キックコッコ飼育計画2
基本的にはパムパムも1階にいるだろうから防犯にもなる。
我ながら結構いい考えなのではないかとジは思う。
「問題はどこの家を買うかだな」
貧民街の人はなかなかたくましい。
多分ジの近くの家の人は声をかければ家を買える。
「あとはやらなきゃいけないこともあるしな……」
ジは窓を見た。
うっすらと窓は白くなっている。
ジが住んでいる首都でも季節の移ろいというものがある。
見た目にこれと分かるような変化は少ないが気温に関して暑かったり寒かったりの変化はそれなりにあるのだ。
外は昼も近づいているというのに気温が低めで、ジは暖炉に火を入れて部屋を暖めていた。
「まあ身内の心配はいらないしな」
何年かに一回首都にも強い寒波が来襲する。
寒いな程度のこともあれば災害クラスのこともある。
記憶が曖昧でこの時期に強い寒波が来ていたと確定することは出来ないけれど備えはしておく。
少なくとも気温は低めで寒波がやってくる気配はしているのだから。
しかしある程度の備えはある。
なぜなら良いダンジョンを見つけたからだ。
パムパムの巣近くにあるトレントダンジョンはよく木の棒や油の出る種が取れる。
どちらも燃やすのにもちょうど良くてジは何回かダンジョンに潜って枝や種を集めておいた。
枝は暖房に、油は明かりや食品として使える。
とりあえず燃料は寒い時期を越えるだけの量はある。
足りなかったらまたダンジョンに潜るなんてこともできる。
「ユディット」
「はい、会長」
「悪いけどヒを呼んできてくれないか?」
「承知いたしました」
ジはテーブルに広げた計画書をまとめながらユディットに指示を出す。
ダンジョンを攻略してからというものユディットは少し自信を取り戻していた。
ツリーナイトも倒してジに良いところをアピールできたからである。
自分こそがジの右腕たる忠誠の騎士であると改めてやる気を出していた。
「美味いか、フィオス?」
テーブルの上にいるフィオスはお茶の入ったカップの上に覆い被っている。
ジがユディットと取ってきたお茶で今でも定期的に取りに行ったりもしている。
アツアツのお茶をフィオスは少しずつ飲んでいる。
ジがフィオスをつつくと体がプルンと波打って揺れる。
不思議なもので暑い時には冷たく感じることも多いフィオスはこう寒くなってくるとほんのりと温かいように感じることが増えてくる。
過去には凍えそうになりながら薄い布団をかぶってフィオスを抱えてなんとかその日を乗り切ったものだ。
その時もフィオスのほんのりとした温かさに救われたことを今思い出した。
「呼んできました」
程なくしてユディットがヒを連れて戻ってきた。
「お、お呼びでふか?
おお、お呼びですか?」
未だにアワアワとすることも多いがヒもだいぶ環境やジに慣れてきた。
「パムパムを呼んでくれないか?」
「分かりました!」
ジに言われた通りにパムパムを呼び出す。
「コ、ケェ」
翼を広げで不思議なポージングを見せるパムパムが呼び出された。
良いんだけど一々ポーズをとる不思議なキックコッコである。
「パムパム、一応大体の計画が固まって……」
ジはパムパムに計画を説明する。
家を買い取ってそこにパムパムたちを住まわせる。
もっと言えばその家から繋がる形で囲まれた簡単な放牧スペースも隣の家を壊すなりして作りたい。
そうしたジの説明をパムパムは真剣な眼差しで聞いている。
「こんな感じでどうだ?」
同じく話を聞いていたユディットは大きくうなずいた。
なんと素晴らしい計画だろうか。
他人の魔獣、さらには魔獣ですらない魔物たちのためにここまで真剣になれるジのことをユディットはとても尊敬している。
さらにそれを商売につなげて利益まで回収できるとなると自分の主人は天才だと吹聴して回りたい気分にもなるものだ。
ジはやめてくれというだろう。
だからやらないけどユディットはそんなジの騎士になれたことが誇らしかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます