モンタールシュにご到着2
香辛料で味付けすることで魚の臭みも消してくれて味付けも濃いめなので食べやすいだろうと思った。
持ち帰ってみていろいろと試してみよう。
「この国は初めてかな?」
「ああ、はい」
食事を楽しんでいると近くの席に座っていた男性が話しかけてきた。
日に焼けたような色黒の年配の男性であるが白っぽい髪を後ろで結わえていて肌艶もよくて非常に健康的に見えた。
一瞬うるさかったかなと思ったが歯を見せてニコリと笑っているのを見るに不愉快に思って声をかけてきたわけではなさそうであった。
ジはイスコに視線を送る。
一応責任者としてはジになるけれどこの場においてジが対応するのは少しおかしい。
だから代表して代わりにイスコに対応してもらう。
男性は少し驚いたような顔をみせたがすぐにまた笑顔を浮かべる。
「この国の料理を楽しんでくれているようでよかったよ」
男性が手を上げると店員が飛んでくる。
「彼らにあれを出してあげてくれないか」
「分かりました」
なんだろうと思っていると店員が料理をジたちのテーブルに運んできた。
「これは何ですか?」
「これはこのお店の名物でな。
普段なら運がよくないとないんだが今日はあると聞いていたんだ。
是非ともこの国を楽しんでほしいから食べてほしい」
「そんな……悪いですよ」
「いやいや、食べてください。
私はいつでも食べに来られますから」
料理を見てみると野菜やお肉を煮込んだものでスパイシーな香りがしていた。
イスコがジを見る。
どうしたらと迷うがタとケは目を輝かせて料理を見ている。
食べたそうにしているのでここは受け入れた方が相手にも失礼にならないだろう。
ジがイスコにうなずき返す。
「ではいただきます。
ありがとうございます」
「楽しんでほしい。
他にもこの国にはいろいろあるから滞在するつもりなら食べていくと良い」
「ええ、そうさせてもらいます。
あ、そうだ。
お名前聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」
少しばかり押し付けるような感じは否めないが貴重な料理を譲ってくれた恩人には違いない。
これから会うこともないだろうけど名前も聞かずにいるのでは失礼だろう。
「ブラーダと呼んでくれ」
「ブラーダさん、ありがとうございました」
「いきなりすまなかったな」
豪快に笑ってブラーダは席に戻っていった。
「ジ兄、これ美味しいよ!」
「んーふー!」
タとケは一口食べてほっぺたを押さえる。
よほど美味しいらしく顔が赤らんでいる。
「これは私も初めて知りました」
イスコも出してもらった料理を食べて驚いている。
何回か通っているがこうした料理があるのは初めて知った。
非常に美味しくて知らなかったのが悔しいぐらいに思えた。
「お代はすでにいただいております」
「えっ?」
食事を終えて店を出ようとしたら店員に支払いはいらないと断られた。
なんでも先に店を出たブラーダが払ってくれたらしい。
全くそれに気づくこともできなかった。
豪快でありながらスマート。
いったい何者なんだあの爺さんとジとイスコは顔を見合わせた。
「この国の人はみんなあんななのか?」
「いえ、そんなことは。
あのブラーダさんという方が特別良い人でしたね」
「ふぅーん。
あの店の常連みたいだし、それに……」
あのブラーダには護衛がいたとジは思う。
ブラーダの席にいた若い人は料理にも手を付けず、常に回りを警戒していたし感じるは力強かった。
店員もブラーダに接するときはなんだか緊張した様子に見えた。
もしかしたら偉い人だったのかもしれないなと思った。
珍しい料理までもらってお代まで払ってくれたのだから悪いことはないと思うけれど急になんで目をつけられたのかは気になってしまう。
ただいくら考えても分かるはずもない。
多少モヤッとした気持ちはあるけれど純粋な厚意だったのだろうととりあえず考えることにしておいた。
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