奇妙なデュラハン4

 さらにジたちが強いことも分かっている。

 これ以上増えられては厳しいと判断し、確実に倒せるように封じ込めてきた。


「俺たちだけなら倒せるとでも?」


 しかしグルゼイは鼻で笑う。

 舐められたものである。


 4人それぞれ分断されて各個撃破でもされるならともかくデュラハンは自分で自分を逃げられなくしただけ。

 毒が効かないというアンデッド系統の特性上グルゼイが得意とする相手では決してないが4人ならば何とかなると考えている。


 むしろ好機かもしれない。


「弟子よ、遅れずについて来い」


「2人とも行くぞ!」


 グルゼイがデュラハンに向かって走り出し、ジたちもそれに続く。

 危険と消耗を避けるために4人で代わる代わる攻撃を仕掛ける。


 デュラハンも4人の連携攻撃を上手く防御する。

 魔法を使ったり、あるいは時に防ぐことを捨てて反撃に出たりとなかなか読みきれない行動にヒヤリとさせられることもある。


 鎧の体に傷は増えるが一切効いている気配がない。


「クッ!」


「ふっ!」


 ニノサンの剣を防ぐのをやめて相打ちのように反撃を繰り出してきた。

 それをグルゼイが巧みに受け流す。


「どうすりゃいいんだ……!」


 まだジたちにも体力の余裕はある。

 戦いとしてもジたちの方が有利に進んでいるけれどデュラハンに対する決定打を見出せないでいる。


 今現在有利というだけで一撃でも食らえばあっという間にやられるのはジたちの方なのだ。

 このまま戦い続けて体力が底をついてしまうと負けてしまう。


 早めにデュラハンを倒す手を打たねばならない。

 そうした焦りがジの中にあった。


「何で出来てるんだか……」


 一瞬の隙をついてグルゼイが魔力を込めた剣でデュラハンの肩を切りつけた。

 普通なら腕が切り落とされているところであるのにデュラハンの肩には少し深めの傷がついただけだった。


 多少の鎧ぐらいなら切り裂く自信もあるのにここまで硬いと骨が折れそうだとグルゼイも顔をしかめる。


「うっ!」


「リアーネ!」


「大丈夫だ!」


 デュラハンの剣をまともに受けて止めてしまってリアーネが地面を転がる。

 疲れ知らずのデュラハンのパワーは全く衰えない。


 しかもデュラハンの方もジたちの動きに少しずつ対応し始めている。


「これならどうだ!」


 ジとグルゼイが同時に攻撃を仕掛けてデュラハンが防御する。

 その隙をついてニノサンが手を伸ばして魔法を使う。


 一瞬まばゆい閃光がほとばしり、デュラハンがぶっ飛んでいく。

 物理攻撃が効かないのなら魔法攻撃はどうだ。


 乱れ始めた息を整えながらデュラハンの様子をうかがう。


「あんまり効いてなさそう……」


 デュラハンはゆっくりと立ち上がった。

 魔法が直撃したところがわずかにへこんでいるぐらいで変化は見られない。


「どうしたら……」


「頭……!」


「えっ?」


「頭を狙って!」


「ソ、ソコ!?」


 どうすれば倒せるのか。

 焦りが大きくなり始めたジの耳にソコの声が聞こえてきた。


 振り返るとどうやったのか知らないがデュラハンが張ったドーム状の結界の中にソコが入ってきていた。

 ジはすぐにピンときた。


 ソコだけど、ソコじゃない。

 少し高めでやや女の子っぽい喋り方。


 先ほどソコに乗り移ったかのように殺してくれと泣いていた何かであるとジは察した。


「頭……」


「あの手に持ってるやつか?」


 なんとなく、みんな思ってはいた。

 けれどウツロで悲しげな目をした生々しい少女の頭部を攻撃することは心情的にためらわれていたのである。


「やるぞ」


 それに手を出さずに倒せるならその方がいいが必要ならやるしかない。

 グルゼイはデュラハンの頭に狙いを定めて再び戦い始める。


「君は下がっているんだ!」


 ジも走り出す。

 今のところデュラハンがソコの方に向かう気配はない。


 まずは先ほどまでと同じように戦いながら隙を狙う。


「なっ……お、グッ!」


 隙を狙ったニノサンの刃がデュラハンの頭に届きかけた。

 するとデュラハンはこれまでに見せなかったような無理矢理な動きで頭を守った。


 そしてまるで怒りを抱えたかのようにニノサンを攻撃し始める。


「らああっ!」


 ソコの言う通り頭がデュラハンの弱点だとリアーネも頭を狙う。


「大切なものならどこかにしまっておけ」


 みんなに頭を狙われるとデュラハンも防ぐことが難しい。

 グルゼイの剣がデュラハンの頭の頬をかすめて、デュラハンの手から頭がこぼれ落ちる。


「フィオス!」


 続けてリアーネが切り付けているのにデュラハンはそんなことを気にすることもなく頭を追いかける。

 このチャンスを逃してはならないとジは盾フィオスを頭に向かって投げつけた。


 空中でスライムに戻りながら飛んでいったフィオスはデュラハンよりも一瞬早く頭に到達した。

 フィオスは普段割と持ちやすい。

 

 けれどそれはフィオス自身がそうしてくれているだけで変幻自在なフィオスが本気になると掴むことも意外と難しい。

 デュラハンよりも先に頭を包み込んだフィオス。


 デュラハンが頭を掴んで持ち上げようとするがニュルンとフィオスが滑って頭を持ち上げることができない。

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