じわじわ攻略1

 ダンジョンの攻略も続ける。

 予想通りダンジョンの中は植物系の魔物が多いということは1回目の調査で判明した。


 そこで2回目には解毒薬を多めに持っていくことになった。

 植物系の魔物には毒を持つものもいる。


 動物系の魔物の毒と違って弱い毒も多いのだけど冒されるとじわりと弱っていったり体が痺れたりすることがある。

 弱い毒なので解毒薬で対応出来るためにちゃんと用意していけば十分である。


「そして私の出番ね!」


 さらに今回はメンバー増量。

 エが加わった。


 なかなか理由もなく辞めますでは簡単に国の兵士を辞めることもできないのだけどエの場合は大神殿が後押ししてくれてスムーズに辞められた。

 それでも多少手続きなんかに時間がかかり、荷物を持ち帰ったりなど色々とあってエはジの家に帰ってきた。


 これまで帰ってくることはあったのでみんなと顔を合わせることもあったけど一緒に住むとなるとどうだろうと心配していた。

 しかしエも持ち前の明るさがあるしみんなも人が良いのであっという間に馴染んだ。


 そもそもジのところにはちょいちょい人が増えるのでそう考えてもみんなが受け入れてくれることを心配するのは杞憂であった。

 ということでエも帰ってきたのだしダンジョンに一緒に来てもらうことになった。


 エはヒーラーとしてもとても優秀であるし何より火の魔法を得意としている。

 植物系が多いダンジョンにおいては大きな助けとなってくれること間違いない。


 このダンジョンにおいては適任であると言っても過言ではないのだ。

 ジたってのお願いとあってはエもやる気満々である。


 兵士の時はヒーラー扱いなためにあまり魔物討伐などでも前に出してもらえないので自分も戦えると鼻息荒い。


「あんまり無茶すんなよ?」


「いざとなったらあんたが守ってくれるでしょ?」


「そりゃ守るけどさ、限度ってもんがあるからな」


「そうね、危なくなったらジを後ろから押して……」


「おい、人を犠牲にしようとするな」


「うふふ、冗談よー!」


 帰ってきて早速やれることがある。

 頼られる。


 嬉しくないはずがない。


「元気ですね」


「まあ、明るくていいな」


 今回のメンバーはエを含めてリアーネとユディットである。

 リアーネは固定なのでユディットになるかニノサンになるかぐらいである。


 エが加わってパーティーのバランスは良くなった。

 基本的にはジを始めとしたリアーネ、ユディット、ニノサンは接近戦闘タイプである。


 ニノサンは魔法も使えなくないけどやはり剣がメイン武器になる。

 エは完全に魔法タイプ。


 魔法でケガを治すこともできるし攻撃もできる万能なタイプなのである。

 1パーティーに1人は欲しい感じ。


「それじゃあまずは確認から行こうか」


 例によってダンジョン前にテントを張ってから攻略に挑む。

 ちなみに前回のテントによって問題点も分かったりしたので実際使ってみて試すって大事だなと実感した。


 ダンジョンに入って向かうのはとりあえず右。

 前回と同じである。


「えいっ」


 途中に出てくるドライウッドは距離を置いていると動いてこない。

 なのでエが遠慮なく火を放って燃やす。


 植物系の魔物なので火がよく効く。

 ついでに木っぽく見える床や天井には火は燃え移らないことも分かった。


「いるか、棒?」


「いらない」


「そうか」


 相変わらずドライウッドは棒を落とす。

 エが倒したのだから一応聞いてみたけどエも別に棒はいらない。


 今でこそ落ち着いて女の子らしくなったけど昔はヤンチャガールだったエ。

 しかし棒とか振り回すタイプのヤンチャではなかった。


 遠くから魔法で倒してしまえば楽だけど魔法を使いすぎて魔力が無くなってはいけない。

 なのでちゃんとジたちも戦う。


 そしてまた右へ右へと進んでいく。


「うん、変化はないようだね」


 行き止まりにたどり着く。

 前回と全く同じところにきた。


 こうしたことも大事な確認作業となる。

 ダンジョンは基本的に大きく構造が変わるものじゃないけれど中には頻繁に変わったりするものもある。


 そうなると地図はあっという間に使い物にならなくなる。

 ダンジョンの攻略も時間を空けると内部構造が変化してしまうので短期間で集中してさっさと終わらせなければ危険が伴う。


 やり方が多少急なものになる。

 そうしたことを確認するためにもまた同じところに来た。


 魔物は復活していたけどこちらも変化がなく、道や部屋の構造にも変わったところはなかった。

 変化があっても長いスパンで起こるか、変化しないダンジョンかのどちらかである。


 これを確認できればじっくりと攻略していっても大丈夫ということになる。


「んじゃ1つ戻って別の道に行ってみるか」


 ただこのダンジョンは分岐も多そうだと思う。

 軽く通ってきた部屋にもいくつか道はあるし隅々まで捜索していくと時間がかかりそうだ。


 けれど安全に攻略するにはしっかりと焦らず進めていかねばならない。

 ジたちはダンジョンの中を進み、魔物をちゃんと倒していく。


 エもちょいちょい魔法を使わせてもらえるから楽しそうである。

 魔力量は多いことが分かっているので休み休み使えばエの場合全く問題にならないだろう。

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