異端審問官と師匠と泥棒1
数日後フェッツがボージェナルに着いてジも昼間はフェッツの方に行くことになった。
子供のみんなも遊んでいるだけでなく家に先生を呼んで勉強したりしている。
何とタとケも貴族マナーや勉強をさせてもらってやる気に溢れていた。
グルゼイは1人冒険者ギルドに出入りして何かを調べている様子だ。
おそらく悪魔に関して調べているのだろう。
ボージェナルは海の貿易の中心地であるので情報も集まってくる。
首都とはまた違った情報が出てくることもあり得る。
「今回取引するのは乾燥させた魚です。
こちらの国では海に近いところしか食べませんが向こうの国では広く一般的です。
私も時々食べるのですがお肉が辛くなってくると魚の方を欲するような時もありますね」
ボージェナルにあるフェッツの商会の支部で食糧支援取引の一番槍を任されたのはフェッツ。
以前から取引のある相手らしくそうしたところでもフェッツが選任されたのであった。
取引するものは魚なのであるが他に輸送する都合上生の魚ではなく乾燥させて日持ちするようにしたものを大量に持ってきてくれているらしい。
そういえば過去でもいつ頃かの食糧危機の時から魚の干物が広く出回るようになっていたことを思い出した。
安い干物を焚き火で炙ってかじって食べていた記憶がよみがえってくる。
確かに年寄りになった時には重たい肉よりも魚の方が食べやすかったような記憶もある。
一応機密を保持することに同意する書類にサインしてジも取引のことが書かれた書類を見させてもらう。
他の国からの物資はまだ届かないがこの国からの動き出しは非常に早くてこちらとしてもとてもありがたい。
物資の支援ではあるがタダではない。
国が約束した取引ではあるがそれを実行するのは商人たちであり、そこにお金が発生しないと商人たちは死んでしまう。
だから今回の取引では国が商人に補助金の形でお金を出して安価な価格でこちらが大量の食料を買い取れるようにしてくれている。
こうすることでこちらを支援しつつ商人にも利益が出るようにしている。
「本来なら物が来て、数や質を検品してから交渉に移るのですが事情が事情だけに先に来る量で交渉をしてしまいます」
商品を見ないのに交渉をすることはまずあり得ない。
けれどこの取引には国が関わっているのでバカじゃない限り騙してくることはしない。
「えーと……相手の商会の名前は……」
「会長、お相手が到着しました」
「そうですか。
ジ君、ではいきますよ。
今日の相手はよく知る相手ですので事前に同席の許可もいただいています」
まだ書類も読み切っていないけど交渉相手の商会が到着した。
「あっ」
「えっ?
あっ」
フェッツについて交渉相手の待つ部屋に向かう。
部屋に入ると年配の男性と若い女性が1人ずついた。
若い女性の方はフェッツの後ろについてきたジを見ると驚いたように声を出した。
ジも女性の顔を見て驚いた。
「リアイさん」
「フェッツ会長が後援して育てている子って……そーいえばそんなこと見たような…………」
交渉に来た相手商会はナーズバインであった。
フェッツが経験を積ませるために若い商人を同席させることは聞いていた。
自分が後援となっている商会の商会長で差し支えなければという話でリアイもフェッツが後援しているなら問題ないと許可した。
ただその相手がジだとは思わなかった。
だけどジのことを調べた時にフェッツの後援を受けていることも読んだ気がする。
注目して覚えておく情報ではなかったので完全に忘れていた。
ジの方もまさかナーズバイン商会が相手で、しかもリアイが商会代表としてきているなんて想像しておらずに驚いていた。
チラリとサーシャとの会話で食料品を運んできていることを言っていたなとジは思った。
「おや、お知り合いでしたか?」
「ははっ……まあ、知り合いですね」
せっかく任された大役。
カッコよく交渉に臨むつもりだったので驚きで抜けた声を出してしまったし、ジにはリアイのゆるい姿を見られている。
今更カッコつけるのもなんだか気恥ずかしい。
「なら話も早くていいですね」
フェッツの商会の人が紅茶を持ってきてみんな席に着く。
「ナーズバイン商会の支部長を務めますギャルダヌです」
「フェッツ商会長に後援していただいているフィオス商会のジと申します。
本日は勉強させていただきます」
リアイは知っているがもう1人の方は知らない。
なので軽く名前を名乗っておく。
やや浅黒い肌で豊かなヒゲを蓄えた老紳士な男性であるギャルダヌはジに頭を下げた。
ジの丁寧な返しに目を細めて感心もしていて穏やかに笑っている。
「それでは始めましょうか」
交渉が始まる。
ここから先にジの出る幕はなく、どのように話が進むのかを聞いて勉強する。
メインは魚の干物であるが他にも日持ちするものもある。
補助金の額などを勘案しながらいくらで買い取るのが良いのかを相談する。
干物も単一ではなく調理法が違ったり魚が違ったりとこれはいくら、あれはいくらと細かく話を詰めていく。
話をメインに進めるのはギャルダヌではなくリアイの方だ。
真面目な顔をして話を進めるリアイはちゃんと商人であり、これまでの経験を話の端々から感じさせる。
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