のんびり休日2
タとケが来た最初の頃には良く3人で買い物に行ったものだった。
その時主に料理していたのはジで出来合いのものを買っていったりタとケに何が食べたいかを聞きながら荷物持ちを手伝ってもらった。
グルゼイが来たりして人が増えていって、料理もタとケが担当するようになって買い物も他の人が一緒に行ったり仕事帰りにタとケだけで買ってきたりもするようになった。
家で毎日顔をあわせるけれどどこかに一緒に軽く買い物に行くことはすっかり無くなってしまった。
「うん、じゃあ行こっか」
「やったー!」
「ジ兄大好き!」
「2人は何か欲しいものとか……」
「ダメ!」
「違う!」
「な、何が?」
こうして誘ってくれたのだし2人の欲しいものでも買ってあげようと思ったのだけどタとケはちょっと怒ったように頬を膨らませた。
何がダメで何が違うのかジには理解できなくて困惑する。
「何が違うんだ?」
「今日はジお兄ちゃんのお休み」
「私たちのじゃない」
「そ、そうだな……」
「だから私たちのものじゃなくてジお兄ちゃんのものを買うの!」
「ジ兄が欲しいはなーに?」
「……なるほどね」
優しい怒りだなとジは思わず笑ってしまう。
ジの休みにジが買い物に行く。
それならジがジの欲しいものを買うべきだ。
タとケはいつの間にかこんな思いやりが出来る子たちになっていた。
嬉しくてジはわしゃわしゃと2人の頭を撫でた。
「は、いいとして」
タとケの思いやりを無駄には出来ないので自分のものを買いに行くことは決めた。
ただ買い物に行くのはいいとしても何を買うかだ。
何やかんかと今も結構充実している。
もっとお金欲しいなんかは思うけど日常において欲しいものはあんまりなかったりする。
そもそも過去一度物もまともにない中を生き抜いてきて無いなら無いでもいいかななんて思えるぐらいになっていた。
いきなり買い物で買いたいものはないかと聞かれても困ってしまった。
「うーん、何買おうかな?」
「服!」
「服?」
「ジ兄いっつも同じ服」
「それは……そうだけど」
ジの服装に変化は乏しい。
別に服を買えないなんてことじゃなくてジが服というものにあまり興味がないからだ。
過去でも服なんて着れればそれでよかった。
お金があるようになったこの人生でも特に服でオシャレしようとか考えなくて快適で着やすい服を好んでいて、同じものをいくつか持っていたりした。
あとは貴族に会うことになった時用のいい布地の服ぐらいだった。
でも服で節約なんて全然考えちゃいない。
「ジお兄ちゃんももっと服持っててもいいと思う」
「オシャレなジ兄見たい!」
「オシャレって。
俺が着飾ったって面白くも何ともないだろ?」
「えー、見たい!」
「ねー」
「……そうか」
まあ服なんて自分じゃ買いに行かない。
たまにはそうした買い物もいいかもしれない。
「じゃあ俺に合う服選んでくれないか?」
「任せて!」
「ふふーん、お任せあれー!」
どっちにしろタとケと出かけるつもりだけどジだけだと無難なものしか選ばない。
タとケに服装的なセンスがあるのかは知らないけれどジが選ぶよりマシだろう。
ニターっと満足そうに笑ってタとケは胸を張った。
ーーーーー
「というか、でもあれだな」
問題発生。
ジは服屋も知らない。
いつも行く平民街の服屋もあるけど多分タとケが行きたいのはそこではない。
ちょっといい服屋なんかだろうけどそんなところジは知らない。
もちろんタとケも知らない。
「誰かに聞くのがいいかな?」
分からないのなら誰かに聞いてみればいいのだけど誰に聞くべきか。
そもそも周りにオシャレな男性がいない。
グルゼイも服には興味ないしユディットも普段は質素だ。
ニノサンはここに来たばかりであるしクトゥワなんて四六時中白衣だ。
ちょっと範囲を広げて考える。
オランゼはない。
ヘギウス家に行く時にまともな格好と言って用意された服で笑われたことは絶対に忘れない。
商才はあっても服装のセンスは疑う。
他に男性でまともな服のセンスの持ち主は誰だろうかと考える。
「ヘギウス……かな」
パッと浮かんだのはヘレンゼールであった。
完全な私服は見たことがないがいつも小綺麗な格好をしている。
仕事の時の服装でも自分に似合うものを身につけていた。
貴族当主の側近をしていればそれなりに給料も高いはずでいいお店も知ってそうだ。
もう1人ヘギウスには服を専門にしている人がいる。
リンデランの祖母であるリンディアが服を扱う仕事をしている。
リンディアが作るのは女性もののドレスであるが男性の服について全く知らないことはないだろう。
気軽に訪れていいところではないけれどヘレンゼールはタとケを気に入ってくれている。
顔ぐらい見せに行ってもいいかもしれない。
ということでヘギウス家に向かう。
いつの間にか訪ねてもいいかぐらいの関係性になっているのだから人生何があるか分からないものである。
フィオスを頭に乗せて、両手はタとケと繋ぐ。
前もこんな風に歩いていた。
タとケもジと手を繋げてご機嫌だ。
前はフィオスは流石に頭に乗せてなかったけど。
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