何の遺跡だったのか1
遺跡近くにある村に留まらせてもらうことになった。
以前の移籍調査の時も同じく滞在させてもらった村で今回も快く受け入れてくれた。
そこでゆっくりと休んでジたちは遺跡に向かった。
「ここからが遺跡になります」
「ここが遺跡か」
「遺跡というより野ざらしの階段ですね」
遺跡だと紹介された場所にあったのは地下に降りていく階段があるだけであった。
もっと何か古代の痕跡を感じる何かがあるのかと期待していたのだけど今のところそのような痕跡っぽいものは見当たらなかった。
ちょっとがっかり、と思ったけどそもそも長いこと見つかっていなかった遺跡なので痕跡のようなものがないのも当然の話である。
「すでに入れるところは調査をしていて罠などは無いと思いますがまだ生きている罠がないと断定することもできませんので気をつけてください」
バジリトが改めて注意事項を確認して遺跡に下りていく。
地下にある遺跡なのでもちろん光など届かない。
ランプや松明に火をつけて明かりを確保する。
途中の壁に松明を差しておけるところがあって以前の調査で差した松明がある。
そこに火も点けながら下りていく。
多少燃料などはもったいないがいざという時の明かりや目印になる。
ジたち4人の中ではニノサンが松明を持って先頭を行き、次にジ、ソコと続いてリアーネが1番後ろを担当していた。
松明の明かりがあっても暗い。
ジは最大限魔力の感知を広げて周りを警戒する。
階段を下りる度に胸に抱えたフィオスがプルンプルンと揺れる。
今のところ驚異的な存在を感じないのかフィオスも警戒をしていない。
地下のためかやや空気は埃っぽい。
歴史的には古いはずなのに壁などはまだ綺麗だった。
壊れそうな様子もなく丈夫に造られている。
鍵が必要となるところまで真っ直ぐに向かっていく。
「ここも何の場所なのか分かっていないのです」
ジたちの後ろを行くモーメッマが口を開く。
鍵がなくとも行けるところはほとんど調べた。
しかし残されているものもなくここが何の施設だったのかいまだに不明なのである。
この遺跡の入り口も実は草が生い茂っていてほとんど見えないぐらいだった。
調査するにあたって周辺の草を刈って見やすくしていたのである。
「ここが例の鍵が必要なところです」
バジリトが松明を少し上げて部屋を照らす。
広めの部屋の奥側の壁に不自然に丸くへこんだところがあり、その中に8つの窪みがある。
「何があるか分かりません。
皆さん少し離れていてください」
バジリトが窪みの前に立ち、ジたちは少し距離を空けてその様子を窺う。
丸いへこみの横にある台に松明を差し込んで懐から袋を取り出す。
そして1つ1つ石の鍵を窪みにはめ込んでいく。
最後にジが露店で見つけた石の鍵をバジリトがはめ込んだ。
その瞬間石の鍵がポワッと淡く光った。
遺跡全体が揺れ始める。
そして壁がゆっくりと横に開いていく。
「やはりあれが鍵だったのですね」
感心したようにバジリトがつぶやく。
「ここから先は未知の領域です。
より警戒をお願いします」
ここまでは何回か調査したところなので少し余裕があった。
しかしまた知らないところに足を踏み入れるということでみんな気を引き締める。
ジもフィオスに盾になってもらって何が起きても対応出来るようにしておく。
通路は広いので非戦闘系の人を囲むようにして進んでいく。
ジは魔力感知を最大限に広げる。
魔力感知を極めて視覚に頼らずに周りを視ることができるようになると少しの違和感も気づくようになることができる。
ここまでの途中にも罠の痕跡っぽいものはあった。
けれどこの通路にはそうした罠のようなものは感知できない。
通路を進み、最初に見つけた部屋に入ってみる。
「資料室……何かの管理を行なっていたところでしょうか?」
その部屋には古ぼけたデスクや棚が置いてある。
ほとんどものはないけれどいくつか紙の資料のようなものが残されている。
「けれどダメですね……」
学者たちが資料を回収しようとしたけれど触れただけで紙はボロボロと崩れてしまう。
長いこと管理されていなかったのでもはや見た目上の形を保っているだけだけだったのである。
デスクも調べてみるが小物があるだけで特に何かが分かるような物はない。
物から何か分かることはなかった。
けれど棚やデスクの量と比較して残されている本などの量が少なすぎる。
物が少ないことから使用されていた状態から放置されたのではなくどこかの段階で使われなくなって物を引き上げたのではないかとモーメッマは推測した。
どうにも家のような雰囲気はない。
デスクや棚、資料のような物があることから作業場だったのかもしれないと考えた。
遺跡の構造を軽く紙に書き写し、また探索を再開する。
「なんなんだここは……」
部屋を照らすように松明を高く掲げたバジリトが顔をしかめた。
次の部屋かなり広かった。
先ほどの部屋と打って変わって何もない。
デスクや棚なんかはなく、ただただ広い部屋なのである。
しかし異常なこともあった。
部屋中傷だらけなのである。
壁、床、天井に至るまで大小様々な傷跡が残っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます