第九章
キックコッコ飼育計画1
魔獣外魔物特別飼育法という法律がある。
あんまり多くの人には知られていない法律でそれを利用しようとする人は年に1人もいない。
魔獣外魔物とは要するに野生の魔物のこと。
つまりは魔獣でない野生の魔物を飼育する時の法律、という事である。
どうしてそんなものの事をジが知っているのかというと調べたから。
もっというとフェッツに教えてもらった。
なぜ教えてもらう必要があったのか。
それはパムパムのためである。
パムパムにお願いされたダンジョン攻略は見事に成功した。
しかしパムパムが期待していたのは攻略によってダンジョンが消えることであり、それによってメスのキックコッコたちが平穏無事に暮らせることであった。
ダンジョンは消滅しなかった。
そのためにパムパムたちはまたダンジョンブレイクなどの危険やダンジョンを見つけた冒険者などの危険にさらされることになった。
なのでジはどうにかできないかと考えた。
ただでキックコッコたちを匿うことはできない。
そこでパムパムがダンジョンを攻略するたびにくれていた卵に目をつけた。
ジの記憶には過去卵を産ませることを仕事にしている人がいた。
上手くいけばパムパムたちに安全な居場所を提供できるかもしれない。
そう思っていたのだけど何せ全くそうした方面に関しては素人で知識もない。
悩んだジはフェッツに相談してみたのである。
またとんでもない事業に手を出そうとしているとフェッツは大笑いしていた。
フェッツ自身も魔物の飼育事業など行ったことはなかった。
なので少し時間をかけて調べてくれてジに教えてくれたのである。
過去の事例があってどのようにやっていたのかぐらい分かれば良いなと考えていた。
けれどまさか法律まであって整備されているとは予想外であった。
ちゃんとした場所など定められた要件を満たしてとか年に一回報告したり監査を受けたりとか色々あるけれど要するに国の方が安心できるぐらいにちゃんとやりなさいってことらしい。
さらにはフェッツは以前にどのような人がどんな感じでやっていたのかも調べてくれた。
上位の魔物が下位の魔物に対して統制権を持っていることがあってそのような能力を活かして魔物を飼育して安定的に素材などを生産している人が世界にはいる。
他にも強力な獣系魔獣により弱い草食系の魔物を上手くコントロールして一定の範囲内に留めさせて擬似的に飼育しているような形を取っていたものもあった。
フェッツから渡された資料を見ると色んな人が色んなやり方を思いついているのだなと感心した。
中には魔物のコントロールに失敗して損害を出してしまった人もいた。
そうした人が出ないようにするために法律があるというわけなのだ。
「ドライアドによるマンドラゴラ管理……へぇ」
こんな事業もあるのだなと楽しく資料を読んでいた。
なんとなくどんな形でパムパムたちを迎え入れるかの想像は出来ていた。
というのも今現在ジの家の周辺の家はジが引き取っているのだけどそのためにさらにはその周辺の家の人までジに家を買わないかと持ちかけてくる。
そもそもそこに住んでいる人もその家の持ち主ではなく、持ち主がいないところに勝手に住み着いて我が物顔で使っているにすぎない。
ただで他人に取られるなら嫌だけどいくらかお金を出して買い取ってくれるなら出て行くこともやぶさかではない人が結構いるのだ。
ボロ屋となっている家でも家は家。
ジはこうしたものを買い取ってパムパムたちの家にしてしまおうと考えていた。
土地を買って囲いを作ってということも検討したけれど遠いと管理も大変だ。
家なら囲いとしてみれば完全に囲われている。
卵を守るのにもいい。
「あとは場所も欲しいんだよなぁ……」
ジは小さくため息をついた。
パムパムのこと以外にも急遽場所が必要になってしまった。
なぜなら盗掘団の持ち物がジに渡ることになったからである。
盗まれた品物は意外と多かった。
ソコと一緒に謝りながら返還作業はしたのだけど返せなかった物もある。
所有者不明の盗品が結構ある。
これにも理由があった。
何かを盗まれたなら届出をする。
そして盗まれたものをリストアップし、それを受けてジたちは返還作業をしていた。
しかし盗まれたものを公にしたくない人がいるのだ。
ソコが盗みに入った家のいくつかは盗まれたもののリストを出さず、それどころか泥棒なんてものも知らないとまで言うところがあった。
おそらく盗まれたものの中に調べられると厄介なものがあるのだろう。
返還作業そのものは今物の管理をしてくれている国の方でやってくれていたので国にそうした物を知られたくない、調べられたくない貴族がいたのである。
そのためにジの手元にもどこに返して良いか分からない物が残ることになってしまった。
そうした物をしまっておける場所が必要になってしまった。
処分しようにも一旦引き取らなきゃいけないらしくて面倒なことになったと少し頭を悩ませていた。
1階部分をコッコハウスとし、2階をお宝部屋にする。
一石二鳥な素晴らしい作戦である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます