のんびり休日1

 たまにはジも休む。

 せこせことジだけ働き続けてみんなに休めと言っても説得力がないのでちゃんとジも休んだりしている。


 ただ意外と何もしないでいることも難しいものだ。

 こうして寝転がっているだけでも以前までの生活では考えられないような状況である。


 お布団はフカフカで温かで心地が良い。

 デカいクモノイタで作ったマットレスは体を優しく受け止めてくれていて気持ちがいい。


 相変わらず古ぼけた部屋だけど実はパロモリ液を室内に塗ってあるので部屋自体も温かである。

 最近時々クモノイタで作った枕が勝手に離れてたりするのだけどそれがフィオスの仕業であることが判明した。


 別に枕に嫉妬しなくても大丈夫なのに。

 今は枕はクモノイタでフィオスは胸の上に乗せている。


 ちょっとぺチャリと潰れてジに密着するようなフィオスを優しく撫でる。

 怠惰に何もしないで時間を過ごす。


 なんだかんだと激動の毎日なのでこうしてまったりするのもたまにはいいかもしれない。


「うーん……でも休みって何したら良いんだろうな?」


 なんとなくダラダラしてみたけど休みに何をしたらいいのか分からない。

 考えてみると過去でも休みなんてなかった。


 生きるために日々必死だったし休みなく働いていた。

 たまの休みだってお金を稼いだり食料でも探したりと休まるようなこともなかったのだ。


 今はお金に余裕もあるし商会だってみんなに任せていてもなんの問題もない。

 食べ物に困ることもなければ特別急を要することもない。


「ジ兄具合悪い?」


「ご飯……食べる?」


 いつも朝からキビキビと動いているジが起きてこなくて心配したタとケがちょっとドアを開けて部屋を覗き込む。


「うんにゃ、別に具合は悪くないよ。


 今日はお休みなんだ」


「あっ」


「起こしちゃった……?」


 体調が悪くなくて安心したけどお休みだったということは寝ていたのだろうと思った。

 声をかけたことで起こしてしまったのかもしれないと申し訳なさそうにシュンと眉毛を下げる2人。


「ううん、起きてたから大丈夫だよ。


 おいで」


 どの道起きていて、お腹も空いていたし何か食べようと思っていた。

 ジが笑顔でタとケを呼ぶと2人はそっと中に入ってくる。


 手で招くと起き上がったジの横にちょこんと座る。


「よしよし」


 ジはタとケの頭を撫でる。


「えへへ」


「うへへ」


 タとケは嬉しそうに目を細める。

 フィオスも撫でると喜んでいることが伝わってくるけれどどうしても見た目的に喜んでいる変化は感じにくい。


 こうして目を細めて気持ちよさそうにして喜んでくれるとジも気分がいい。

 双子もなんだかんだ大きくなってきた。


 まだまだ子供ではあるけれどしっかり食べるようになってちゃんと成長している。

 ファフナなんかはジにタとケの母親は意外と胸あったよ、なんて吹き込んでくる。


 だから何ですかと言いたいところであるが突っ込んだら負けな気がする。

 近所の子供でもタとケに想いを寄せている少年たちがいると話を聞いたこともある。


「おっと」


「お腹すいた?」


「ご飯あるよ?」


「そうだな、食べるか」


 何をするにしても、あるいはしないにしても腹は空くし飯を食べなきゃ力は出ない。

 フィオスを抱えてタとケと共にリビングに向かう。


 グルゼイは冒険者としての仕事をしに行っていていない。

 他のみんなも仕事だったり用事だったり鍛錬だったりでたまたまいないようだった。


「はい、朝ごはん」


「どうぞ〜」


「ありがとう」


 タとケがジの前に料理を並べて、ジの両側に椅子を持ってきて座る。


「はい、あーん」


「あーん」


「ええと?」


「あーん」


「あーん」


 休みだから世話を焼いてくれるのだろうか、タとケはスプーンに料理を乗せてジの前に差し出す。


「落ちちゃうよ」


「早く」


「う、分かった」


 仕方なくパクリとタのスプーンから食べる。


「美味い!」


 家の料理番であるタとケの料理の腕は日々上がっていっている。

 今度はケの差し出してきた料理を食べる。


「こっちも美味い!」


 最近は輸入されてきた魚の調理も色々試していて、家の中でも好評である。

 自分で食べたいと思うのだけどタとケが交互に料理を口に運んでくるのでやめ時がない。


「はい、フィオスも」


 咀嚼が追いつかなさそうな時にはジの膝の上に抱えられたフィオスにも料理をあげる。

 フィオスも朝だからかゆっくり目に料理を溶かしている。


「くふ……もうお腹いっぱいかな」


 タとケに食べさせてもらっていらないとも言いにくくて若干限界を越えて食べたけど流石にこれ以上は戻してしまいかねない。


「美味しかった?」


「ああ、美味しかったよ。


 ごちそうさま」


「まだあるよ、フィオス食べる?」


 ケが料理を乗せたスプーンを差し出すとフィオスは体をちょっとスプーンの方に伸ばす。

 フィオス、お残しはしません。


 残りの料理はフィオスが全部食べてくれた。


「ねぇ、ジお兄ちゃん」


「ん、なんだ?」


 お腹いっぱい食べ過ぎて動けないのでちょっとまったりとしていたらタとケがモジモジと話し始めた。


「私たちもお休みで……」


「何もすることないならお出かけしたいな」


「お出かけ?」


「うん」


「一緒にお買い物したい」


「お買い物か……」

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