閑話・フィオスと実験と居場所2
これがポーションであるかはまだ断定できないが治療の効果のある液体であることは間違いない。
教会のポーションであるならもっと重大なケガでも治療することができるがそこまで自分でケガをして確かめる勇気はない。
「それにこの量じゃ量産するのも難しいな」
じっと眺めているけれども桶に溜まるポーションの量は少ない。
無理をさせるつもりはないのでフィオスに任せているけど小瓶1つ満杯にするのにも時間がかかりそう。
キーケックは目をキラキラさせながら顎に手を当てて考えている。
「何もないところから物は生まれない。
物を生み出すなら何かは使っている。
フィオスは特に物を持っていない。
だからこれを生み出すのに使っているのはきっと魔力」
フィオスがポーションを生み出している原理はわからないが魔力を消費してポーションを生み出しているのだと予想した。
「だから魔力を与えればもっと生み出せる……かも?」
なのでフィオスがポーションを生み出すのに使っているはずの魔力を供給してやればもっとポーションを生み出せるのではないかと思った。
「なるほどね。
ちょっと試してみるか」
キーケックの言うことは一理ある。
ジは実験など用に保管してある魔石を持ってきてフィオスに与える。
「おっ、ちょっと増えた?」
「うーんちょっと?」
魔石をも溶かしてしまうフィオス。
すると滲み出るポーションの量が増えた、気がする。
ただそんなに目に見えて増えているかというと微妙な感じ。
増えたといえば増えたような気がするって言う程度。
違いを顕著にするためにはもっと魔石が必要かもしれない。
これなら誰かに直接フィオスをぶつけてポーションを滲ませた方が早いかもしれない。
「でもこうやってキックコッコ治した」
「そういやそんなことあったな」
以前ケガをしたデカキックコッコをフィオスが治療した。
あんな感じで直接傷口にフィオスをつけるのがいいはずだ。
ともかく確認したいことは確認できた。
ミュシュタルの時のように何かの方法で生産量を増やせるかもしれない。
上手くやれたら自分たちの分のポーションを確保できるのみならず多少商売っ気を出すぐらいはできるかも。
あとはポーション以外ならどうとかいくつかちゃんと分けて生産できるのかなど時間をかけて確かめていくことが必要となる。
「フィオスすごいぃぃ」
キーケックがいたく感動している。
ポーションを生み出せる魔物なんて聞いたことない。
しっかりと検証できたので少なくともフィオスはポーションを生み出せると公表しても何の問題もない。
フィオスも跳ねてなんだか誇らしげに見える。
「フィオスがいたら軽いケガぐらいは気にしなくても良さそうだな」
その後も実験を続ける。
金属化の実験もする。
アダマンタイトを食べさせ続けてきたのでアダマンタイトにもなれるようになったフィオス。
普通の鉄になったりアダマンタイトになったりと使い分けもできる。
アダマンタイトの方が変化するのが大変なようで比較してみると鉄になるよりアダマンタイトになる方が時間がかかる。
あまり意識したことがなかったけど金属化するとちょっとフィオスの重量が重くなることなんかが分かった。
「フィオスに限ったことじゃないけど試したい」
「何?」
「召喚」
「召喚?」
「うん。
召喚にも色々種類がある。
あんまり試した人いないけどちょっと興味持った」
魔獣を呼び出す事を召喚という。
その召喚にもいくつかの種類がある。
メインになるのがただ召喚といわれるものである。
これはみんな何気なく行なっている魔獣の呼び出し方法で他の場所にいる魔獣を自分の元に呼び出す行為である。
みんな特に意識しないのだけどその魔獣はどこから呼び出しているのか。
一般的には魔獣はもともと住んでいた場所にいてそこから呼び出されるのだという。
呼び出した魔獣を戻す事を逆召喚と言って逆召喚されるとその住んでいた場所に戻される。
それともう1つあるのが魔石召喚と魔石逆召喚である。
魔獣を魔石の状態にするのが魔石逆召喚であり、魔獣が持ち運びできるサイズの魔石となる。
その魔石から魔獣を呼び出すのが魔石召喚。
召喚と魔石召喚、なぜそのような2つの方法があるのかは分かっていない。
しかし一応ちゃんとそれぞれに利点がある。
逆召喚によって待機状態になった魔獣は魔石になっている魔獣よりも魔力や体力の回復が早い。
契約者が魔力を使い切っても魔獣を逆召喚しておくと早めに魔力の供給がなされるという。
魔石にする方は回復は早くならないけど常に一緒にいることになって魔獣との絆が少しずつ深まる。
出して一緒にいることには及ばないが出しておくより回復は早くそれでいながら絆も深まっていくのだ。
ちなみにジは基本的にフィオスを出しっぱなしにしている。
特に魔力を使うこともなくフィオスの回復も早いので出しっぱなしで全く問題もないのだ。
「興味を持ったって何にだ?」
「前に読んだ本がある。
その時に面白い話があった」
キーケックは魔物に関する本ならなんでも読む。
研究書だけでなく世の中には魔獣や魔物に関して色々な説話や面白話がある。
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