協力を得よう2

「それに色々と一気に手を出しては犯罪の証拠を隠してしまうかもしれません」


 一斉に摘発すると言っても限界はある。

 どうしても全てを同時になど出来ない以上後回しにされてしまう組織も出てくる。


 そうなったら犯罪組織は自分たちの組織が捕まらないように犯罪の証拠を隠蔽しようと動き出す。

 違法なものを隠し、資料などは燃やす。


 危ないことをしている構成員なども姿をくらまし、捕まえている奴隷などは隠せないなら処分されてしまう可能性だってある。

 犯罪組織だからで簡単に手を出しちゃいけないのである。


「誰でも悪いことは隠そうとするものです。パージヴェルさんがリンディアさんにリンデランのことを隠そうとしたみたいに」


「ぬぉっ……」


 リンデランが誘拐された事件でパージヴェルが慎重さを失ったために結果的にリンデランを危険に晒した。

 パージヴェルはリンデランを助け出したことのみをリンディアに話して危険に晒したことは隠していた。


 最終的に容易くリンディアに看破されて怒られるのだけどやはり人間後ろめたいことがあるとそれを隠そうとするのである。

 そしてこの言葉にはもう一つメッセージが。


 慎重さを失ってはならないと暗に伝えているのである。

 リンデランの時もパージヴェルがもっと冷静になって来てくれていればジは死にかけずに済んだかもしれない。


 ジに見つめられてパージヴェルもジの言いたいことを理解する。


「そうだな……」


 自分よりはるかに年下の子供が冷静に考えている。

 パージヴェルもジの目を見ていたら冷静さを取り戻してきた。


 リンデランの件以来犯罪組織に対する嫌悪感が強すぎる。

 元々好き嫌いがはっきりとしていて嫌いなものは許し難いような性格をしている。


 好きなリンデランが人さらいに巻き込まれたことで犯罪組織を敵視しすぎていたとパージヴェルもジに諭されて反省した。

 パージヴェルがリンディアほどでなくてもジにもあまり頭が上がらないのもこの状況にはよかった。


「悪かった。事を急ぎすぎた考えをしていた」


 ジの後ろで執事がニッコリとしている。

 ある意味状況を上手くコントロールしたのはこの人かもしれない。


 パージヴェルも自分の非を認めて謝罪を出来る度量がある人ではある。

 そんなことも出来ない貴族も多いので十分立派な資質である。


「だが事態も切迫しているのだろう? さらわれた時からもう時間が経っている……悠長にしている暇はないだろう」


「そうですね。なので俺の方でも調べて目星をつけてみました」


「それが今訪ねてきたワケか」


 ジはうなずいて目星をつけた犯罪組織の説明をする。

 人身売買の疑いがある組織であり、奴隷を買っていると思われるイグノックスと繋がりがある。


 イグノックスも新しく部屋を掃除させたり、ここ数日気分が良さそうにしているなどの変化や犯罪組織側からの接触があったことなど怪しい部分が多いことを伝えた。


「……確証はありませんが可能性はありますね」


 情報の出どころは気になりつつも今の優先はそこを気にすることではない。

 セードナーは疑問を頭の隅に追いやってジの集めてきた情報に感心していた。


 ジが目をついている犯罪組織は国の方でも目をつけていた。

 最近台頭してきてかなり無理なこともしていて裏で証拠を集めているところだった。


「こちらの犯罪組織なら我々の方も喜んで協力いたしましょう」


 踏み込めるほどの証拠はある。

 おそらく踏み込んでしまえば他の証拠も見つけられるだろうから摘発しても問題になることはないとセードナーは頭の中で計算を始めていた。


 むしろこの機会に踏み込んでしまえば都合がいいかもしれない。

 なぜなのか上からよく協力する様にとも言われているので非常に良いラインの相手であると思った。


「まあ違ったらこっちで」


「……軽くおっしゃいますね」


 容疑が濃厚なのは最初に言った犯罪組織であるが候補としてはもう一つ目星をつけている犯罪組織もある。

 ちゃっかりとそちらの方も提示するとセードナーは困ったように笑っていた。

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