スイロウ族と再会2

 助けが必要な状況なのは分かっているけれど抵抗があってしまうことは仕方ないのでジは特に不愉快には思わない。


「すまないな。こんな状況だから警戒心も高まっている。許してほしい」


「こちらもそちらの事情は理解している。とりあえず情報の共有がしたいのだが大丈夫だろうか?」


「ああ、みんなもあのような態度だが助けに来てくれたあなたたちに手を出すようなことはない」


 タラテスアダルがため息をつく。

 族長らしく固い考えの人なのかと思ったら思っていたよりもジたちに対して強硬な態度の人ではなかった。


「ではそちらの代表者ルシウスさんとお話を……」


「ジもだよ!」


「なに?」


「全部、ここまでジがやってくれたんだ! ジが代表だよ!」


「えっ?」


 タラテスアダルとルシウスの会話にトースが急に割り込んだ。

 ルシウスが代表ということにトースは納得がいっていなかった。


 トースを助け、エスクワトルタを助けて、偉い人に話を通して、トースたちをここまで連れてきたのはジである。

 なので今回集団を代表すべきはジなのだとトースはタラテスアダルに主張した。


 急な主張に当の本人であるジが1番困惑する。


「エスクワトルタはどう思う?」


「……ジも代表となる資格はあると思う」


 エスクワトルタもトースに同意する。

 社会的な立場を考えるとルシウスが代表なのだろうがここまで助けてくれたジが代表者の話し合いから外されるのは違うだろうとエスクワトルタも思った。


 別に話し合いになど参加するつもりもなかったのに何を主張しているんだとジは焦る。


「2人がそういうのならそうなのだろう。……だがまだ彼は子供だ。ルシウスさんとジさん、2人の代表者と話をすることにしよう」


 いかにも大人な対応。

 トースとエスクワトルタの思いも汲みつつ、ちゃんと話し合うべきルシウスも外さないように誘導した。


「お前たちはみんなのところに行ってなさい」


「はい」


「……それでは改めて。助けに来てくださったこと感謝いたします」


 タラテスアダルは頭を下げた。

 戦士っぽく険しめな顔つきはしているが話し方も穏やかで一切嫌悪感や敵意のようなものを感じさせない。


 それでいながらルシウス相手にも堂々としている。

 頼れる群れのリーダーといった風格のある人だ。


「エスクワトルタから事情は聞いていますが今一度何があったのかお聞きしてもいいですか?」


「はい。奴らはある日突然現れました……」


 いつものように森の生態系を守るために狩りをしていたスイロウ族が密猟者の存在に気がついた。

 明るい色の美しい羽を持つ鳥の魔物を追いかけ回していた。


 誰であれ密猟を行う者は許さないのでスイロウ族は密猟者を倒そうとしたのだが密猟者が狙っていたのは魔物だけではなかったのである。


「逃げた密猟者を追いかけた同胞を待っていたのは密猟者の仲間でした。どうにかその場から逃げ出した者が危機を伝えてきたのですが……」


 その直後に密猟者が集落に襲撃に来たのである。

 もちろんスイロウ族も集落周辺には見張りを立てていたので事前に襲撃を察知して逃げ出していた。


「エスクワトルタの案内で他の拠点も見て回りましたが……どこも……」


「……ええ。奴らは逃げた拠点の方にまでやってきました。いくつか移動したのですがそれでもまだ追いかけてくるので最終的にここに逃げてきたのです」


 拠点に下がり、態勢を立て直してから反撃に出るつもりだったのであるが密猟者は拠点にまですぐさま迫ってきた。

 拠点を捨てて別の拠点に移って逃げていたのだが、その拠点にまで密猟者が追ってきたので仕方なく一部の人しか知らない滝裏の隠し拠点まで逃げたのである。


「疑問に思っていることがあります」


「なんでしょうか?」


「なぜ密猟者は簡単に拠点を見つけて追ってきたのでしょうか?」


 ずっとルシウスには謎だった。

 知っているエスクワトルタの案内がなければ拠点など見つけられはしない。


 それどころかスイロウ族が避難用に拠点を用意していたこともルシウスは知らなかった。

 避難用の拠点があり、さらにその場所や目印があることを密猟者が知っていなければ追いかけることもできないはずである。


「……我々も最初は謎でした。ですが少し前に偵察をしてくれた同胞が見つけました」


「何をですか?」


「…………情けない話ですが、裏切り者がいるのです」


 タラテスアダルは険しい顔をより険しくさせてため息をついた。


「密猟者と共にスイロウ族が一緒にいたのです」

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