希代の盗賊が遺したもの1
色々試した。
直接火の中に入れるのではなくちょっと火から離して弱火でじっくり火を通してみたり、逆に更に火力上げてみたりした。
今のところ弱火でじっくりが1番希望がある感じだったのだがある程度水が出るとコブが一回り小さくなってこれ以上水が出てこなくなるのである。
持った感じではまだまだ水は詰まっていそうなのだけど弱火だと中まで火が通らないからダメなのかもしれない。
他にも水に対する実験も行った。
色々な方法で水を採ったのでそれぞれチェックしてみたけれど爆発によって出てきた水はどれも非常に青臭いニオイがしていた。
煮沸してみたら青臭いニオイは弱くなったけどまだ残っていてしまった。
完全に蒸留すると普通のニオイも味もない蒸留水にはなる。
けれど一々全ての水を蒸留していくのは結構手間がかかる。
それに火に入れてコブから出てきた水は蒸留水ではない普通の美味しい水なのでそっちの方がいいなとジケは思う。
「暇なの?」
「暇じゃねーよ!」
実験するとコブは減る。
色々と試してみるとあっという間にコブストックがなくなってしまった。
だからまた冒険者ギルドに言ってケントウシソウを狩りに行くことにした。
今回も監視役が派遣されたのだけどやってきたのはライナスであった。
知らないおじさんが来るよりは全然良いのだけど、ライナスだってロイヤルガードの師匠がいて鍛錬だってあるだろうにこんなに拘束時間が長いことをしていていいのかと思ったのだ。
「ちょっと前から師匠も忙しいみたいでな」
「ロイヤルガードが忙しいのか?」
「つってもどこか行くとかそんなんわけじゃなくて国にはいるみたいだぞ」
王を守る役目を担うロイヤルガードが忙しいのは良いことではない。
王様周りで何かがあったと考えられてしまうからだ。
しかし王城に留まっているのなら戦争や反乱などではなさそう。
一体何があって忙しくしているのか気になるところである。
けれど特に過去で何かあったような記憶はなく、危ない噂なんかも聞かない。
水が不足しているぐらいでその他については安定していた。
例えば王様が体調を崩した時にもロイヤルガードがしっかり警護するということもあり得るのでそうした関係かもしれない。
「まっ、お前でよかったよ」
国に何か問題が起きたところでジケにできることはない。
大きなことが起きても乗り越えられるように準備はしてきているから起きたら起きたでどうにか頑張るしかない。
もちろん何も起きないのが1番ではあるのだけど。
「にしても人少ないな?」
「ああ、前回でどんな感じかわかったし少数精鋭、さっさと行って帰ってくるんだよ」
今回は前回よりも限られたメンバーでケントウシソウのところに向かっている。
ジケとライナス、そしてユディットとリアーネとニノサンの5人である。
ケントウシソウを倒すのに3人いればいいと分かった。
効率的にケントウシソウを攻略するのにみんなで行くことはない。
少ない人数の方が手荷物も少なく済む。
ということで今回は接近戦闘系のジケと護衛たちでやってきたのだ。
あまりこうしたものに連れていかないとニノサンもすねるのでフルメンバーである。
「ちぇっ、エニはいないのか」
「エニも教会での仕事あるからな」
エニがいてくれると安心だけどエニだって暇ではない。
割と緩めに働いているらしいけれどエニは責任感もあるので教会での仕事に手も抜かない。
ケントウシソウ狩りのような日数を要するものに頻繁に同行するのはちょっと難しいのだ。
「それに今回速いしな」
前回は兵士の目もあったし、人数的な関係で歩いてついてこなきゃいけない人もいた。
だからのんびりと移動していたが今はみんな荷車に乗ってユディットのジョーリオが結構な速度で荷車を引っ張ってくれている。
すれ違う人はデカイクモが走ってくる様にギョッとしている。
ジケも前から荷車を引いたクモが走ってきたら驚くと思う。
なので今回は前回よりもだいぶ早くケントウシソウのところまでついた。
「相変わらずたくさん生えてんな……」
前回でも結構倒したと思ったのだけどケントウシソウはまだまだ生えている。
「まあサクッと倒してサクッと帰ろう」
たくさんケントウシソウが生えていることはジケにとってはありがたい話である。
前回の反省を活かして更に楽にケントウシソウを倒すためにケントウシソウ1体に対して4人で挑んでいく。
ケントウシソウがどのタイプの戦闘スタイルなのか見極めながら戦う。
全体を平等に攻撃するタイプや1人に集中するタイプ、グルグルと回転して全体攻撃するタイプもいる。
どのタイプでも4人でかかればあっという間に倒せてしまう。
グルゼイもいないので鈍剣を使う必要がない。
だからジケとユディットの攻撃力も高くなっていてより楽になっていた。
「なんというか、奇妙な植物ですね」
ニノサンはケントウシソウ狩りに初参戦となる。
やはり初めてでケントウシソウを見ると変な魔物だなとなる。
そもそもどうしてこんなところにケントウシソウが群生しているのかも謎である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます