遺跡と悪夢2
「んー……なんだか夢は鮮明になった気がするんだけどどんな内容だったのか思い出せないんだ」
「そうですか。
悪夢を覚えておくのも楽なことではないので無理もないですね。
ですが鮮明になったと言うことはやはり呪いの対象に近づいているということでしょう」
モーメッマとしてもソコにかけられた呪いは興味深い。
人の意識を奪い、無理矢理操るなんてこと今の世の中では絶対に許される魔道具ではない。
さらに効果としても強力であるので必要な魔力や素材も一般的に揃えられるものではなく国家規模の予算が必要になりそうだとモーメッマは見ていた。
つまりは国ほどのお金や人材を持つ何者かが作ったものになるのだがそんなに多くのものをかけて操りたいものとは何なのか。
それだけのお金があれば魔道具などなくても大概の人は従わせることも出来るはずである。
わざわざ呪いまでかけて強制的に人を従わせたいなど非効率的すぎる。
疑問は尽きない。
「この国にある遺跡はいつのものとか分かってるんですか?」
「いつ頃のものなのかは分かりません。
不思議なことに資料なども残っておらず完全に忘れられた文明のようです」
「モンタールシュがここに出来る前から遺跡はあったようで中には隣国の一部にも同じ時代のものと思われる遺跡があるんです。
我々遺跡研究所はこうした遺跡の謎を解明するために日々調査を進めているのです」
「今回のような呪いの魔道具が出たのは公式的には初めてらしいのですが広く遺跡は存在している上に盗掘も多かったので他にも似たような魔道具があったのか把握はしきれていません」
「そういえばその魔道具はどうなったんですか?」
これだけ話題に上っていながら肝心の呪いの魔道具なるものを見たことがないなとジは思った。
別に見なくてもいいのだけど今どうなっているのかちょっと気になった。
「この研究所にありますよ」
「あ、そうなんですか」
「ええ。
盗掘団が確保された時に国の方で押収して、協議の結果研究調査のためにこちらの研究所で引き取ることになったのです。
危険な魔道具ですので誰の手にも触れないように厳重に管理されています」
呪いの魔道具は一定期間ジたちの国で保管されていたが遺跡にも関わるものでもあるかもしれないのでモンタールシュに引き渡されていた。
モーメッマもいるので遺跡研究所が責任を持って呪いの魔道具を管理している。
「……バジリトさん、ソコさんに呪いの魔道具を見せてもいいですか?」
「なんですと?」
モーメッマのいきなりの提案にバジリトが片方の眉を吊り上げた。
「もしかしたらソコさんに何か変化があるかもしれませんし」
「ふぅーむ……」
「見るだけで触れることもしません。
私もそばにいるので」
「……分かりました」
実際のところソコのためには遺跡を調査しなければいけないというわけではない。
ソコは呪いの魔道具の影響でソコよりも前に呪いにかけられた人と潜在意識で繋がってしまっている。
そのために呪いにかけられた人の苦しみがソコに伝わって、苦しみが悪夢として現れるのである。
なのでソコを助けるためにはソコの前に呪いにかけらた人を探し出して助けてあげればいいのだ。
そのためのヒントが何もないので今のところは遺跡の調査をして調べようという話なのである。
もしかしたら呪いの魔道具を見れば何かヒントが得られるかもしれない。
モーメッマの提案で呪いの魔道具を見せてもらうことになった。
「危険物倉庫……」
ドアの上に危険物倉庫、立ち入り厳禁と書かれている。
太い鎖で施錠されていてバジリトが頑丈そうな南京錠に鍵を差し込んで開ける。
そしてさらにドアの鍵も開ける。
「中の物にはお手を触れないようにお願いしますね」
ゆっくりとドアを開ける。
中には大きな棚が並んでいて色々なものが並んでいる。
「ここにあるのは発掘で見つかったものだけでなく犯罪に使われたものなどもあります」
「あの奥にあるあれがソコさんに使われた魔道具です」
「なんだアレ……」
一目見た印象は気持ち悪い。
危険物倉庫の奥側の棚の真ん中に鎖で固定された魔道具が置いてあった。
魔道具の見た目はまるで手のようであった。
腕を肘から先で切り落としたような形をしている。
中途半端に焼け焦げた手のようで気味の悪さを感じてジは眉をひそめた。
魔道具というよりも火事の中に残された腕のようだ。
「あの手のところを頭に乗せて使うようで……」
「あ……ああ……」
「ソコ?」
よくあんな物を拾ったなとジは思う。
そもそもどうやって使うのかも見た目から分からないのに盗掘団はどうやってあれが洗脳の魔道具だと知ったのだろうと不思議である。
さっさと部屋を出ようと思っているとソコが小さく声を漏らした。
振り返るとソコは顔を真っ青にしてゆっくりと後ずさっていた。
少しずつ目が虚ろになっていき、ソコの足がもつれて尻餅をつく。
「ソコ、大丈夫か?」
どう見ても様子がおかしい。
抱きしめるようにして腕を掴んで小さくなって震え出す。
「あぁ……」
悪夢を見て起き上がった直後のような目をしているとジは気がついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます