ちょっと損な性格2

 ジたちだけならやろうと言っていたかもしれない。

 ただ今はタとケやソコもいるので簡単にやるなどと言えない。


「……ではどうでしょう、もう少し山賊のことを調べてみては。

 相手の人数や規模も分からないのに倒す算段も立てられないでしょう。


 もし小規模で倒せそうなら倒してしまってもよいかもしれません」


「ビガシュさん……」


「どの道我々はジさんが行くところにはついていかねばなりませんからね。

 大規模でとても手が出せそうになかったら私の方から然るべきところに手紙を出しておきましょう。


 きっと動いてくれるはずです」


 ビガシュが知って手紙を出したということはジも当然知っているということになる。

 おそらく国の方でも問題を重たくとらえて素早く動くはずである。


「まだ時間にも余裕があります。

 先に我々が向かい、タさんやケさんなどはこちらの宿で待っていてもらってもいいかもしれません」


「そうですね……じゃあとりあえず山賊の情報を集めましょうか」


「これから食料品の買い出しに向かうのでその時に少し聞いて回ってみます」


「よろしくお願いします」


 真面目で仕事もできるし正義感もある。

 良い人をつけてくれたものだ。


 細々したことはビガシュに任せてジはあてがわれた部屋のベッドに横になった。

 アラクネノネドコを使ったベッドには遠く及ばないがそんなに悪いものじゃない。


 少し眠ってしまっている間にビガシュが買い出しを終えて帰ってきていた。

 その間に村の人に話を聞いてくれていた。


「山賊ですがおよそ20人ほどの規模で山の中に柵で囲まれた山砦を築いて生活しています。

 そこに人質もいるようです」


 グルゼイを始めとしたジ側の人と騎士たちを部屋に集めて山賊の情報を共有する。

 いつ来たのかも分からないが気づいたら山の中に家を建て、それを高い柵で囲んで自分たちのものにしていた。


 山賊は山を管理しているのは自分たちで当然だとその山にある道も自分たちのものだから通るのにお金を払えという無茶苦茶な理論で通行料を要求している。

 払わなきゃ襲いかかってきて殺しはしないが痛めつけられた挙句に金目のものは全て持っていかれる。


 さらには同じ理論を振りかざして周辺の村に管理料を要求し、拒否した村から人質まで取っていた。


「聞けば聞くほどにクズの集まりだな」


 リアーネが吐き捨てるように言った。

 無茶苦茶な理論を建前にして力で弱者を搾取する山賊の話に軽蔑の表情を浮かべる。


「規模としては小さくもなければ大きくもないですね。

 特別強い人もいなさそうですがやはり数の暴力はありますね。


 聞けた話としてはこれぐらいでした」


「ありがとうございます」


「それでどうなさいますか?」


 微妙なラインだとビガシュは思う。

 騎士たちだけならキツイ。


 実力は知らないけれどグルゼイ、リアーネ、ニノサンの3人が加わってくれれば勝ち目もありそうだなんて考えていた。

 判断をあおいでビガシュがジに目を向ける。


 ジは少し考え込む。

 20人ぐらいなら騎士も含めてみんなで戦えば倒せない相手の数ではない。


 けれどリスクがないわけではない。

 誰かにケガされたりするのは嫌だ。


「やるのだろう?」


「……師匠」


 人質だって今もきっと怖い思いをしている。

 今助けてあげられるのが1番で悩んでいたらグルゼイが口を開いた。


「やりもしないこと、出来もしないことでお前は悩んだりしないだろう。

 ならばやるのだろう。


 悩むならどうやるか悩むんだ」


 諦める理由があるならジはとっくにそれを見つけて諦めている。

 諦めていないのならジはやる。


 こうなればやるやらないで悩むことは時間の無駄。

 やると考えて方法を模索して、それでもダメそうなら諦めればいい。


 グルゼイのどことなく優しさを感じさせる瞳がジを真っ直ぐに見ていた。


「そう、ですね」


 やらない理由を探しているようでどこか誰もケガをしないで完璧に倒す方法を考えていた。

 結局のところ山賊のことをジは無視して進むことなどできないのである。


 一度やると振り切って方法を考えてみよう。

 仮に思いつかなくてもみんなで戦えば山賊だって倒せる。


「何かいい手はないかな……」


 考え込んで無意識のうちにジは膝に乗せていたフィオスを触っていた。

 されるがままにフィオスはジの手によって形を変えていく。


「例えば相手の気を逸らすとか、いっぺんに全員と戦わないようにするだけでもかなり違って来ると思います」


 ジはやるだろうとニノサンは思っていた。

 だから頭の片隅ですでに山賊と戦う方法を考え始めていた。


「めんどくせーこと言わないで正面から全員叩き潰せばいいんだよ」


「それではあなたも山賊レベルですよ」


「なんだと!

 たかだか山賊にビビってんのか?」


「ふっ、20人程度などあなたには無理でも私には容易い相手ですよ。

 ですが主人を危険に晒すわけにはいきませんから」


「ならお前1人で行ってこいよ。

 こっちは安全なところで待っててやるから」


「主人に心配をかけるのもよろしくないでしょう?」


 なぜかいがみ合うリアーネとニノサン。

 ニノサンは何事も完璧にこなそうとするタイプで、リアーネはちょっとワイルド。


 ジを思っている点で同じなので仲は悪くないけど時々こうして衝突する。

 性格的にはニノサンとユディットの方が近い感じがある。

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