またまたダンジョン3
ただトロールブロッサムの弱点はわかりやすい。
頭である。
今回寄生している花は見た目にも分かりやすく頭に生えているのだけど花は全身どこにでも生える可能性がある。
しかし変わらないことが一つある。
花は絶対に頭の中に根を張るのだ。
むしろそこが本体、弱点となるのである。
もっと強力に寄生するものには頭がなくても動かせるよなう奇妙な魔物もいるけど花はそこまで強力じゃない。
「凍りなさい!」
ジに殴りかかるトロールブロッサムに冷たい風が吹き付ける。
トロールブロッサムはそんなこと無視してジを殴りつけようとするがあっという間に体の表面が凍り始めて動きが鈍くなる。
「ユディット、左!」
「はい!」
トロールブロッサムが凍りついて動きが止まる。
その隙にジとユディットが攻勢に出る。
ユディットが左腕を、ジが右腕を狙う。
今度は止められないように魔力も多めに込めて勢いよく同時に腕を切り飛ばした。
「エ、頼むぞ!」
「任せなさい!」
エが杖を振るって炎の塊を飛ばす。
トロールブロッサムに飛んでいった炎の塊は空中で形を変えてまるでウルフの頭かのように口を開いた姿となった。
氷が割れてトロールブロッサムが動き出せるようになった時には炎のウルフが口を閉じようとしていた。
トロールブロッサムがみじろぎした。
それが腕でガードしようとしたのかのかもしれない。
けれど腕もなく、まだ足が凍りついたままの状態ではガードも回避もできない。
エの魔法がトロールブロッサムの頭を食いちぎりながら体を燃やしていく。
明らかに威力が高すぎるけどエもジに良いところを見せたかったからしょうがない。
消耗が激しいと見ればすぐに撤退するので仕留めきれないような威力であるよりはいい。
首がなくなったトロールブロッサムは膝から崩れ落ちて燃える。
やがてトロールブロッサムの死体が消えて魔石と山盛りの粉を残した。
「なんこれ?」
「トロールブロッサムの花を乾燥させて粉にしたものだな。
薬の材料なんかになるらしいな。
そのまんま舐めても鎮痛作用があるとか言うけど苦いらしいぞ」
「へぇ、物知りだな」
「私だって一人前の冒険者だからな」
誇らしげに笑うリアーネ。
なんだかんだジも博識でリアーネが驚かされるようなことが多い中でジのことを感心させられたのは嬉しい。
完全に他の冒険者の受け売りなのだけど必要なのは知っていることとそれを覚えていることである。
袋にでも入れて出してくれればいいのにと思いながら床に直盛りの粉をすくい上げて適当な袋に移しておく。
「いきなり面倒そうなのがきたな」
これまで出てきたドライウッドなどは油断しなきゃ1人でも問題ないような魔物だった。
トロールブロッサムはそこから考えると一気に強い魔物になった。
対象の方法を知っていれば1人でも倒せないことはないけど安全に倒そうと思うなら複数人でしっかりと連携を取る必要がある。
動きは単調で遅いので再生力があるというだけの話なので手慣れた冒険者なら悲しい事故が起こる可能性は高くないだろう。
「魔力は大丈夫か?」
「だいじょーぶ!」
「まだまだ余裕です!」
羨ましいなと思う。
ジがあのような魔法を使えばあっという間に魔力は無くなってしまう。
しかしエとリンデランにはまだ余裕がある。
魔法タイプだからということもあるのだけど練習もして魔獣とも絆を深めて魔力の量も増やしてきたのだ。
自分に出来ることを、とは思うけどやっぱりどこか羨ましく思う気持ちはあってしまう。
それを認めなかったり無視したりするから嫉妬に狂うのだ。
羨ましく思うことを認めて、自分に何が出来るかを見つめ直す。
そしてまた前に進んでみんなと肩を並べていけるように努力を重ねていくのだ。
「次は私にも戦わせてよ!」
ウルシュナもやる気を見せているしみんなにもまだまだ余裕がある。
もう少し先に進むことにした。
ドライウッドもまだ出るがちらちらとトロールブロッサムも出てきた。
「やああああっ!」
ここで活躍したのがウルシュナだった。
ウルシュナの武器は槍である。
切り裂こうと思えばジには敵わないけれど槍の強みは突きにある。
トロールブロッサムが腕を上げてガードの体勢を取る。
対するは槍を突き出そうとしているウルシュナ。
頭への一撃を防御しようとしていたのだろうけどウルシュナ槍は太いトロールブロッサムの腕の隙間をすり抜けて頭に到達した。
込められた魔力が刃先から放たれてトロールブロッサムの頭が吹き飛んだ。
「どんなもんだい!」
「すごいじゃないか、ウルシュナ!」
「へへへぇー!」
ジの行う魔力放出と同じ原理であるがウルシュナの方はより貫通力に特化している。
振り下ろした剣の軌跡に沿って短い斬撃を飛ばすようなジのやり方に対してウルシュナは槍の先から魔力を爆発させるように放って破壊力のある一撃を繰り出している。
トロールブロッサム相手にはウルシュナの正確無比な一撃がかなり有効である。
頭を破壊できればいいので槍を頭に当ててられればほとんどウルシュナの勝ちのようなものである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます