みんなで海に3

 オランゼの方もジが休むことに快諾してくれた。

 町中にオランゼの事業は広まっていて、建国祭の時にもたくさん出たゴミを処理するのにオランゼの商会がその仕事を任された。


 だから結構今はお金も儲けていた。

 誰かが休んでも大丈夫なようにしておきたいオランゼとしてはジが一人で担当する区画のことは心配だった。


 なのでむしろ休んでくれると事前に連絡があるならどうカバーしたらいいか試せるのでオランゼとしてもありがたいぐらいだったのである。

 そんな真面目な人柄だからこのように事業を拡大できるのだなとジは納得した。


 ともかく休みをもらうことにした。

 いきなり来なくなっては朝待っていてくれるリンデランやウルシュナも驚くだろうから報告しておく。


「ほい、行っといで」


 いくつかあるゴミ捨て場の1つについたのでウルシュナがフィオスを下ろす。

 ぴょんぴょんと跳ねてゴミに向かっていって取り込んで溶かし始める。


「休むのか。


 ふーん……それってすぐボージェナルに向かうのか?」


「いや、色々調整があるらしいしすぐには食料も届かないからもうちょっと先かな」


「……なんだよ?」


 顔を見合わせるウルシュナとリンデランにジが不思議そうな顔をする。


「な、良かったらなんだけどさ。


 一緒にボージェナルに行かない?」


「えっ?」


「私たちボージェナルに行くんです」


 話を聞くとリンデランとウルシュナは近々ボージェナルの方に行くらしい。

 ボージェナルにはゼレンティガム家が持っている別荘があり、そこにしばらく行くというのだ。


「こんな状況だし、お父さんが何か仕事で東に行くことになったからそれについていくことになって」


「私もウーちゃんにお誘いを受けたんです。


 おじい様はここから離れられないらしいのですがおばあ様が他の国から来る布地の買い付けに行きたいから一緒に行ってくれることになったんです」


 経緯としてはまずウルシュナが東の港湾都市ボージェナルに行くことになった。

 首都近郊での食料価格の上昇と食糧の確保が難しく貴族にも苦しい人が出てきてしまった。


 東の都市は虫があまりそちらに向かわなかったためにモンスターパニックの影響が薄い。

 かつ港湾都市であるために他国との貿易で食料も入ってくるので食料不足には陥っていなかった。


 そうして場所を移動するというのも狡く見えて批判はあるだろう。

 しかし金に物を言わせると貴族の方に食料などが集まってしまうのはしょうがない。


 東の都市に行けばまだ食料はあるしどうしても輸送に耐えない食料があるのでそちらで買えば他の地域の負担にはならない。

 さらについでにルシウスが食料輸送のルートを守る警備の仕事を任された。


 ルシウスがボージェナルに大きめな別荘地を持っているのでボージェナルに近いところを警備することにもなっていたのである。

 他にも事情があり、そうしたところでウルシュナがボージェナルに行くことになった。


 ただ友達もなく1人で行ってもつまらない。

 ウルシュナは母であるサーシャの勧めもあってリンデランに声をかけてみた。


 そのタイミングでたまたまリンデランの祖母であるリンディアも布の買い付けにボージェナルに向かうつもりであった。

 リンディアはリンディアで宿を取るつもりだったがどうせなら別荘に泊まるといいということになってリンデランもウルシュナに同行することに決まった。


「それでジ君も誘ったらどうかなってウーちゃんが」


「バッ……!


 そ、それはいつも世話になってるからで!」


「誘ってくれようとしてくれたことに変わりはないんだな」


「そうだけどぉ……」


 頬を少し赤く染めてウルシュナがそっぽを向く。

 ウルシュナのところの別荘に泊まるのにジを誘おうなんてリンデランから言い出せなかった。


 けどポソリとウルシュナの方からジを誘ったらどうかと言い出した。

 いいじゃない!とサーシャの後押しもあって2人は確実に会えるこの朝にジを誘った。


 どの道ボージェナルに向かうなら先に行っていても問題はなかろう。


「タとケも連れて行きたいです!」


 ジも連れて行くならタとケも連れて行きたい。

 賑やかな方が良いと笑うサーシャの許可もすでにもらっている。


「なるほどね〜」


 素敵なお誘い。

 まるでボージェナルに導かれているみたいなタイミングだがスケジュール的にも無理なこともない。

 

 むしろボージェナルに行けばいい点を考えれば好都合すぎるぐらい。


「ダメですか?」


 ウルウルとリンデランはジを見つめる。

 いつの間にかゴミを食べ終えたフィオスもリンデランの足元にいてジを見つめるように体を少し伸ばしていた。


「まあ……ちょっと聞いてみて良さそうならお誘いに甘えてみようかな?」


 ーーーーー


 ということでボージェナルに前乗りすることになったジたち一行。

 タとケの他にはジの護衛としてユディットとなぜなのかグルゼイもついてきていた。


 みんなはお留守番でリアーネなんかは店や家を守ってくれているし、ご飯はファフナが作ってくれることになっている。

 ルートを護衛するための騎士たちに囲まれて安全快適なボージェナルまでの旅をしてきた。


 意外と遠かったが東に進むに連れて緑も豊かになってボージェナル手前にある丘の上からボージェナルが一望できていた。

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