商品開発会議2
「んじゃまあそっちの仕事は任せるよ。
いくつかの家には俺も同行するからスケジュールが決まったら教えて」
「分かりました」
「じゃあ次は防水液の方はどうなってる?」
「はい、では私が」
今度はクトゥワが立ち上がる。
研究についてはクトゥワとキーケックに基本は任せている。
無理な範囲でなきゃお金も自由に使っていいし細かく進歩を聞くこともしない。
時にジも手伝ったりしているとのびのびと研究をしているようだった。
ヒスも今や完璧な研究組の一員なのだけれど今日はお休みでお友達と出かけている。
「防水液の方ですが採取は直接掻き取るというのが良さそうです。
水に溶けにくくしっかりと混ぜてやれば混ざりますが採取方法として水に入れて溶かし込むのは難しいです。
続いて防水液としての利用ですが防水液の濃度や厚さ、乾燥時間や方法、塗る材質などさまざまに条件を変えて実験しました。
それぞれ材質によって多少は異なりますが今回は布製品をメインに考えているということで布に関して良さそうな条件をいくつか絞りました」
「なるほど……パロモリ液とはどう?」
防水液単体でも利用はできるだろうけど耐火、耐熱効果のあるパロモリ液と併用できたらシナジーが生まれる。
「そちらの方も色々試しています。
裏表両側に塗ってみたり重ね塗り、パロモリ液と防水液を混ぜた混合液など試してみました。
今のところ1番効果がありそうなのは両面に塗るパターンですね」
カエルも今のところ1匹しかいないので防水液の量産体制も整っていない。
その中でどうにか防水液のやりくりをしながらパロモリ液との併用もクトゥワは研究してくれていてた。
こちらも色々と問題がある。
パロモリ液が水に弱いという弱点を防水液でなんとかしようというのだけどそもそも防水液も水で薄めて使うので半分水なのである。
重ね塗りをしてパロモリ液が濡れることを防ぎたいのだけど防水液を塗るのに濡れてしまってパロモリ液がダメになるなんてことが発生するのである。
やはり対策としては同じ面に液を塗ることは諦めた方がよさそうだった。
それで問題ない場合も多いのだけどそうすると水に濡らしてはいけない面が出来てしまうのが多少面倒であった。
「そこで少し考えてみたのです」
「おっ、何かある?」
クトゥワがニヤリと笑った。
「挟み込んでしまうのはどうでしょうか?」
「挟み込む?」
「両側に塗ることの応用になります。
それぞれの面にパロモリ液と防水液を塗り、パロモリ液の面にまた布をかぶせてしまうのです。
そしてまたかぶせた布にも防水液を塗ればパロモリ液の断熱効果をもちながら防水液の面でパロモリ液を封じ込めてしまえるはずです。
パンで具材でも挟むようなものです」
「ほぅ……面白いことを考えるものだ」
「なかなか良さそうな考えだな」
クトゥワの考えを聞いてノーヴィスが目を細めた。
ジもあごに手を当ててうんうんとうなずく。
一枚の布で完成させなきゃいけないと思い込んでいた。
クトゥワの言う通りパロモリ液の面を内側にして、防水液の面を外側に来るようにして縫い合わせれば防水かつ断熱の効果を持つ布が出来上がる。
「問題としましては布や防水液の消費が大きいことや布自体が厚くなってしまうことです」
「まあ少しずつ試してみよう。
焦ることはないし両側に塗っても大丈夫な場合も多いはずだ」
「ありがとうございます」
「ということで次ぃ!
本日のメインだ!」
商会の会議室ではなくわざわざ工房に集まったのには訳がある。
「健康は睡眠から。
アラクネノネドコお試し会!」
「なんだか気合入ってますね、会長」
「……寝る環境ってのは大事だからな。
よーい!」
「はい!」
ジの命令でユディットたちがせっせと何かを運び込んできた。
白いの布に包まれた大きめの板のようなもの。
「これからアラクネノネドコお試し会を開催します!
遠慮なく意見を言ってください!」
運び込まれてきたのはユディットたちの魔獣であるクモが作り出すクモノイタの大きいバージョンであった。
サイズは人が寝られるほどであり、以前にクトゥワがお試しで作ったものを本格的に寝具として使えないかと製品化してみたのである。
防水液の方はまだ名前も定まっていないがこちらの方はもう名前も決まっていてアラクネノネドコという。
会議室で試すにはいちいち運び込んだりして交換して試さなきゃいけないので一度に複数置ける広い場所として工房を選んだのである。
寝具は大事。
歳をとるほどにそう思った。
若い時は地面に寝てたってなんともなかったのに歳を取ってからそんなことしてしまうと1日体に痛みを引きずることになる。
過去でも死ぬ寸前の寝具だってようやくマトモぐらいのひどい人生だった。
今はお金もできたので少しばかりちゃんとしたの使っているけれどより良いものがあるなら今から準備しておくのがいい。
それにお試しで以前寝てみたことがあるがこれが意外といいのである。
しかし個人の好みというものもある。
本格的に製品として売り出すのにもいくつかに絞って売らねばならない。
そこでみんなに試してもらって良さそうなものを選ぼうというのである。
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