれを発展させて少しずつでも学んでいけば将来役に立つかもしれない。
一方でジケたちはモロデラの研究を元にパルンサンの秘密拠点がありそうな場所を探しにイバラツカを出発した。
ちなみにモロデラに関しては戦闘力0である。
これまでどうやって調査していたのか聞いてみると魔物からは走って逃げていたようだ。
なかなか綱渡りな調査をしている。
「我らが〜ご先祖様の〜」
「そのやかましい歌やめないと切り捨てるぞ」
「あ、はい……すいません……」
モロデラはパルンサンの秘密拠点が見つかるかもしれないとテンションが高い。
目の下のクマはまだ残っているがよく寝てよく食べたおかげか元気いっぱいのようである。
ただ変な歌を歌うからグルゼイに怒られた。
まずはイバラツカの西側に広がっている森に向かう。
メンバーはジケを始めとしてグルゼイ、リアーネ、ユディット、それにエニもついてきていた。
盤石の体制であるがあまり魔物的な心配は大きくない。
イバラツカは大きな都市であるので冒険者を仕事としている人もたくさんいる。
商人なんかが立ち寄ることも多くあるので都市周辺の魔物はよく討伐されているのだ。
ただし噂になっている正体不明の魔物がいるかもしれないので一定の警戒はする。
ジケは歩くたびに揺れるフィオスを抱えてモロデラの後ろを歩いていく。
「ひとまず近いところから順番に回っていきましょうか」
絞ったといえど森の中の候補地は複数ヶ所ある。
ここからさらに絞ることはできないのでそれぞれの候補地を順に巡っていって確かめていくしかない。
「ええと……ここら辺ですね」
森の中にある木々の生えていない開けた場所にやってきた。
「まあ……確かに怪しくはあるな」
結構うっそうと木が生えている森の中で草も生えていない開けた場所があるというのは怪しく見える。
ただ時々そうした開けたところというのは森の中にあったりもする。
秘密拠点をどうやって見つけるのかと思っているとモロデラは背負っていた棒を手に取った。
そして地面を突くようにして叩き始めた。
「これは……時間がかかるな」
モロデラの様子を見てグルゼイがため息をついた。
画期的な方法があったのなら今頃モロデラはパルンサンの秘密拠点を見つけていただろう。
結局のところ地道で確実な手段しかないのである。
ジケたちが偶然入ることになったパルンサンの宝物庫も入り口は地面に隠されていた。
モロデラのように地面を叩いて違和感を探すというのは真っ当なやり方だ。
しかしどうしても時間はかかる。
地面が露出しているだけでもそれなりに広い。
全部叩いて回るのには多少時間がかかってしまうのは仕方ない。
「リアーネ、ユディット、手伝ってやれ」
「えー、たく、しゃあないな」
「分かりました」
グルゼイに言われてリアーネとユディットもモロデラを手伝う。
剣を抜いてモロデラの真似をするように地面に突き刺して調べていく。
「ジケとエニは俺と鍛錬だ」
グルゼイはジケとエニの方を向いてニヤリと笑った。
こうしてみるとグルゼイも表情豊かになった方だとジケは思う。
あまり笑顔を浮かべるような人でもなかったのに過去とはだいぶ変わっている。
その笑顔がさわやかなものでないとしても、だ。
「俺はエニを狙う。2人で協力して戦いエニがやられないようにしろ」
流石に剣を抜くのは危ない。
グルゼイは適当な木の枝を切り落として手に取る。
ジケはフィオスを剣にする。
いつもと違ってちゃんと切れないようになっている。
ここら辺の調整も今やお手のものである。
エニも杖を構えてグルゼイと向かい合う。
「行くぞ」
一言ボソリと始まりをつぶやいてグルゼイはエニと距離を詰めた。
エニもジケとグルゼイの鍛錬を眺めていたことはある。
外から見ていても速いと思うのに正面からグルゼイを見ているとより速いのだ。
行くぞから本当に始まるまでほとんど時間もなく対応できていないエニの前にジケが割り込んで振り下ろされた木の枝を防ぐ。
「女の子にそれはないんじゃないですか?」
「ふっ、戦場で敵は待ってくれない。それにお前がしっかりして防いだのだからいいだろう」
「エニ、下がれ!」
グルゼイがジケに激しく切りかかる。
すぐ後ろにエニがいてはジケの行動も制限されてしまう。
「あっ、うん!」
エニが大きく下がり後ろに空間ができたのでジケも体を使いながらグルゼイの攻撃をさばく。
ただの木の枝でも魔力をしっかり込めて攻撃されると侮れない。
ジケだって火かき棒で魔法を切ったことがある。
より熟練したグルゼイならただの木の枝も立派な武器になりうる。
「くっ!」
魔力の斬撃が軌跡を残す。
素早い連続攻撃に押されてジケの体勢が崩れる。
「やあっ!」
そのおかげでちょうどジケがエニの正面から外れた。
隙をうかがっていたエニが火の玉を放った。
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