じわじわ攻略2

 迷路のようだとジは思った。

 いくつか行き止まりに突き当たり、行ったり来たりしながら地図を埋めていく。


「宝箱……ですかね?」


「宝箱だな」


「あやしー」


「まあ大体あんな風に置いてあったら罠だよな」


 部屋の真ん中に宝箱のようなものが置いてある部屋にたどり着いた。

 あからさまに宝箱なのだけど部屋には魔物もおらず、怪しさ満点である。


 こうした時はいくつかパターンがある。

 宝箱が偽物で何もないパターン。


 単なるガッカリポイントなだけで危険はない。

 宝箱は本物だけど何かがあるパターン。


 罠なり、いきなり魔物が出てきたりと危険なことがあることがある。

 最後は宝箱が魔物パターン。


 いわゆるミミックというやつで罠パターンに近い感じである。

 ただミミックを倒せばお宝的なものがドロップする可能性は高い。


 1番可能性として大きなものは罠であるパターンのものだ。

 宝箱が偽物で罠があるパターンもあるけどともかく何かの罠があることが大体のお決まりである。


「ここは私にお任せを!」


 ユディットが宝箱を開ける危険な役を引き受ける。

 リスクを避けるなら宝箱を無視することも選択肢としてあるけれど宝箱は男の子のロマンである。


 多少の危険は冒しても確かめたくなっちゃうのである。

 それに宝箱が本物か偽物か、あるいは罠の有無、さらには罠があった場合の罠の危険度によってこれからのダンジョンに対する見方も変わってくる。


 仮に即死級の罠が出てきたら攻略は中止する。

 見た目以上に危険なダンジョンであるかもしれないからだ。


 大したことない罠ならこのまま攻略続行。

 ユディットを先頭にして少し離れてリアーネ、さらにもう少し離れてジとエが続く。


 ゆっくりと警戒するように宝箱にユディットが近づいていく。

 宝箱に触れる他に行くまでにも罠があることもあるから警戒して近づかねばならない。


 けれど何事もなく宝箱の前まで来ることができた。


「いきますよ」


 ユディットが剣を抜いて宝箱に当てる。

 まずは少し押してみる。


 何ともない。

 続いて剣を差し込んで開けてみようとするのだけど上手くいかない。


 なので仕方なくユディットは剣で宝箱を開けることを諦めた。

 片手に剣を持ったまま逆の手を宝箱に伸ばす。


「あ、開けますよ!」


 ユディットが宝箱に手をかけてグッと力を入れて開けようとした瞬間だった。


「ユディット!」


「な、くっ!」


 天井から突然ツタが伸びてきた。

 まるで意志を持つように伸びてくるツタはユディットに向かっていく。


 ユディットも抵抗してツタを切り裂いたりしたのだがツタの数が多くて速く、瞬く間に絡め取られてしまう。


「う、うわー!」


「ユディット、大丈夫か!」


 シュルシュルとツタがユディットの体を空中にぶら下げる。

 体を這うように動いたツタはユディットを縛り上げて拘束した。


「え、ちょ!


 何これ!


 すごい恥ずかしい……!」


 単にグルグルと縛るだけではなかった。

 絡み合うようにユディットを縛り上げたツタは何故か六角形を形成してユディットの体をやや強調するような形で拘束したのだ。

 

 体の前面を下にして手足が上になるように拘束されたユディットは思わぬ拘束方法に顔を赤くする。


「ジ、出口が!」


 後ろを見ると入ってきた通路が木の根っこのようなもので塞がれていた。


「モンスタートラップだ!」


 天井から今度はツタの塊のようなものが落ちてきた。

 縦にも横にも人の大きさぐらいあるウニウニとツタの先を動かすそれはアイヴィーウィップという魔物であった。


「エ、俺の後ろに!」


 なんかゆらゆらと揺られているユディットを助けたいのは山々であるがまずは目の前の魔物に対処しなければならない。

 リアーネが剣で叩きつけるように伸ばされたアイヴィーウィップのツタを切り裂く。


「燃えちゃえ!」


 エが魔法を放つ。

 燃え盛る火の玉がアイヴィーウィップに直撃して燃える。


「よし……えっ!」


 けれどアイヴィーウィップもただ燃やされるだけじゃなかった。

 燃えた部分のツタを引きちぎってエに向かって投げ返してくる。


「やらせるかよ!」


 ジが割り込んで魔法を切る要領で燃え盛るツタを切ってエを守る。


「もっとデカい魔法を頼む!」


「分かった!」


「リアーネ、時間稼ぎを!」


「おう!」


「みんな、頑張って!」


 情けなく拘束されたユディットは声を出して応援することしかできない。

 もしみんなが負けてしまったらユディットは情けなく拘束されたままダンジョン中で朽ち果ててしまう。


 多少の必死さもあるのだ。


「おらっ!」


 あまり近づくと危険。

 リアーネは程よく距離を保ったまま伸びてくるツタを切り裂いてアイヴィーウィップの気をひく。


 ただ無茶はしない。

 ユディットのように拘束されるのはゴメンである。


 その間にエが魔力を高めて集中する。

 エが魔法を使おうとしていることに気がついたアイヴィーウィップがツタを伸ばしてくる。


「この変態ツタめ!」


 ユディットを見れば捕まればどんなことになるのか予想ができる。

 ジはエを守ってツタを切り裂く。


「いっくよー!」


 エが魔力を爆発させるようにして大きな火を放った。

 まるで小さい竜巻のように渦を巻いて火炎がアイヴィーウィップに襲いかかる。

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